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有機EL採用で史上最薄・最軽量!”プロの仕事場”を持ち運べるペンタブ「Wacom Movink」が発表
広色域&ハイコントラストを備えスペックに死角なし
2024年4月24日 14:00
- 【Wacom Movink】
- 5月15日 発売予定
- 価格:118,800円
ワコムは4月24日、有機ELディスプレイを採用した新型ペンタブレット「Wacom Movink」を発表した。価格は118,800円で、5月15日発売予定。販売はワコムストアのみで行なわれる。
「Wacom Movink」はワコムで初の有機ELディスプレイを採用し、史上でも最薄、最軽量を誇るフルHD解像度の13.3形ペンタブレット。発表に先駆けて行なわれた新製品の体験会ではワコムのプロダクトマーケティングマネージャー 小幡幸結氏とHead of Display Engineering 川副裕之氏、そしてデザイナーの有馬トモユキ氏が登壇し、製品の新しさや特長、「Wacom Movink」が描く未来が語られた。
薄くて軽くて全部入り!「Wacom Movink」
ワコムのタブレットにはプロフェッショナル向けの「Wacom Cintiq Pro」やハイアマチュア向けの「Wacom Wacom Cintiq」、エントリー向けの「Wacom One」などが用意されているが、「Wacom Movink」は「Cintiq Pro」に次ぐ、プロフェッショナルユースに耐える上位シリーズとして新たにラインナップされる。
「Wacom Movink」のポイントはなんといっても有機ELを採用したことで得られた本体重量わずか420gという軽量さ、最薄部でたった4mm厚しかないという、「軽さと薄さ」からくる機動力だ。「Movink」という名は「持ち運びやすい、移動しやすい」=MOVEと、「描く」=Inkを組み合わせた語であり、まさにその精神を体現する製品となる。
ワコムがこの新型モデルの開発に着手したのは、クリエイターの方々が例えばPC、マウス、ペンタブとスタンド……などなど、沢山の荷物を持ち運びながら様々な現場で仕事をしているという現状があり、彼らからの「もっと持ち運びやすくて、軽いペンタブレットが欲しい」という声に応えるためだ。そしてもちろん製品はその条件をクリアしつつも、プロが求めるスペックを満たすものでなければならない。
「Wacom Movink」はスケッチブックのような薄さと、ワコムの高精細なペンを組み合わせることで、ワコムが重視する「紙とペンの体験」を実現している。さらに製品の左右に備えられたUSB-Cポートを用いてケーブル1本で接続できる利便性、レイアウトの自由さを備えるほか、Pro Pen 3ペンテクノロジーに加え、有名文房具メーカーのデジタルペンにも採用されている汎用性の高いペンテクノロジーの双方に対応。ショートカットキーを自在に割り振ることができるタッチキーも備えている。
開発にあたり、やはり肝になったのは有機ELディスプレイ。川副氏によれば様々なディスプレイを検討してきたが、最終的に13.3インチのサムスン製ディスプレイを採用。サムスン電子、日本サムスンからのバックをアップを受けつつ、綿密な調整を施したモデルとなっているという。
その特徴のひとつはペンを置いた部分と実際の表示の間に生まれる「視差」が極めて小さいこと。視差を小さくするためには表示面の上に重なる部分を薄くする必要があるが、薄い有機ELディスプレイを採用することで、視差においてもワコム史上もっとも小さなモデルに仕上げることに成功した。
また、液晶はペンなどで押す、つまり圧を加えることで押した部分の周りにたわみ、モアレが発生するが、有機ELではその特性上表示変化が発生しない。また、DCI-P3のカバー率100%、Adobe RGBカバー率95%を誇る高色域を備え、コントラスト比は100,000:1。採用された有機ELディスプレイそのものが低ブルーライトカットの規格であるEye Care Display認証を取得しているほか、色表現においてはPantone/Pantone SkinTone認証を取得。購入直後から正確な色表現ができるよう出荷段階で念入りな調整が施されているが、Wacom Color Managerと併用することで、カスタムで自分にあわせたモードを設定することもできる。
