特別企画
"待"ってたぜェ!!この"展示(とき)"をよォ!!「疾風伝説 特攻の拓」展レポート
"COOOL"な展示の数々、特攻服やバイクも!!
2024年5月3日 00:00
- 開催期間:4月27日~5月12日
- 料金:2,000円(前売り券)
- 2,200円(当日券)
- 会場:YOKOHAMA COAST Room1
- 〒220-0011 神奈川県横浜市西区高島2-14-9 アソビル2F
ムービックは4月27日より、横浜駅直通の複合型体験エンタメ施設「ASOBUILD(アソビル)」2F ROOM1にある「YOKOHAMA COAST(ヨコハマコースト)」にて「疾風伝説 特攻の拓展」を開催している。期間は5月12日までで、価格は当日券が2,200円で、前売り券が2,000円。来場特典として、拓が巻いていた「外道」のハチマキがプレゼントされる。会場では一部を除いて展示内容については、自由に写真撮影が可能となっている。
「疾風伝説 特攻の拓」は1991年から1997年まで週刊少年マガジンで連載していたヤンキーをモチーフとした全27巻の漫画作品。原作は佐木飛朗斗氏、作画は所十三氏が担当する。その後も外伝の小説を原作者の佐木飛朗斗氏自身が手掛けたほか、原作者はそのまま、作画担当を変更して「疾風伝説 特攻の拓 ~After Decade~」という続編も月刊ヤングマガジンにて全9巻で連載するなど、シリーズ累計3,300万部の大人気作品だ。
筆者は作画を担当する所十三氏について、月刊少年マガジン連載の「名門!多古西応援団」や週刊少年マガジン連載の「仰げば尊し!」や「SHOGUN」の頃から知っていた事もあり、本作「疾風伝説 特攻の拓」もチェックしていた。
本作はいわゆるヤンキー漫画の1つで、1990年頃の週刊少年マガジンでは「GTO」の前身となる「湘南純愛組!」や「カメレオン」など多くのヤンキー漫画が連載されており、「疾風伝説 特攻の拓」もその流れの1つと言える。主人公の浅川拓は私立横浜港ヶ丘高校に通う典型的ないじめられっ子だ。そんなある日、横浜では有名な暴走族「外道」のリーダー、鳴神秀人が転校してくる。転校直後からその強さを見せる秀人に憧れた拓は彼に憧れて、積極的に声を掛けていき、交流が深まっていく。その後は暴走族「爆音小僧」に入り、様々な人たちと出会い、抗争などを通して友情を育み、成長していくといった展開だ。
当時から印象に残っているのはとにかく背景各所に配された「!?」だろう。意識せずに読んでいても、白の多い場所に通常のセリフよりも大きめのフォントで存在感をアピールしているので、比較的直ぐにその存在に気が付けるはずだ。また意識した上でよく見てみると、本当に何でもないような場所やキャラクターに被る形でなど、至る所で見かける事になるのが面白い。後に「マガジンマーク」と呼ばれる「!?」を定着させた作品の1本が本作であるのは間違いないだろう。
他にも強調したい文字を "" ダブルクォーテーションで括ったり、一般的な読みとは異なるユニークなフリガナを当てたりするのがCOOOLなのだ。こうした特徴を含んだ名セリフも数多く生み出しており、「"事故"る奴は・・・・"不運(ハードラック)"と"踊(ダンス)"っちまったんだよ・・・・」や「"待"ってたぜェ!!この"瞬間(とき)"をよォ!!」、「ドエレ―――"COOOL(クール)"じゃん・・・・?」など今なお、XなどのSNSにてネタとして使われるネットミームへと昇華した名セリフの数々は「疾風伝説 特攻の拓」を知らない人でも見た事があると思われる。
ヤンキー漫画の基本通り、本作のメインは暴走族たちによるガチンコ(ケンカ)と友情が魅力の1つだが、もう1つのお約束でもあるバイクにもかなり強烈なこだわりが感じられるのも魅力の1つだ。主人公の拓はケンカもするが、その才覚を見せるのはむしろバイクの腕の方だ。ヤンキー漫画にバイクは付き物だが、本作では主人公の拓以外のメンバーたちもそれぞれが自分たちの愛車を持っており、YAMAHA FZR250Rなど実在するバイクが登場するなど、バイクでの走りのバトルも本作の魅力の1つと言える。
特に天羽時貞の愛車であり、後に拓の愛車となるYAMAHA SR400は「悪魔の鉄槌(ルシファーズ・ハンマー)」と凶悪なネーミングが付けられており、本作における走り面での重要な要素の1つにもなっている。
さらにもう1つ、原作者の佐木飛朗斗氏が音楽への造詣が深い事から、楽器や音楽、ライブのエピソードといった音楽関連の描写がリアルな点も本作の魅力の1つとなっている。
今回は「特攻の拓展」開催前日に行なわれたメディア向け内覧会に参加する機会を得たので、会場の様子を簡単に紹介していきたい。
ドエレ―――"COOOL(クール)"な展示の数々!
