読み切り

【今日の読み切り】「天を夢見て」

悪魔と戦う天使たち、羨望と絶望のまなざしで見つめる1人の男がいた――…。

【天を夢見て】

著者:大雪晟

講談社

 兄ライアンとその妹ラミが暮らす国では、悪魔を倒すために天使の部隊が編成されている。天使の中でも最高位クラスだった父親を持つ2人。ラミは天使の資格を得てメキメキとその才能を発揮していく一方で、ライアンは17年もの間、天に選ばれずにいた。

 本作は、2024年9月から「コミックDAYS」にて配信されている大雪晟氏の、【アフタヌーン四季賞2024夏】にて準入選した短編作品。

 悪魔によって虐殺の限りを尽くされ、人類の存続が危ぶまれた頃、突如天から無数の矢が降り注ぎ悪魔を退けた。人がその矢に触れたとき、矢は光り輝き翼が生え、悪魔に対抗し得る力を得た。その奇跡の恩恵を授かった者を“天使”と呼んだ。矢に選ばれなかった者が再び選ばれる、なんてことは前例が無いのだが、ライアンは天使に焦がれるあまり、街の図書館司書をしながら天使になるための試験に挑み続けていた。

 尋常ではない情景と背景、人物の描き込みが、まるでアニメを観ているかのような臨場感を誘う。1ページ目から物語に惹きこまれる魅力があり、ストーリーも読み切りだということを忘れて続きを期待してしまうほど目が離せない。登場人物1人1人にストーリーがあるばかりか、セリフのない人物にも個性が見られ、世界観に浸るには十分な情報量がちりばめられている。是非彼らの行く末をその目で見届けてほしい。

□コミックDAYS「天を夢見て」のページ

【あらすじ】

 かつて大虐殺を引き起こした悪魔と、人間を護るべく発生した天使との戦争は、天使が優勢のまま続いている。天使に憧れ夢敗れ、人のまま30歳となったライアンは、天使である妹を眺め鬱屈した思いを抱えていた。その日、妹から悪魔を取り逃したことを聞いたライアンの目の前に、天使の証である矢が現われる…! どうしても諦めきれない“何か”を抱えたあなたへ送る、渾身のファンタジー。