特別企画
受賞者全員欠席の「マガデミー賞2023」レポート! 「葬送のフリーレン」ヒンメルは“女神様の魔法”でコメント寄せる
2024年3月13日 19:31
- 【「マガデミー賞2023」授賞式】
- 3月13日 開催
BookLiveは3月13日、“漫画のキャラクター”を讃えるアワード「マガデミー賞 2023」授賞式を開催し、受賞者・受賞作品を発表した。
「マガデミー賞」は、毎日の勇気や感動、豊かさを与えてくれるキャラクターたちを讃えることを目的に、2021年に設立されたアワード。今年度は、マンガのキャラクターとともに作品単体を推薦することが可能となり、2023年10月5日より10月29日まで、特設サイトおよびSNS「X」上で推薦されたキャラクター・作品から各部門で16人のノミネートキャラクターと5作品が選出された。ノミネートされたキャラクター、作品は、経験豊富なマンガファンの書店員と、特別審査員による厳正なる審査を経て、受賞者と受賞作品が決定される。
授賞式では「主演男優賞」、「主演女優賞」、「助演男優賞」、「助演女優賞」、「審査員特別賞」、「作品賞」の6つの賞の発表と授与が行われ、受賞者たちからのコメントが公開された。また、特別審査員のお笑いトリオ・ハナコも出席し、審査時の思い出などを語るト-クで会場を盛り上げた。
肝心の受賞者の方は、例に漏れず今年も“全員欠席”。天国からコメントを寄せる者もおり、バラエティーに富んだ欠席理由と共に粋なコメントが寄せられた。本稿ではそんな授賞式の様子やコメントをお届けしていく。
主演男優賞:「薫る花は凛と咲く」紬凛太郎
まず主演男優賞には、三香見サカ氏によるマンガ「薫る花は凛と咲く」の主人公・紬凛太郎(つむぎ りんたろう)が選ばれた。周囲の人との関わりから臆病だった自身の殻を破って変化を続ける姿勢や、友人や恋人のために真っ直ぐに行動する純粋さ、その素直でいることの大切さが学べる姿に共感や応援する声が集まったのが高く評価された。
紬凛太郎本人は、明日のホワイトデーに向けて実家のケーキ屋さんのお手伝いをしなければならないということで、授賞式には出席できず。代理で担当編集の橋本健人さんが賞を受け取った。
皆さま初めまして。千鳥高校2年の紬凛太郎といいます。こんな光栄な賞をいただけるなんて想像もしていませんでしたが、和栗さんや仲間のみんなに出会えたおかげだと思っています。本当にありがとうございました。
主演女優賞:「海が走るエンドロール」茅野うみ子
主演女優賞に選ばれたのは、たらちねジョン氏によるマンガ「海が走るエンドロール」の主人公・茅野うみ子(ちの うみこ)。年齢を言い訳にせず、新しいことを始めるチャレンジ精神やエネルギー、「歳を重ねても夢を追っていい」、「今から始めても遅くない」と幅広い年齢層に勇気を与えたところが今回の受賞の評価ポイントになった。
茅野うみ子本人は課題の撮影の真っ最中で、授賞式への出席は叶わず。本人からのコメントが読み上げられ、代理で担当編集の山本侑里さんが賞を受け取った。
主演女優賞、まさか自分が出る側で賞をいただく事になるとは……、ありがとうございます。これからもより良いものを撮って、作っていきたいです。応援の程よろしくお願いします。
助演男優賞:「葬送のフリーレン」ヒンメル
助演男優賞は原作・山田鐘人氏、作画・アベツカサ氏によるマンガ「葬送のフリーレン」からヒンメルが受賞。主人公・フリーレンによる回想シーンでの登場が中心で、出演回数が少ないもののエピソードを重ねる中でその個性が徐々に明らかになり、フリーレンに大きな影響を与える人物として作品全体を形作る唯一無二な存在となった。
回想を通して知ることができるヒンメルの前向きな姿や、彼を慕う人、フリーレンにとって一瞬である10年をかけがえのないものにした功績は大きく、助演男優賞に相応しいと評価された。残念ながらヒンメル本人はすでに亡くなっているため、女神様の魔法で生前のヒンメルから受賞コメントが届けられた。
受賞ありがとう。対価はフリーレンが受けとるさ。千年は保つくらい丈夫な賞を作ってくれ。
助演女優賞:「アオアシ」一条花
助演女優賞には、小林有吾氏によるマンガ「アオアシ」から一条花が選ばれた。サッカークラブのユースチームに所属する主人公・青井葦人の「世界で最初のファン」と自称する通り、懸命なサポートや背中を押す言葉の数々に加え、彼女自身も目標を持って努力する姿に賞賛が集まり、助演女優賞が贈られた。
一条花本人は現在、チームの通訳としてカタールにいるということで、授賞式に出席することができず。代理で小学館マーケティング局コミック事業室デジタル担当・ホンダソニアさんが賞を受け取った。
ピッチで戦ってるみんなじゃなくて、応援しかできない私が受賞できたことに驚きです!ありがたく頂戴いたします!