展示内容は主に原画が中心となっており、漫画本編の名シーンの数々が原画で確認できる。
個人的に漫画の原画で見てほしいポイントは雑誌や単行本掲載時の写植の脇にはみ出ている手書きのセリフだろう。当然写植が乗っかるため、殆ど見る事はできないが、たまに鉛筆で書かれた元のセリフが確認できる場合があるのだが、当時の臨場感が感じられ、非常に心に刺さる。また、黒のベタ塗りの"リアル"も確認できるのは、原画展ならではの楽しみの1つと言える。
なお、本展示会では、写植がアクリルパネルで上から被せられて展示している物もいくつか見られた。これについて確認したところ、当時の写植が剥がれてしまったり、汚れて使えなくなるなど、"紛失(ロスト)"したため、それを補完しているのだとしている。
入口には原作者の佐木飛朗斗氏と作画担当の所十三氏のコメントがパネル展示されているほか、全27巻の単行本表紙が並べられたパネルも用意されている。
展示の並びは基本的に時系列順となっており、拓が秀人と出会った運命的な最初の私立横浜港ヶ丘高校でのエピソードから始まり、その後転校した聖蘭高校編、半村誠追悼集会編、鳥浜ロードゼロヨン編、天羽時貞の増天寺ライブ編、須王帰国編、来栖出所編、灰色の亡霊編、B突最終決戦編と全27巻のエピソードが全て網羅されている。
会場の要所には、エピソードにちなんだチームの特攻服のレプリカが展示されており、色合いや文字などの細部が間近で確認できる。原画展示の下には単行本掲載時の同じページが張られており、比較が行なえるほか、壁にもそれぞれのエピソードで心に残る名セリフの数々が書かれており、無意識のうちに物語が脳の奥からフラッシュバックする。
本編の象徴的なカットのいくつかは、ユニークな形で再現したり、独創的なスタイルで立体化するなど、原画だけではない魅力も味わえるようになっている。
原画のエリアを抜けると、引き続き、カラー原画ギャラリーが登場する。ここでは単行本の表紙のほか、週刊少年マガジン連載時のカラー表紙など、所十三氏の色使いが堪能できる。こうしたカラー原画ギャラリーを抜けると、そこには天羽"セロニアス"時貞が使用したギター「SADOWSKY NYC ST M Top 1344」の現物が展示されていた。
その後は、国産絶版バイク専門店「Zeppan UEMATSU」協力による、実車のバイク展示だ。ここには拓が所属していた暴走族「爆音小僧」の七代目頭、「マー坊」こと鮎川真里が駆る真紅の「HONDA CB400FOUR」が展示。バックには「爆音小僧」の旗も飾られており、ドエレ―――"COOOL(クール)"だ。その反対側には、拓が最初に出会った友達、鳴神秀人の愛車、パールホワイトの「KAWASAKI Z400FX-E4」が「外道」の旗とともに展示されている。さすがにバイクにまたがることはできないが、間近でそのサイズ感などが味わえる。
これで全ての展示が終了となる。会場の出口には、「特攻の拓」の主要メンバーたちの等身大パネルが置かれており、来場者たちに感謝の挨拶をしてくれているようにも感じられた。出口には物販コーナーも用意されている。
最ッ高ォの"原画展"じゃん!?
以上、簡単ではあるが、「疾風伝説 特攻の拓展」の展示について簡単に紹介した。会場には本作のイメージCDの楽曲と思われるオリジナル楽曲などが掛けられており、身も心も「特攻の拓」のモードにさせてくれる。
ケンカが中心というだけでなく、バイクや音楽、特にロックに関するこだわりが随所に見られる本作は、間違いなく一時代を築いたマガジン代表作の1本だ。筆者はエピソードの全てを網羅しているわけではなかったが、ざっくり全体の流れを把握できていれば、十分に楽しめる展示になっていると感じられた。
そのため、本作を未読の人であっても、1度本展に訪れて、所十三氏の基本和やかな絵柄の中に潜む、狂気をはらんだキャラクターたちの作画を堪能することが、本作を読んでみるきっかけになる可能性は十分にあるだろう。本作は今でも復刻版が販売されており、書店などでも気軽に見かけることができるので、帰りに本屋で全巻大人買いも可能だ。
もちろん、当時リアルタイムで全て読んでいた人たちや、完結後に知って読んだ人たちも、是非当時の雰囲気を存分に再現した本展にきて、全27巻の物語を再認識してほしい。
(C)佐木飛朗斗・所十三/講談社