インタビュー
重いストーリーが夢子によってコメディーに!「デブとラブと過ちと!」ままかり氏インタビュー
いよいよアニメ化!南&谷川の登場にも期待
2025年10月6日 00:00
- 【アニメ「デブとラブと過ちと!」】
- 10月6日 放送開始
- TOKYO MX、BSフジ、サンテレビ、ABCテレビほか
10月6日より放送開始を迎えるTVアニメ「デブとラブと過ちと!(デブラブ)」。本作はコミックシーモアで配信中のままかり氏による同名のマンガを原作とした作品で、主人公は体格が良く、コンプレックスの塊で自分に自信がなかった夢子。彼女が大事故に遭って記憶喪失になったことをきっかけに、一転超ポジティブになるところから物語は始まる。
夢子の外見は以前から変わらない。ところが性格は大きく変化し、少し過剰なほどの自信に満ちた行動や言動がコメディタッチで描かれつつも、その姿勢が周囲を元気づけていく姿が印象的な作品だ。一方で以前の記憶を失った彼女の過去に何があったのかという謎、そして夢子の過去を知っていそうな人物たちの暗躍……などなど、サスペンス的な先が気になる展開も魅力の一つだと言える。アニメ化以前にも2022年にはドラマ化が行なわれており、3時のヒロイン・かなでさんが夢子役を熱演した。
今回はTVアニメ化を前に原作マンガの作者・ままかり氏にメールインタビューを行ない、本作が生まれたきっかけからアニメの制作に当たってのエピソードなどを語ってもらったので、その内容をご紹介しよう。
「こんなブスでデブな私が美しいあなたを好きになったから、バチが当たったんだ――」コンプレックスの塊・夢子はある日、大事故にあう。なんとか一命を取り留めたが、目が覚めた彼女はまるで人が変わってしまっていた!? 「これが…私…!? 超かわいい」以前と180度違う彼女に周囲は驚きと戸惑いを隠せない…。しかし、超ポジティブになった夢子によって環境は大きく変わっていく―。悩みやコンプレックスは誰にでもあるもの。それぞれのキャラが隠しているそれらを、夢子がぶった切っていく!! 恋に、仕事に、友情に……そして殺人未遂事件!? 読めば元気になるドタバタラブコメディー☆
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「デブラブ」夢子は”元気で明るい女の子”と”認知の歪み”の掛け合わせで生まれた
――「デブとラブと過ちと!」のアニメ化おめでとうございます!今のお気持ちをお聞かせください。
ままかり氏:ありがとうございます!いよいよと言う感じです。ここまで長かったような、あっという間のような。緊張とワクワクが毎秒互い違いに押し寄せて来ています。
――そもそも「デブとラブと過ちと!」はどういった経緯で描き始めたのでしょうか?
ままかり氏:新連載で何を描きたいかなぁと考えた時に、漠然と次の主人公は「元気で明るい女の子が描きたい」と考えていました。そして過去に心理カウンセラーの方に「認知の歪み」についてのお話を伺い、興味を持ちまして。考え方や捉え方でものの見え方が変わる……そういうことをマンガに生かせないかな、と。さらに担当さんから人気のジャンルを伺ってそれらをマッチングしてみよう、というところから始まったように思います。
――本作は”外見がそのままで、記憶喪失により心の持ちようだけが大きく変わる主人公”というのが作品の大きなポイントかと思います。本作の構想はどういった形で生まれたのでしょうか?
ままかり氏:先ほど申し上げたように、考え方や捉え方を変えると生き方も変わる……?というのを表現するために、同じキャラクターである必要がありました。ですが実際問題思考のクセはそう簡単に変えられるものではありませんし、あくまでマンガというエンタメなので説教くさくなるのも避けたいし。なのでそこに「記憶喪失」で人格が変わるという設定を持ってきた感じです。
さらにわかりやすさを出すために、記憶喪失前は極端に内向的で自分のことが嫌いな子、喪失後は突き抜けて自分大好き人間に。結果、「事件」「不倫」「ミステリー」など重いストーリー設定のはずが、夢子のキャラのせい(?)でコメディーになりました。
――夢子の周りの登場人物も、暗い過去や闇、それぞれの思惑を抱えた魅力的なキャラクターだと思います。それぞれモデルや着想を得たアイデアなどはあるのでしょうか?
