特別企画

【今日の読み切り】「バイオリウム」

ルシャとサアラ、2人の想いが紡ぐ4つの物語

【バイオリウム】

著者:藤あきなか

講談社

 美しい女性、サアラの夢に、少年、ルシャが現われる。ルシャが悪夢と呼ぶ世界の中でサアラは生きている。4つの物語は、やがてひとつの結末を迎える。

 本作「バイオリウム」は、藤あきなか氏の読切マンガ。講談社のマンガ雑誌「月刊アフタヌーン」が主催しているマンガ新人賞「アフタヌーン四季賞 2020冬」で「藤島康介特別賞」を受賞しており、「コミックDAYS」にて2021年11月より配信されている。

 幻想的で誌的なファンタジーのような世界だが、読み進めるとその世界の意味を知ることになる。病弱で世界のことを何も知らなかったサアラは、飛んで行った蝶を見て、窓から抜け出す。だがそこは彼女が思い描いていた世界とは違っていた。綺麗なものだけに囲まれて生きていた彼女が、「世界って美しいものばかりじゃないのね」と、つぶやくシーンは印象的だ。淡い夢の世界と、過酷な現実を行き来するストーリーは読み応えたっぷり。どんなに辛くとも、現実の中に幸せを探そうとする2人の未来には、きっと幸せが待っている。そう感じられるようなラストシーンだった。

【あらすじ】

サアラの見る夢の中に現われるルシャという名の少年。ふたりが出会ったのは、戦争中のとある国のとある町。徐々に明かされるふたりの関係が語られる4つの小さな物語。それらが集まり、ひとつの結末を迎える。