レビュー

ゆるふわシュールギャグ「ホワイトタイガーとブラックタイガー」

ちょっと不思議で可愛い、タイガーコンビの日常系

【ホワイトタイガーとブラックタイガー】
X(旧Twitter)にて展開中
著者:にとりささみ

 「ホワイトタイガーとブラックタイガー」は、X(旧Twitter)で累計400万超いいねがつくほど人気の、ゆるシュールコメディだ。書籍化にとどまらず、全国各地でポップアップストアを展開したり、クレジットカードの券面になったりと、キャラクターとしても大人気。トラとエビのタイガーコンビが織り成す、笑いあり、軽いやけどありの友情物語は、ちょっとシュールでふわふわ可愛い、不思議なおもしろさでいっぱいだ。

重傷になっても「軽いやけどですね」で、すぐ完治!

【かっこよくなりたい、ホワイトタイガーくん】

照明を壊して部屋が暗くなるだけで、泣いちゃう

 白くてふわふわで可愛い、ホワイトタイガーくんは、強くてかっこいいトラに憧れているこども。けれど、部屋の照明を壊して暗くなるだけで泣き出すような、弱虫でもある。そんなホワイトタイガーくんは、牙も爪も鋭くて、口から火を吹けるという、強くてかっこいいブラックタイガーを探しに森に出かける。だが、そこで出会ったのは、トラではなく、一匹のエビだった。

【ホワイトタイガーくんとブラックタイガーくんの出会い】

ブラックタイガーがエビの名前とは、今更言いにくい

 エビは、自分こそがブラックタイガーである、とは言い出せず、ホワイトタイガーくんの夢を壊さないために、修行して強くなろうとする。が、強くなるどころか、ゆるふわ系エビフライになってしまうのだ。エビはトラになれない、と落ち込むブラックタイガーくんだったが、ホワイトタイガーくんが熊に襲われそうになったところを、触覚を武器にして助ける。これがきっかけで、ふたり(2匹)は仲良くなり、ブラックタイガーがエビであるという真実も伝え、物語は始まるのだ。

【タイガーコンビ、ここに誕生】

小さいエビが、熊に立ち向かうのは、確かに強くてかっこいい

 この時、エビフライになってしまったブラックタイガーくんだったが、医者のうさぎ先生に「軽いやけどですね」と診察され、ホワイトタイガーくんに「軽いやけどでよかったね~」と言われることで、元の姿に戻っている。この「軽いやけどですね」「軽いやけどでよかったね~」のやり取りは、本作の鉄板のネタとして、たびたび登場し続ける。正直、全然軽いやけどじゃないというか、エビフライなんて完全に瀕死の重傷のはずなのに、うさぎ先生が「軽いやけどですね」と診察し、ホワイトタイガーくんが「軽いやけどでよかったね~」と言うと、ブラックタイガーくんは元の姿に必ず戻る。いわば治癒の詠唱みたいになっているのが、ちょっと不思議で思わず笑ってしまうのだ。

【軽いやけどでよかったね~】

完全な焼きエビになっても、問題なし

 ハンバーグを食べに行っては鉄板で焼きエビになったり、ラーメンを食べに行ってはに厨房に転落してエビ餃子になったり、ブラックタイガーくんは飲食店で何度も火入れされてしまう。その度に、ホワイトタイガーくんが救急車を呼んで、うさぎ先生に診察してもらうのだ。うさぎ先生は、たとえブラックタイガーくんがなめらかなスープ状態にされていても、「軽いすり傷ですね」のひとことで、完治させてしまう。うさぎ先生の呪文魔法みたいな治療と、頻繁に食材にされてしまうブラックタイガーくんに、オチが分かっていても惹きつけられる、ほのかな笑いが詰まっているのだ。

【かには食材なのか、住民なのか】

食材が逃げてる、という言葉も少し怖い、かも?

 そして、ブラックタイガーくん以外にも、調理されてしまうキャラクターが複数登場し、この世界では、食材と住民の境目がどうなっているか分からないことに気付かされる。若干ホラーとも言えるゆるいシュールさもあって、目が離せない。

【ジンギスカン屋の店員が羊】

その肉の正体が気になる、かも?

強烈な個性を放つ名医、うさぎ先生

【うさぎ先生の両親の衝撃の最期】

父はミートパイに、母はシチューになったことが、医者になった理由!?