ままかり氏:特にモデルはいません。それぞれのキャラクターの悩みや過去なども、濃淡はあれど特別珍しいものでは無いのかなと思います。
――登場人物にはそれぞれキャラクター造形と、作中での役割があるかと思います。これはキャラクターのイメージが先行したのか、物語上の役割が先行したのか、どちらでしょうか。
ままかり氏:キャラクター先行だと思います。キャラデザをする時にストーリーに絡むような設定を考えたりもしますが、基本的にはあまりストーリーラインのことは気にせずキャラクターありきで、「こんなキャラクターが描きたい、夢子と絡ませたい」という感じです。
――本作で伝えたいこと、メッセージはどんなことでしょうか。
ままかり氏:メッセージというほどかっこいいものでは無いのですが……みんな違ってみんな正解。どんな女の子だってなりたい自分になる権利がある!ラブ♡ということでしょうか。
――本作は累計1億2800万DL超、累計57,000部、コミックシーモアの少女マンガデイリーランキング1位獲得など、読者から強い支持を受けている作品だと思います。先生からみて、どんなところが読者に響いているとお考えでしょうか。
ままかり氏:やはり夢子のキャラクターでしょうか。一見マイナスに思えてしまいそうな出来事も、夢子にとっては逆にプラスだったりチャンスとする視点は支持をいただいているポイントかと思っています。特に4話のラムネチップスのプレゼンで副社長である圭介に「あと一歩足りない」と言われた時に夢子が放った「な~んだ!あと一歩でいいのね!」というセリフは「そういう捉え方があるのか!」と反響が多かったです。
また夢子は基本的にどんなことも肯定してくれるので、「こんな上司がいい」「一家に一人夢子が欲しい」「友達になりたい」などのお声も多くいただきます。多くの方に愛されるキャラクターを生み出せたことは本当にラッキーでした。
「私も何かになりたい!」からマンガを描き始める
――そもそもままかり先生はどういった経緯で、いつからマンガを志したのでしょうか。
ままかり氏:子供の頃はよくノートや紙にシャーペンでマンガの真似事みたいなことをしていましたが、大人になるにつれマンガから離れた時期もありました。会社員、結婚出産を経てふと、「母や妻の他に、自分は何者なんだろう?私も何かになりたい!」と漠然と思うようになりました。自己実現欲求とでも言いますか。でもこれと言った資格もなく。子供の頃から好きなマンガなら努力を重ねればいつか何かの形になるかもしれない、と34歳の時に投稿を始め、36歳でデビューしました。
――「デブとラブと過ちと!」以前にも作品を手掛けてらっしゃいましたね。
ままかり氏:過去作の「まわれ!白川さん」は読み切りからスタートし、初連載に繋がった思い入れのある作品です。こちらも「イケメン女子白川さん」というキャッチーなキャラクターを生み出せたと思っています。コミックシーモアで初の短期連載「触れたい、できない」では男性恐怖症に悩む女の子「立夏(りっか)」の挑戦と成長、そして初恋を描きました。思い起こせば描きたいことはどの作品も共通しており、自分の殻を破るだとか、頑張る女性を応援したいということかも知れません。
――影響を受けたマンガ家さんや作家さんはいますでしょうか。
ままかり氏:池田理代子先生の「ベルサイユのばら」はアニメでよく観ておりました。ひたすら気高く美しく、そして悲しく……今も大好きです。二ノ宮知子先生の「のだめカンタービレ」は漫画家を目指すきっかけの一つになった作品です。音大のことなど何も知らなくてもすごく面白いし、とにかくキャラクターが魅了的で。おこがましくも、「私もこんな読み応えのある面白いマンガを描きたい!」と憧れました。紡木たく先生の作品も大好きでよく模写してました。
――抽象的な質問で恐縮ですが、先生にとって”マンガを描くこと”というのはどういった意味を持つことでしょうか。
