特別企画
アバンたちの過去が描かれる「ダイの大冒険 勇者アバンと獄炎の魔王」第2部「先生編」スタート前に第1部をおさらい!
アバンストラッシュの誕生秘話、幼少期ヒュンケルと"父"の関係
2024年11月20日 00:00
- 【「ドラゴンクエスト ダイの大冒険 勇者アバンと獄炎の魔王」】
- 「Vジャンプ」にて連載(既刊11巻)
- 11月21日より第2部「先生編」が連載開始
- 著者:原作・三条陸氏、作画・芝田優作氏
原作を三条陸氏、作画を芝田優作氏が手掛けるマンガ「ドラゴンクエスト ダイの大冒険 勇者アバンと獄炎の魔王」の第1部・勇者編が完結。11月21日発売の「Vジャンプ」1月号より、続編となる第2部・先生編の連載がスタートする。
同作は1996年に完結した「週刊少年ジャンプ」連載の大ヒットマンガ「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」のスピンオフで、“前日譚”にあたる物語が描かれてきた。作中に登場するのは、アバン先生を筆頭としたお馴染みのキャラクターたちだ。
そこで今回は新章突入の直前というこのタイミングで、「ダイの大冒険」ファンに向けてあらためて同作の見どころを紹介していきたい。なお記事の性質上、コミックス最新11巻までのネタバレについて触れる箇所もあるため、その点についてはご了承いただきたい。
若き日のアバンを主人公としたスピンオフ
「ダイの大冒険」は累計発行部数5,000万部を突破している少年マンガの金字塔。1991年にTVアニメ化されたほか、2020年にふたたび完全新作アニメが制作された。
その物語は“怪物島”と呼ばれる南海の孤島・デルムリン島から始まる。ある日、勇者を育てる「家庭教師」を自称するアバンという人物が島に訪れ、主人公・ダイは猛特訓を受けることに。そこへ魔王ハドラーが襲撃を仕掛けてきたことで、アバンがかつて魔王を倒して世界に平和をもたらした伝説の勇者だったこと、さらなる敵・大魔王バーンが控えていることが判明する。
そして決死の覚悟でハドラーを撃退したアバンの意志を受け継ぎ、ダイは大魔王バーンを倒すための旅に出るのだった。
2020年から「Vジャンプ」で連載が始まった「勇者アバンと獄炎の魔王」は、そんなアバンを主人公に据えたストーリーとなっており、時系列としては本編から15年ほど前にあたる。ハドラーが世界を脅かす魔王として健在だった時代で、若き日のアバンが戦士・ロカと共に冒険の旅に出るところが描かれていく。
本編とのつながりは? アバンストラッシュの誕生秘話にマトリフの全盛期
「勇者アバンと獄炎の魔王」は前日譚ということもあり、「ダイの大冒険」本編とリンクした描写が数多く見られる。なかでも印象的なのは、作品の代名詞とも言える必殺技「アバンストラッシュ」の誕生秘話だ。
実をいえば本作のストーリーは、アバンが「アバンストラッシュ」を完成させていく旅路となっており、魔族との戦いや修行を通じて「大地を斬る=力の剣」「海を斬る=速さの剣」「空を斬る=心の剣」を身につけていくところが描かれる。これはダイが「アバンストラッシュ」を習得した経緯とも重なっているため、“あの頃”の読者にはたまらない構成だろう。
また本作には、“じいちゃん”こと鬼面道士・ブラスも登場。ブラスといえばデルムリン島の長老のような立ち位置で、島に流れ着いた赤ん坊のダイを拾って育て上げた“親代わりの存在”にあたる。厳しい躾を施しつつも、その成長をやさしく見守る姿には、親子の愛情がしっかり表現されていた。
しかし前日譚では、そんなやさしい長老のイメージとは別人のような姿が描かれることに。当時のブラスはハドラーの率いた旧魔王軍四天王の1人であり、邪悪なモンスターにしか見えない強烈な“悪人面”をしていた。
ちなみにブラスはハドラーから「魔物の戦力の増強」を命じられたため、前線に出るのではなく、「南の果て」にある拠点の候補地に向かったとされている。そのために魔王と勇者の熾烈な戦いに巻き込まれずに済んだというわけだ。
さらにもう1人、注目したいのは地獄の騎士・バルトス。後に魔王軍・不死騎団長の座まで上り詰めるヒュンケルの育ての親にあたるキャラクターだ。本編では回想シーンに出てくるのみだが、前日譚ではその生きざまがより詳細に描かれている。
バルトスは旧魔王軍の四天王の一角にして、“地底魔城最強の剣士”とも称された実力者。ハドラーにその力を認められているからこそ、「人間の捨て子を拾って育てる」という酔狂が許されたという。
本編では想像できなかったことだが、このバルトスとブラスの交流についても描かれており、ブラスは幼いヒュンケルの姿を見てわずかに情が芽生えるような素振りを見せていた。これによって後にデルムリン島でダイを育てることを決心した……という風にも考えられる名シーンだ。
またバルトスについては、物語終盤でも原作を補完するシーンがあった。それはヒュンケルが目撃した“最期の場面”を別の角度から描くもので、戦士としての気高さや主君・ハドラーへの想いが伝わってくる秀逸な描写となっている。