審査員特別賞:「気になってる人が男じゃなかった」古賀みつき・大沢あや
審査員特別賞は、審査員が“このキャラクターこそが輝いていた”と太鼓判を押すキャラクターに送られる賞だ。特別審査員を務めたお笑いトリオ・ハナコの3名をはじめ、今回審査員を務めた漫画を知り尽くしているエキスパートたちが、それぞれのキャラクターがなぜ今年受賞すべきなのかというポイントをプレゼンし合い、議論の末に受賞者が決定される。
今回、審査員特別賞には、新井すみこ氏による「気になってる人が男じゃなかった」から古賀みつきと大沢あやの2名が輝いた。若者特有の雰囲気や多様性を感じることができる一方で、好きなことが友達から共感されないからといって、容易に大衆に寄せたりせず、自分を持っている姿に勇気や元気をもらえる。審査員からはそれぞれを推薦する声もあったが、最終的には「2人の関係性を讃えたい」という審査員の熱い想いから異例のダブル受賞となった。
異例のダブル受賞ではあるが、2人は「推してるバンドのアルバム発売日なので。」とのことで出席は叶わなかった。
古賀みつき: え?! この特別賞って2人一緒にもらっていいんですか?す、すいません、私なんか……というか大沢さんがいなかったら私はこんなモノ……
大沢あや: あーもう!!////古賀さん、黙ってもらっとけ!! ありがとうございます!!
作品賞:「スキップとローファー」
作品賞は2023年に単行本が発売された作品のうち、最大巻数が10巻までの作品を対象に“特に印象的だった2023年を代表する作品”に贈られる賞。その栄えある賞に見事輝いたのが高松美咲氏によるマンガ「スキップとローファー」だ。
人物の解像度や、心の機敏を繊細に表現した世界観。高校生の不安定でささくれ立ってしまう気持ちや不器用さの表現など、様々な人に寄り添ってくれる今の時代にあった作品として、特定のキャラクターのみ表彰するのではなく、作品全体の世界観を称賛したいという気持ちから今回「スキップとローファー」に作品賞が贈られた。受賞に際して、作者・高松美咲氏からのコメントが読み上げられた。
このたびは作品賞に選んでいただいてありがとうございます。1月に、能登半島で大震災が起きました。作中出てくる美津未の故郷として登場した風景のほとんどが失われました。被災された方々の穏やかな時間を取り戻すまでには、本当に長い時間を要します。
これからも「スキップとローファー」を娯楽として気楽に楽しんでいただきたいことに変わりはありませんが、時々、被災地の事を気にかけていただけると嬉しいです。そして、面倒が理由で連絡を先延ばしにしていた親しい人に会いに行って、一緒においしいご飯を食べてください。
ハナコの3名が「マガデミー賞2023」を振り返り。岡部さんは「受賞を逃したキャラを全員でたたえる時間がある」と明かす
今回登壇したお笑いトリオ・ハナコの3名は、トークにて審査の過程を振り返り。秋山さんは「去年もそうでしたが、審査がものすごく白熱する。皆さんの漫画愛がぶつかり合っての受賞作です。」とマンガのエキスパートたちによる舞台裏を振り返った。
続いて岡部さんは「決まるのは早いんですが、その後に、惜しくも受賞を逃したキャラを審査員全員でたたえるという時間があるんですよ。」と作品を愛しているが故の“称える時間”があることを明かしたほか、菊田さんは「僕は毎回言っていますが悪役を(受賞候補に)入れてほしい。最優秀ヴィラン賞」と「マガデミー賞」の新たな部門をリクエストしていた。
今年も魅力的なキャラクターたちが多く選ばれた今回の授賞式。来年はどんなキャラクターたちが選ばれるのか今から楽しみだ。キャラクターや作品は一般のマンガファンからの推薦をもとにノミネートされるので、好きなキャラクターや作品がある方は次回のマガデミー賞にぜひ参加してみてほしい。
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『薫る花は凛と咲く』 (C) 三⾹⾒サカ/講談社
『海が⾛るエンドロール』 (C) たらちねジョン(秋⽥書店)2021
『葬送のフリーレン』 (C) ⼭⽥鐘⼈・アベツカサ/⼩学館
『アオアシ』 (C) ⼩林有吾/⼩学館
『気になってる⼈が男じゃなかった』 (C) 新井すみこ/KADOKAWA
『スキップとローファー』 (C) ⾼松美咲/講談社