ままかり氏:先ほども少し触れましたが、初めは自己実現のためでした。コミュニケーション下手だし社不(社会不適合者)なので、会社勤めに向かない私が社会と繋がれる唯一できる大事な仕事なのです(笑)。ですが現在は読者様から「面白かった」「次回も楽しみ」などのお声をいただいた時の幸せに価値や意味を感じています。私のマンガを読んで「色々あるけど、マンガ読んで明日も頑張ろう」そう思う方がいらっしゃるならマンガを描いていてこんなに嬉しいことはありません。
――現在は概ね月1掲載ペースで連載されているかと思います。どのようなフロー、体制で制作されているのでしょうか。
ままかり氏:現在毎月の「デブとラブと過ちと!」の他に新連載の原稿を隔月で進めています。概ね月の初め第一週のうちに「デブラブ」の次回のプロットを担当さんと決めます。第二週でネーム(修正含む)、第三週から原稿に取り掛かります。原稿は一週間程度で仕上げます。残りの日程で新連載のプロットのうち合わせやネームをする感じです。なので偶数月が原稿が二つなので忙しいですね。アシスタントさんは背景スタッフさんが一人です。
――連載を続けるうえで、特に大変なことはありますか。また、それを乗り越えるためにどのような努力をしていますか。
ままかり氏:歳とともに体力と集中力が無くなって疲れやすくなったと感じ、少し焦っています。他には健康診断に引っかかったりしているので、大好きなお酒を控えたりウォーキングやスクワットをしたりと、地味な努力はしています。
「ドラマもアニメも、原作者である私を尊重してくださり、大変ありがたかった」
――2022年にはドラマ、いよいよ今月からはアニメの放送が開始されます。それぞれのメディアミックス展開についてはどのような感想をお持ちですか。
ままかり氏:まずドラマが素晴らしかったです。「デブラブ」は色々と要素が多いので話数の少ないドラマにはどうかな……と内心思っていたのですが、本当にうまくまとめていただき感動しました。ドラマからマンガを知っていただいた方も多かったです。
またアニメはドラマよりもマンガとの親和性が高いと思いますので、マンガを読んでくださっている方にも楽しんでいただけるのでは無いかと思います。
――以前のドラマ化の際は脚本や演出、キャスト選定等、先生はどのように関わられたのでしょうか。
ままかり氏:キャストに関しては、担当さんと「もし今後ドラマになるようなことがあれば、夢子は誰に演じて欲しいか」と雑談していた際に「3時のヒロインのかなでさんだったら嬉しいです」というお話はしていました。なので実際にかなでさんが引き受けて下さった時は本当に嬉しかったです!言ってみるもんだなと。また脚本も全て見せていただき、脚本家の綿種アヤ先生と本田隆一監督のご意見も伺いながら進めさせていただきました。
――同様に、アニメについても希望を出されたり、監修されたりしたのでしょうか?
ままかり氏:こちらもキャラデザの段階から各話の脚本まで全て拝見させていただきました。声優さんに関しては候補の方々のデモテープを聴かせていただきましたが、みなさん本当にお上手で……正直どなたでもありがたいです!という気持ちでした。結果実力のある方ばかりで嬉しいやら恐縮するやら……。ドラマもアニメも、原作者である私を尊重してくださり、大変ありがたかったです。
――アニメならではの見どころ、あるいは特にアニメ化が楽しみなシーンを教えてください。
ままかり氏:ドラマでは出番の無かった南と谷川が出てくるところでしょうか。夢子と南たちの掛け合いも見どころなのでぜひ楽しんでいただきたいです。また、OP、ED曲とどちらも「デブラブ」を意識して作って下さった、とても魅力的な楽曲となっていますので、そこもぜひ注目(聴?)していただきたいです!
――最後に、本作のファンに向けて、メッセージをお願いします。
ままかり氏:いつも応援してくださり本当にありがとうございます。皆様のおかげでドラマ化に引き続きアニメ化までも実現することができました!放送直前となりドキドキしていますが、一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。アニメ「デブラブ」、ぜひご覧ください!
(C) ままかり/シーモアコミックス
(C) ままかり/シーモアコミックス・アニメ『デブとラブと過ちと!』製作委員会