そのほか、ポップの師匠であるマトリフの過去が描かれたこともファンを喜ばせた。マトリフはかつての勇者一行の仲間であり、かなりの実力を誇る魔法使いとされていたが、本編では高齢や身体の負担によってハンディキャップを背負った状態だった。
しかし前日譚ではその“全盛期”が描かれており、マトリフの実力をよく伝えるエピソードが登場。とくにライバルとなる四天王の1人、ガンガディアとの関係性は、マトリフのかっこよさを端的に表現したものとなっている。
さらには、マトリフがポップに託した超呪文「メドローア」の誕生秘話や、「隠れ里ギュータ」で過ごした修行時代などにも触れられており、本編にちょい役で登場していたインチキ魔法使い・まぞっほが、マトリフと肩を並べて修行していたところが描かれている。
これだけでなく、クロコダインやブロキーナ老師、ザボエラといった原作キャラの若き日の姿など、本作には「ダイの大冒険」ファンにとって見逃せない要素がたっぷりと詰め込まれている。
「勇者アバンと獄炎の魔王」ならではの魅力も! アバンの相棒・ロカ
とはいえ本作は「ダイの大冒険」の前日譚として面白いだけでなく、単体の作品としても完成度が高い。その魅力の源泉となっているのが、アバンの相棒として活躍するロカの存在だ。
ロカは元々カール王国の騎士団長を務めていた人物で、真面目な性格ゆえに飄々とした態度で日々を過ごすアバンに対してきつく当たっていた。しかしハドラーの襲撃をきっかけとして、その実力を認め、共に魔王討伐を目指すことを決意する。
正義と友情に突き動かされ、自分が見込んだ友のためになら命を賭けることも恐れず、「オレはあいつの盾になる」と言い放つ熱血漢。ある意味では、ふだん不真面目なフリをしているアバンよりも主人公らしいキャラクターだ。
なによりその魅力は、自分よりも格上の敵相手に臆さず立ち向かっていく勇気にある。たとえばハドラーとの最初の戦いでは、明らかにレベルが劣るにもかかわらず、一瞬の隙を突いて片手を斬り落とすという大金星を上げていた。その功績がなければ、アバンはこの時点で敗北していたかもしれない。
実はこうした“勇気ある者の思わぬ活躍”という演出は、原作者・三条陸氏の十八番とも言える展開。「ダイの大冒険」ではポップなどの戦闘シーンが印象的だが、そのほか「冒険王ビィト」や「仮面ライダーW」でも感動的な名場面を生んできた。
パーティーの仲間となるレイラやマトリフは、アバンよりむしろロカの人柄に惹かれて仲間入りを決心した節があるため、もはや“裏主人公”の立ち位置と言えるかもしれない。
ちなみに、このロカとレイラの間に生まれた娘が、「ダイの大冒険」でダイ一行の仲間となる僧侶戦士・マァム。すなわち、本作はマァムの両親の過去を描いた物語でもあるということになる。
第2部「先生編」で期待される展開は? 魔界の名工ロン・ベルクとの関わりも
本作の第1部「勇者編」は、アバンとハドラーの戦いに決着がつくことによって幕を閉じた。ではその続きとなる第2部「先生編」では、どんな展開が描かれるのだろうか。
まず物語の大筋としては、アバンがバルトスの死によって孤児となったヒュンケルを引き取り、「次代の勇者を育成する」という目標のもと旅に出るという流れだ。この時点でのヒュンケルは、アバンのことを父の仇だと思い込んでおり、虎視眈々と命を狙っている。おそらく作中では、後に大きな悲劇を生むことになるこのすれ違いについて、丁寧に補完されていくはず。2人の関係がどのように変化し、本編に至るのか、ファンなら気になるところだろう。
また「先生編」の前フリとなる11巻の最終話「さらば勇者」では、「魔界最強の武器」を持つ8人の魔物がシルエットで登場していた。そこで魔剣のライゼが、本編に登場した「鎧の魔剣」によく似た剣を携えていたことから、武器の制作者である魔界の名工ロン・ベルクが物語に関わってくるのではないかと噂されている。
そうした展開を暗示するためか、ライゼは立ち姿も初登場時のロン・ベルクに似せて描かれていた。果たして両者はどのような関係なのだろうか……。
さらに「先生編」では、大魔王バーンの力により蘇ったハドラーが、「ダイの大冒険」のボス集団である「魔王軍六大軍団長」を仲間に引き込んでいく様子が描かれるのではないかとも予想されている。だとすれば、注目すべきはダイの父である竜騎将・バランの過去編だろう。
バランは元々神が地上の平和を守るために遣わした「竜の騎士(どらごんのきし)」であり、「勇者アバンと獄炎の魔王」の時代にはアバンとハドラーの戦いの裏で、バーンのライバルである「冥竜王ヴェルザー」と魔界で戦っていた設定。そこからとある出来事がきっかけで人間に絶望し、魔王軍に与するのだった。
ヴェルザーとの戦いの詳細や、バランが人間に絶望するきっかけとなったエピソードも、もしかすると「先生編」で描かれるかもしれない。
ほかにも、原作の人気キャラであるポップの父・ジャンクの鍛冶屋時代の姿や、マァムとアバンの出会いなど、期待されているエピソードはたくさんある。第2部「先生編」はますます目が離せない展開となりそうなので、今のうちに第1部を復習しつつ、連載再開を楽しみにしたい。
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(C) 三条陸、芝田優作/集英社