特別企画

「幼稚園WARS」が今アツい。作中に登場する銃へのこだわりと共に魅力をご紹介

銃の細かい描き分けがファンの心をくすぐる作品

 MANGA Watchの創刊にあわせて、今、個人的にハマっている「幼稚園WARS」を紹介したいと思う。

 昔から「シティーハンター」や「ブラックラグーン」など主人公が銃を持って活躍する作品が好きで、マンガやアニメで銃が出てくるものがあると今でもチェックしてしまう。

 昔からジャンプ作品は好きだったが、「少年ジャンプ+」はスマートフォンで手軽に読めて、面白い作品に出会えるので頻繁にチェックするマンガアプリでもある。その中でも少し前にハマって今でも読み続けているのが「幼稚園WARS」だ。

「幼稚園WARS」1巻の書影

 「幼稚園WARS」は、漫画家の千葉侑生氏による作品で「少年ジャンプ+」で2022年9月から連載されている。単行本は2024年1月現在で、7巻まで発売中の作品だ。なお、最新刊となる8巻は3月4日に発売予定となっている。

 政治家や大企業の社長、映画スターなどのセレブの子どもが通う幼稚園が舞台となる。ここでは減刑と引き換えにボディーガード兼幼稚園の先生として配属される服役者たちと、子どもたちを狙う襲撃者たちとの間でバトルが繰り広げられる。加えて、そんな状況でも出会いを求めてキュンキュンするシチュエーションのギャップが面白い「バイオレンス×ラブコメディ」だ。ここからは作中に登場する銃の話を交えつつ作品の魅力を紹介していく。

「幼稚園WARS」ストーリー紹介

 「幼稚園WARS」の主人公は、世界の重鎮たちの子が通う「ブラック幼稚園」の“特殊教諭”「リタ」。彼女は元・伝説の殺し屋で、日々襲ってくる刺客から園児たちを1年間守り切れれば自由の身になれるという条件のもと、幼稚園の先生をやっている。同僚は、同じ境遇で自由の身を目指す服役者たち。それぞれの事情を抱えながら、自分の得意な武器や技で刺客たちを倒していく。

 一方で、リタをはじめ登場人物たちには、殺伐とした日常の中でも出会いを求めたラブコメ展開もある。園児たちを1年間守り切って自由の身になれるのか? またはラブコメ展開に進展があるのか? とどちらも気になってしまう。

作者のX(Twitter)投稿画像より:リタ(左)とダグ(右)の関係性にも目が離せない

個人的な見どころは本格派アクションの合間に挟まれるラブコメギャグ展開!

 元殺し屋でありながら幼稚園の先生というギャップもツッコミどころ満載の本作。加えて、園児たちを危険な目から守り切らなければならないというシリアスな立場に置かれているのに、出会いを求めて恋愛脳になっている登場人物たちのギャップが面白い。

 特に主人公のリタは、イケメン好きで惚れやすく、襲ってきた刺客に恋をすることもある。しかし、そのストライクゾーンの狭さから、反射的に返り討ちにしてしまうなど、テンポよいアクションでどんどん読み進められる爽快感と「そうなるんかーい!」とツッコミたくなるギャグセンス、ナイスな落ちが見どころだ。

作者のX(Twitter)投稿画像より:ストライクゾーンが狭すぎることが幸い(?)して毎回イケメン刺客を返り討ちに。ちなみに、Xでもツッコミ画像として使われる頻度が多い気がする

 登場する銃も千差万別で、登場人物の過去や個性豊かなキャラクターによって使い分けられている。元殺し屋のリタは、ベレッタ92FS(形状が特徴的で判別しやすい。たくさん弾が撃てる15発入り)、元警察官のルークはコルトパイソン 6inch(警官だからリボルバー? 初回登場時の扉絵ではS&W M19 4inchっぽかった)など、納得できるセレクションとなっている。元詐欺師のダグはなぜがワルサーP99 DAOとマニアックだったりするのも興味深い。