 ホワイトタイガーくんとブラックタイガーくんの、可愛い友情と、ややシュールな世界観が魅力の本作だが、ひときわ異彩を放つのが、うさぎ病院の女医、うさぎ先生である。うさぎ先生は、ホワイトタイガーくんが「救急車」と電話するとすぐに駆け付けてくれるが、まるでストーカーみたいに先回りしてブラックタイガーくんを見守っていることも多い。職務範囲を超えて、仕事をしているようなものだが、それには理由があって、実は、うさぎ先生の両親は、ミートパイとシチューになって亡くなったのだ。もっと早く医者になっていれば助けられたかもしれない、その後悔があるから、うさぎ先生は、ブラックタイガーくんを何としてでも治したい、と思っているようだ。

【やけどしないブラックタイガーくん】

うさぎ先生の悔しそうな顔

 と、真面目な一面があるのかと思いきや、タイガーコンビの後をつけていて、何事も起こらなければうさぎ先生は悔しそうな顔をしたり、タイガーコンビがやけどに効く薬を手に入れたら、その薬を人知れず爆破したりする。とにかく「治したい」と強く思っているうさぎ先生は、「治さなくていい」状況には、少々不満があるようだ。そのためか、「治したい」がゆえに、ときどき行き過ぎたこともやってしまう。例えば、タイガーコンビが温泉に出かけると、きっとブラックタイガーくんがやけどするだろうと、女性なのに男湯に侵入しようとして、犬のおまわりさんに逮捕される、など。すぐ釈放され、ブラックタイガーくんは無事に完治するのだが、この時実は犬のおまわりさんを殴っていて、そのアグレッシブさに普通に驚かされる。

【男湯に侵入しようとするうさぎ先生】

「治したい」気持ちが強すぎる

 なかなかクセが強いうさぎ先生だが、さらに面白いことに、犬のおまわりさんとは、ケンカばかりしているのに仲が良くて、そのやりとりも見ごたえがある。偶然おそろいの服を着れば取っ組み合いをし、居酒屋で食事をすればどちらが会計を済ませるか意地を張り合う。犬のおまわりさんが働く交番に、うさぎ先生は頻繁に定食屋のノリでやってきては出前を取ったり、冷蔵庫にあるアイスやプリンを勝手に食べたりしてしまう。

【お揃いの服、嬉しいか許せないか】

タイガーコンビとの比較もおもしろい、うさぎ先生と犬のおまわりさん

 お互い減らず口を叩き合いながら、なんやかんや一緒にいることが多いうさぎ先生と犬のおまわりさん。仲良しタイガーコンビとはまた違う、珍妙だが微笑ましさもあるふたり(2匹)の関係性も、うさぎ先生の個性をより輝かせている。

【ケンカするほど仲が良い?】

うさぎ先生と犬のおまわりさんはケンカしながらよく一緒にいる

優しさとシュールが両立する世界観

【みんなが褒めてくれる、優しい世界】

ホワイトタイガーくんはかっこいいものが大好き

 タイガーコンビとうさぎ先生、犬のおまわりさんの、わちゃわちゃした日常が楽しい本作。ゆるふわシュールなコミカルさが、妙に病みつきになってしまうわけだが、筆者はもう一つ、欠かせない要素があると思っている。それは、作品のすみずみにまでただよう、優しさ、である。

 そもそもキャラクターのテイストがふわふわキュートなのだから、優しい世界というのは当たり前と思われるかもしれない。それは確かにそうなのだが、「ホワイトタイガーとブラックタイガー」の優しさは、相手を否定せず、大切に尊重するという、誠実で安心感を得られるたぐいのもので、その真面目さは、ただゆるゆるふわふわしているだけでは、そうそう出せるものではない。

【何色でもうれしい】

何気ない親切ににじみ出る、ぬくもり

 ホワイトタイガーくんは、バーチャルつよつよタイガードラゴンオメガという、理想の姿でライブ配信を行っているのだが、ブラックタイガーくんは、本当は可愛いトラと知っていても、かっこいい、と課金したり、放送事故で可愛いトラの姿が配信されてしまい、他の視聴者が「かわいい」と投稿していても、悪ノリすることもなく、ドンマイ!と励ましたりするのだ。

【バーチャルつよつよタイガードラゴンオメガ】

素のままの方が人気でも、憧れを否定したりしない

 他にも、ブラックコーヒーを、かっこつけて飲んだホワイトタイガーくんに、ブラックタイガーくんがさりげなくはちみつミルクを注文しやすくしてあげたり、かっこいいからサングラスをかけたいが恥ずかしいホワイトタイガーくんに、ブラックタイガーくんやうさぎ先生たちもサングラスをかけて付き合ってあげたりするエピソードがある。相手を否定したり、変にアドバイスしたりせず、ホワイトタイガーくんの、かっこよくなりたいという気持ちを尊重し、寄り添おうとするブラックタイガーくんたち。その真摯な姿勢が本作の随所に感じられ、読んでいてとても安心感を得られるのである。これは、一朝一夕では身に付かない、相手への思いやりに他ならないだろう。

【かっこつけたいけど、恥ずかしさもある】

サングラス、みんなでかければかっこいい

 こういった、相手への誠実な接し方があるからこそ、「ホワイトタイガーとブラックタイガー」は、シュールでありながら、作品全体に優しさを感じることができるのだ。是非読んでみて、独特のゆるふわシュールな世界観と、誠実な優しさが両立する、絶妙なコミカルさを味わってほしいと筆者は思っている。読み終わる頃には、妙にハマる面白さに、とりこになっていること請け合いだ。

【ブラックタイガーくんの大人の対応】

さりげないアシストがかっこいい