特別企画

【今日の読み切り】「すべていつわりの家」

手塚治虫の名作短編が夏休みに無料で公開中

【すべていつわりの家】

著者:手塚治虫

 夏休みに合わせて、手塚プロダクションの公式Xが手塚治虫の「すべていつわりの家」を無料で公開している。「すべていつわりの家」は、「メタモルフォーゼ」という短編集に収録されている作品。この短編集は、1976年に月刊少年マガジンで連作された短編を中心に、“メタモルフォーゼ(変身)”をテーマにした作品を集めている。

 手塚治虫というと「ブラックジャック」や「火の鳥」のような長編の名作が有名だが、実は短編にも非常に印象的な作品が多くある。筆者も子どもの頃に図書館で一日中手塚治虫全集を読み漁ったが、今でも忘れられない短編は多い。本作「すべていつわりの家」もそんな中の一本だ。

 街の郊外にある家で両親と暮らしている久は、頻繁に地球の終わりの夢を見る。ドロドロにとけるビル、まっくろこげになった人減。なぜそんな夢を見続けるのかいぶかしく思っている久、だが、そんな久は少しずつ日常の異変に気づき始める。

 氷のように冷たい母親の体。町で流行っているという病気で、異様な姿に変化してしまった住民。久は、親戚だという少女ドラコとともに、街を見に行くことにする……。

 すでに50年近く前の漫画なのだが、今みてもその新鮮さに驚く。そして漫画が込めたメッセージは現代を生きる私たちの心にも響いて来る。手塚治虫の名前は知っているが、読んだことがないという人は、ぜひ短編から読んで見て欲しい。

□「すべていつわりの家」を読む

【あらすじ】

 久は毎晩のように地球最後の日のような悪夢に悩まされている。町では人の頭に角が生える病気が流行っており、母親はずっと家にいるよう久に命じる。しかし、すべてを怪しんでいる久は真実を確かめるために、親戚の少女と共に街に向かう。