特別企画

「Wacom Cintiq」シリーズがより軽く、薄く、大きくなって新登場!スキルアップからアニメ制作現場での作業など、幅広くこなせる3シリーズ

【Wacom Cintiqシリーズ】
6月26日 発売
価格:
Wacom Cintiq 16:118,800円
Wacom Cintiq 24:206,800円
Wacom Cintiq 24 touch:250,800円

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 ワコムは、「Wacom Cintiq」シリーズの最新モデルとなる新製品「Wacom Cintiq 16」、「Wacom Cintiq 24」と「Wacom Cintiq 24 touch」の3機種を6月26日に発売する。ワコムストアでの価格はそれぞれ「Wacom Cintiq 16」が118,800円、「Wacom Cintiq 24」が206,800円、「Wacom Cintiq 24 touch」が250,800円。

 今回発表された3機種は、2019年にリリースされた「Wacom Cintiq 16/22(DTK-1660/2260)」の後継機となる液晶ペンタブレット。ワコムのタブレットシリーズとしては、プロフェッショナル向けの「Wacom Cintiq Pro」と、初心者向けの「Wacom One」の中間に位置する、万人向けのモデルと言える。新機種では前モデルより解像度が高くなっただけでなく狭額縁を採用し、よりスタイリッシュなデザインとなった。さらに、ケーブルがUSB Type-Cの1本で済む機種もあるなど、机上での取り回しの面でも便利になっているのも特徴だ。

 発表に先駆けて開催されたメディア向けの発表会ではワコムのプロダクトマーケティングマネージャー・小幡幸結氏とHardware Engineering, Senior Managerの小谷佳宏氏による説明が行なわれたほか、後半にはゲストとしてアニメーション監督の中山竜氏を招いてのトークセッションが実施された。ここでは、その模様をお伝えしよう。

イベントの司会を務めた、ワコム プロダクトマーケティングマネージャー小幡幸結氏
製品解説を行なった、Hardware Engineering, Senior Managerの小谷佳宏氏

背面ケーブルの取り回しはシンプルに。狭額縁設計採用でスタイリッシュになった新「Wacom Cintiq」シリーズ

 今回発表されたモデルは、前モデルの16インチ及び22インチモデルを刷新したものとなっている。新16インチモデルは、画面のインチ数はそのままにサイズを前モデルの422mm×285mm×24.5mmから384mm×259mm×15mmと大幅にダウン。画素数も1,920×1,080から2,560×1,600に増加し、縦横比率が16:10となった。

 24インチモデルは、前モデルの22インチモデルと比較してサイズが大きくなったのにも関わらず縦横サイズはほぼ同等。その上で厚みが半分となっているほか画素数が1,920×1,080から2,560×1,440へと大幅にアップしている。なお、縦横比率は16インチモデルと異なり16:9となっている。また、24インチモデルにはタッチ機能の搭載有無により「Wacom Cintiq 24」と「Wacom Cintiq 24 touch」の2種類が用意される。これら3モデルはいずれもファンレス仕様となっており、静音性を備えつつも熱を抑える設計になっている。

 今回の新機種へのこだわりについて、小谷氏は「ユーザーさんの机上でコンパクトに配置しやすいよう、市場でのトレンドとなっている狭額縁設計を取り入れました。また、Wacom Movinkで取り入れたフレキシブル基板を大型液晶タブレット製品でも採用したことで、大幅な薄型化に貢献しています。内部各パーツの省電力化、内部構造の最適化、裏面に熱を逃がす構造を採用して、ファンレスでも表面の低温化を実現しました」と解説。また、Wacom Cintiqシリーズでは初となる、ダイレクトボンディング機能を搭載。これは、視差が少なく狙い通りに描けるという機能で、ペン先と実際のカーソルの、視差の低減が図られている。