上記のように、ワコムが薄さ、軽さ、色の再現力など有機ELの持つ特性を最大限に生かした形で製品化したのが「Wacom Movink」となる。片手でも全く問題なく持てるようなこの軽さから、使う場所や姿勢を問わず、いつでもどこでも十二分なスペックでクリエイティブな仕事が行なえるようになるというわけだ。まさに軽くて薄くてハイスペック、と全てを備えたかのような製品だが、ワコムにとっても有機ELディスプレイを扱うのは初。川副氏はその特性をどう調整していくかということに加え、ペンもそれに合わせたものを作らなければならず、かなりチャレンジングな部分もあったとしたが、結果として作りたいと思っていた商品が完成。「プロの皆さんに是非使っていただきたい」と自信を覗かせた。
UIデザインにおいては「直接ハンドルを握っている」かのような操作感
続いては日本デザインセンター ポリローグ研究室のクリエイティブディレクターであり、武蔵野美術大学・基礎デザイン学科の非常勤講師も務める有馬トモユキ氏が登壇。「Wacom Movink」を前に、現在携わっているゲームタイトル「Guns Undarkness」のUI作成を行ないながら実際の使用感を語った。
有馬氏は「Wacom Movink」の身上である軽さ、薄さについてはもとより、実際にUIデザインを行なう上でよく使うことが多いながら、従来のペンタブレットでは表現し切ることができず「若干諦めていた部分もあった」という微細な黒の違いがわかることが嬉しいとした。また、UIデザイナーは文字を入力する機会も多いためキーボードが必須。ペンタブレットとの併用において、自由な配置が可能なのは「Wacom Movink」ならではと語る。さらに、仕事上では共同作業をする機会が多く、例えば会議の際に向かい側の人に「ちょっと描いてみて」と、気軽に渡せそうな感じも良いと評価した。
加えてUIデザイナーは「描いている感覚」を求めてマウスや板タブを使う人が多いとのことだが、「Wacom Movink」では視差が少ないことで、ペンタブでも「直接ハンドルを握っている」かのような体感が得られ、これは「かなりの衝撃体験」だと語る。プレーヤーが画面を操作するかのような直感的なデザインが可能で、イラストレーターはもとより、まさにゲームのインタラクションデザインをする人には特にオススメしたいという。また、従来イラストやデザインは打ち合わせをした上で持ち帰って検討するということが多かったが、「Wacom Movink」を持ち運ぶことでその場で試せることが劇的に増え、一方で「言い訳ができなくなってしまった」とも苦笑交じりに語っていた。
また、有馬氏は初代「Cintiq 13」から数えて約10年来のワコムユーザーとのことだが、書き心地に関しても絶賛。「格段に良くなった」とコメントしたほか、ノングレアであることや全くモアレがないこと、暗い背景で黒い素材を使っていてもロストすることがない等実用上のメリットを次々と上げたほか、借りている間に「かなり意地悪なこと」をしてみても傷がつかず、薄いながら耐久性に優れていることも言及した。
最後にサイズについて。大きさについては何が最良なのか自身でも結論は出せていないとしつつ、13インチのノートPCと重ね、リュックサックなどに入れて持ち運べるサイズ感であるのが良いという所感を元に「周りのものと親和性がいいサイズなのかもしれない」とした。
「Wacom Movink」は有機ELディスプレイの特性を最大限に生かした製品であり、携帯性に優れ、それでいて色再現度やコントラスト比など基本スペックにも優れる、まさにプロの仕事場をどこにでも持ち運べるようなツールだといえる。そのような製品が実績あるワコムから登場したことは、今後の市場にも一石を投じることだろう。発売時期の発表は後日予定となるが、今から発売が楽しみだ。