リタの銃、ベレッタM92F。こちらは筆者の私物のモデルガン(MGC製)。東京マルイの「M92F ミリタリーモデル」など同じモデルが今も発売されている

 ベレッタM92Fはイタリアの銃器メーカーベレッタ社のハンドガン。米軍がM9として採用したり、映画「ダイ・ハード」でもブルース・ウィリス演じるマクレーン刑事が使うなど、多弾倉オートマチックの代表的存在。女性的な美しいフォルムも魅力的だ。

東京マルイの「M92F ミリタリーモデル」のページ

黒のエプロン姿でリタになりきってポーズをとってみた

 一方、元警察官ルークの使う銃はコルトパイソン。美しいデザインで高精度な銃だが、高価なので警察署では採用されないことが多い。ルークは「ブラック幼稚園」の経費で買うので遠慮なく要望したのかもしれない。

タナカの「Colt Python .357Magnum 6inch “R-model” スチールフィニッシュ」のページ

ルークの銃はコルトパイソン。画像は私物のコルトパイソン 357マグナム(MGC製)。同じモデルは、タナカワークスの「Colt Python .357Magnum 6inch “R- model”」などいくつかのメーカーから発売されている
ルークになりきって劇中シーンを再現。リボルバーは弾を入れる時がカッコいいのだ

 元詐欺師、ダグの銃はワルサーP99 DAO。流行りのポリマーフレームを採用したコンパクトオートマチック。携帯しやすく扱いやすいのがダグにはよかったのだろうか?

東京マルイの「P99 DAO」のページ

ダグの銃はワルサーP99 DAO。画像は東京マルイの「P99 DAO」

 敵として登場する刺客たちの銃も、グロックやガバメント、ベレッタなどのほか、アサルトライフルや対戦車ロケットなどバラエティに富んでいる。

手持ちのモデルガン、エアガンなどで主人公たちの武器の集合写真を撮ってみた。これだけでこれは誰の銃、などイメージが湧く。(ワルサーP99はDAOではないモデル)

 作品の傾向を考えれば銃をそこまで描き分けなくても違和感がないように感じるが、細かく描き分けていることに好感が持てる。マンガにありがちな薬莢ごと弾が飛んでいくなどのトンデモ描写もなく、ツッコミどころが少ないのも個人的にはGood! 時折、銃口の中にインナーバレルが描かれていたり、パーティングライン(プラスチックの金型の跡)などが描かれていたりと、参考にしたのがエアガンだとわかってしまうのはご愛嬌だ。

 戦闘シーンや銃を構えるシーンなどは、アシスタントがモデルガンや刀を持ってポーズをとりながら描いていることもあるそうで、「その銃の操作を丁寧に描いてくれていて嬉しいな」というシーンが多いのも魅力的だ。「幼稚園WARS」の作風に言うなら「そこかーい!」というポイントだが。他は良いのに武器の描写だけおかしくて興醒めしてしまう、という作品もあるので、ラブコメ良し、アクション良し、銃捌き良しと完璧なのが何よりも嬉しいのだ。ストーリーもグイグイ引き込まれてゆく展開でドンドン読めてしまう。

作者のXにて投稿された迫力あるアクションシーンの撮影風景がこちら。舞台裏もカッコイイ!

 少し脱線するが、この「幼稚園WARS」には、連載に至るまでのドラマがある。作者の千葉侑生氏は、企画が行き詰まる時期があり「幼稚園WARS」も担当編集者に「読み切りなら……」と言われたそう。しかし、連載にしたいと強い思いを持った千葉氏は、編集者に内緒でインディーズ連載に勝手に応募。結果として優勝となり連載を勝ち取ったというエピソードがある。

 そんな熱い思いが込められたこの作品は、結果として大人気作品となり、2023年には複数のマンガ賞を受賞、入選するなどの大躍進となった。

 そんな「幼稚園WARS」が連載されている「少年ジャンプ+」は、序盤のエピソ ードや最新話が無料で読めるので、どんな作品か気になる人や、単行本が待てない! という人にも嬉しい仕様になっている。ぜひ、皆さんも「幼稚園WARS」を読んでみてもらいたい。

アプリ版の「ジャンプ+」では初回無料作品になっており、全話を課金なしで読むことが可能だ