 今回の新機種では、ペンのパフォーマンス向上のために施された2つのポイントがある。1つは、Wacom Pro Pen 3の採用。Wacom Pro Pen 3は同ペン用に新規に開発されたICを内蔵し、ペンのサンプリングレートを向上させることで軌跡を忠実に、滑らかに再現することが可能となっている。

 もうひとつが画面エッジ部分のパワーアップ。本来は本体を狭額縁化すると、エッジ部分のセンサー本数がどうしても足りなくなってしまう。そのため、過去機種では額縁を増やしてセンサーを広げることでペンの性能を保っていたのだが、2022年10月発売の「Wacom Cintiq Pro」シリーズ以降の機種ではセンサー設計の方針を大幅に見直し、狭額縁化しても画面エッジでも忠実にペンの軌跡を再現できるようになったことで、今回の新機種でも狭額縁化することが可能になった。

 ほかにもユーザーに嬉しい部分として、ケーブルの取り回しがシンプルになったことも挙げられる。背面には電源用のUSB Type-C、Mini-HDMIと映像用のUSB Type-Cが用意されており、16インチモデルであればPCがDisplayPort Alternate Modeに対応していれば、USB Type-Cのケーブル1本で接続が終了する。24インチモデルは電源用のUSB Type-Cケーブルが必須となるものの、それでも2本で片付くのはありがたい。平置きにしてもこれらケーブルを挟まない高さのゴム足が本体四隅に配置されているので、噛んだり挟んだりせず邪魔になるということもない。

背面に用意された接続用のインターフェースは、電源用のUSB Type-CとMini-HDMI、映像用USB Type-Cの3つのみ。16インチモデルを使用した場合、PCがDisplayPort Alternate Modeに対応していればUSB Type-Cケーブル1本のみ、24インチモデルでもケーブル2本の接続で済む

 本体の左右側面には、Wacom Cintiq ペンスタンドを挿入可能なスロットがそれぞれ用意されている。ペンスタンドの内部には標準芯が1本、フェルト芯が1本付属しており、ペンスタンド自体は左右好きな方に取り付けが可能だ。画面位置に合わせてペンを立てる角度を細かく調整することができ、寝かせすぎたりしてもペンが倒れにくいデザインになっている。実際に動かしてみると特定の角度でアジャストするようになっており、回したときにはカチカチカチというフィーリングが返ってくる。

実際に挿し込むとこのような感じになる。本体やペンスタンドの角度を変えても、ペンが簡単に落ちることはなかった

 24インチモデルの背面には、それ自身を支えるためのスタンドも付属している。角度は自由に変えることができ、動き自体も非常にスムーズだ。これに関して小谷氏は「過去製品でのグラツキと、角度を変えたときに出るノイズ音を改善しています。足の長さの最適化や材料の見直し、内部ギアの噛み合わせにもこだわりました。これらの改良で、本体の端を押してもぐらつかないという安定性と、音がしにくいという静音性を兼ね備えたスタンドになり、ユーザーが集中して作業できるようにしました」とした。このスタンドは16インチモデルではオプションになっているが、75mm×75mmのVESAマウントに対応しているので、それに合ったアームを使うこともできるとのこと。

16インチモデルと24インチモデルに接続されたスタンドは、どちらも同じもの。背面スタンドはペンスタンドと違い、角度をシームレスに調整できるようになっている。動作音もほぼゼロで、本体にテンションがかかっても勝手に角度が変わることもない

Wacom Pro Pen 3との組み合わせで「非常に使いやすくなった」

 発表会後半は、アニメーション監督の中山竜氏をゲストに迎えてのトークセッションとなった。中山氏は東京造形大学を卒業後、「Fate/Grand Order」や「呪術廻戦」などの演出を手がけた後、「チェンソーマン」にてシリーズ初監督を担当。2025年4月に、取締役としてAurora Animationを共同設立している。

ゲストとして登壇したアニメーション監督の中山氏。実演を交えながら新モデルの感想を語った

 中山氏は「Wacom Cintiq 16」の旧機種を使っていたとのことで、今回発表した新機種Wacom Cintiq 24 touchを先行試用してもらったそう。その感想を聞かれると「ペンが細く、軽く、握りやすかったのが良いです。また、ボタンが3つになったのも嬉しいところですね。1つ増えれば作業が1つ減るので、非常に楽になります。以前はボタンに右クリックと中ボタンを割り当てていましたが、3つになったので増えた分にはマッピング切り替えを設定しました」と、まずはWacom Pro Pen 3の良さを挙げた。

 続いて「本体に関しては、ベゼルが少ないのと、溝などがなくフラットなのが良いです。光るものやボタンが彩度に配置されたので、すっきりしてて使いやすいですね。ケーブルの取り回しについても、USBになったのが良いです」と、本体に関しても非常に使いやすくなったとした。

 普段は板タブと液タブの両方を使っているとのことで、それぞれの良いところについて「液タブの良さは、絵を描いている感じがダイレクトに来ることですね。細かい表現などができたりするのがよいところです。逆に板タブの場合は、常にモニタが垂直にあって、自分は前を見た状態でも手は下なので、視線が下にならずリラックスして描けるところです。液タブで没入してみると絵を描いている感覚になるし、正面のモニタを見ながら手元を見ない作業では映像作っている感覚になっています」と、監督ならではの視点で答えてくれた。

あらかじめ何枚かのイラストが描かれており、それらを切り替えながら作業の実演をしつつ新機種の感想を述べた

 中山氏が今回借りた機材は24インチモデルだったのだが、大きさに関して聞かれると「普段は16インチを使っていまして、アニメーション製作という意味では、自分の場合は事足りている感じです。これは、机上を広く使えるからなんですね。ただ、今回お借りした24インチモデルはメチャクチャ奇麗だし、大きいし、大きい絵を描くときには凄い便利だと思ったので、どちらが良いと聞かれると迷ってしまいます」語る。

 左右どちらにでも取り付けられるペンスタンドについても「角度調整がしやすくなって使い心地が良くなり、非常に便利です。特に、スタンドの角度を変えても垂直の角度にできるのが気に入っています」と答え、そのスタンドも「作業次第では角度をよく変えますが、その時にも“スッ”と動いてくれるので、凄く良くなったかなと思います」と絶賛。

 ファンレスになったことで気になる熱さについては「音がしないというのは良いし、使っていてあまり熱くならなかったので、熱については気づきませんでした」と回答していた。プロ目線でも、ファンレスにしたことによる熱はほとんど気にならないということなので、そういった部分を気にするユーザーにとっては朗報だろう。

 最後に、今回の製品をオススメしたい人を聞かれた中山氏は「どんな人でも、今回の新機種は満足できると思います。多くのアニメーターは上位モデルのスペックを必要としない可能性がありますし、イラストレーターも描き始めだったりアマチュアであれば、正直事足りるレベルだと思います。ハイエンドモデルを全員が必要なわけではないので、ほぼこれで良いんじゃないかという気がしています」とまとめ、トークセッションは終了となった。

 「Wacom Cintiq」シリーズとしては6年ぶりの新製品となる今回のモデルは、2.5kの解像度ディスプレイや狭額縁化による製品サイズのコンパクト化、自在に変えられるスタンドにシンプルな接続方法など、数多くの改良が加えられている。従来モデルを使用している人にとっては楽しみなモデルになるだろう。

発表会後に実物を触ってみたが、ペン先とカーソルの差違を感じることはほぼなかった。また、touchモデルでは実際に画面に触れて画像を回転させるなどのことができるので、作業効率も上がりそうだ
今回の新機種とタイミングを合わせて発表されたのが、Wacom Pro Pen 3木製グリップと、ペンの後に消しゴムスイッチが付いたWacom Pro Pen 3E。特に、木製グリップは開封してしばらくは檜の香りが感じられるとのことで、リラックス効果も期待できるかもしれない