特集
【年末特集】2025年、負けられない戦いがあるヤツは「こち亀」縁の香取神社へ初詣に行け!
聖地巡礼マップや両さんの銅像、パティスリーまでもがある“らしからぬ神社”を探訪
2024年12月30日 00:00
東京都葛飾区にある、亀有香取神社をご存知だろうか。そう、言わずと知れた漫画家・秋本治氏の代表作「こちら葛飾区亀有公園前派出所」、通称「こち亀」の舞台となっている葛飾区亀有にある神社だ。
「こち亀」は集英社「週刊少年ジャンプ」にて1976年から2016年まで連載され、その後もおよそ年1回のペースで新作エピソードが公開されている”亀”顔負けな超々長寿作品。亀有公園前派出所に勤務する警官・両津勘吉を主人公にしたコメディで、単行本は2024年12月現在で第201巻までが刊行されている。
亀有香取神社はそんな「こち亀」の作中にもたびたび登場する、れっきとした実在の神社だが、その境内では両さんの銅像や、いわゆる“聖地巡礼マップ”なども見ることができるうえ、有名パティシエが経営する洋菓子屋さんまであるという、こう言ってはなんだが“神社らしからぬ神社”なのだ。
この記事では、そんな「こち亀」縁の亀有香取神社について紹介しつつ、現在のような姿になったワケを聞いてきたので紹介したい。新年の到来を控えたタイミングでもあるので、初詣にまつわる情報についても触れていく。
「勝負事」と「足腰健康」のご利益がある神様を祀った三社明神
さて、冒頭では便宜上、亀有香取神社と呼ばせていただいたが、正しくはその名を香取神社という。
鎌倉時代の建治2年、西暦では1276年、当時は下総国葛西御厨亀無村と呼ばれた亀有の地に、千葉の香取大神宮より分霊(経津主大神)を迎えて祀り始めたことが由来となっている。その後は鹿島(武甕槌大神)・息栖 (岐大神)の大神も迎え、東国三社の三社明神となって現在に至るそう。
経津主大神と武甕槌大神はいずれも武神(闘いの神様)として古くより崇敬されていたことから、現在では「何事にも打ち勝つ、除災招福開運厄除の神様」そこから転じて「スポーツの神様」としてのご利益があるとされている。
また岐大神は道案内・道を導く、また集落の外部よりの災いを防ぐ道祖神であり、「足腰健健康の神様、家内安全の神様」として崇められている。(お金を賭けた)勝負事が大好きかつ、生命力の権化のような存在で、自身の足でどこまでも行ってしまう両さん縁の地として、これ以上の神社はないだろうという説得力がある。
亀有の町並みに馴染んだ開けた神社、その初登場は心霊スポットとして
そんな香取神社が「こち亀」に初登場したのは、単行本5巻に収録の第10話「両さんありがとうの巻」。香取神社に幽霊が出たという知らせを受け、両さんとその後輩・中川圭一が現場に向かうという、町のなかに溶け込み、開けたムードの現在の様子からは想像できない心霊エピソードとなっている。
このたびの取材にあたり、香取神社の宮司(神職や巫女さんをまとめる長)さんにお話をうかがうことができたのだが、「こち亀」に初登場した際は作中で描写されているような、木々が生い茂った暗い雰囲気だったのだとか。現在の宮司さんが先代であるお父さまから引き継いで以降、町の文化の一部として地域住民に親しまれるよう、明るく開けた雰囲気作りに取り組んだと話してくれた。ちなみに宮司さんは1976年生まれで、「こち亀」とは同級生だという。
「こち亀」ではそれ以降、年間行事として行なわれているお祭りの様子もたびたび描かれている。2月には初午祭と節分祭、5月には招魂社例祭、7月には七夕祭などが執り行なわれていることが香取神社の公式サイトでも確認できるが、なかでも一番の規模かつ重要となるのは9月に行われる例大祭。
お神輿をわっせわっせと担ぎ、境内を埋め尽くす人たちの活気で賑わう。亀有出身である秋本氏はひとりの住民として香取神社と親しんできたのはもちろん、「こち亀」作中に登場させるために幾度も取材に訪れていたんだとか。秋本氏自身による丁寧な取材はもちろん、宮司さんからも100枚を超える写真資料などを提供したこともあるそう。秋本氏は香取神社の例大祭から、お祭り好きである両さんの人物像にまつわるインスピレーションを受けたと言えそうだ。
行政に先駆けて作成した聖地巡礼マップや両さんの像が鎮座!
ここからは、実際の香取神社の境内の様子について紹介したい。本殿から真っすぐの正面鳥居の傍は、狛犬ならぬ狛亀が来訪者を迎える。言うまでもなく亀有の“亀”にちなんだ像だが、家の瓦に縁起物としてあしらわれる霊亀を参考に宮司さんが考案したという。
鳥居をくぐってすぐの左手側には、「こち亀」作中にて登場した場所や建物などを記した「亀有MAP」と、両さんが天を仰ぎ指を指す「少年よ、あの星を目指せ!両さん像」を確認できる。「亀有MAP」は葛飾区が町おこしの一環として「こち亀」と本格的な取り組みを始める前から、宮司さんが「こち亀」ファンのために関係各所に働きかけて作成したんだとか。集英社より生原稿を借り受け、宮司さん自らコピーを取ったというから驚きだ。
さらに進むと、同じく左手側にサッカーのゴールを模したものに多数の絵馬が吊り下げられている。スポーツの神様を祀る香取神社は有名漫画「キャプテン翼」とも関係性が深く、原作者の高橋陽一氏が代表理事を務める葛飾区のサッカークラブ・南葛SCの必勝祈願なども請け負っているとのこと。
ここには香取神社で販売されている「こち亀」のイラストを使用した絵馬がずらり。勝負事や健康についての願い事が多いなか、漫画作品とも縁が強いことからか「漫画家になれますように」と記された絵馬もあった。
サッカーゴールの位置から直進すると本殿が、左折すると道祖神のお社が見える。大きく開けた境内のなかには、前述した「こち亀」絵馬や御朱印、勝守や健脚守を買うことができる社務所や、美味しい洋菓子がいただけるパティスリー「ラ・ローズ・ジャポネ」がある。
神社の境内にパティスリーがあるというのも香取神社の大きな特徴のひとつだが、これも宮司さんの「町の文化のひとつとして、香取神社を多くの人が気軽に訪れることのできる場所にしたい」という想いから実現したもの。世界でも数々の輝かしい賞を受賞したシェフ・五十嵐宏氏のお店とあって、ケーキを買いに来るためだけに訪れる人も多いんだとか。
特にクリスマスシーズンは、この広い境内がケーキ目当ての買い物客による行列で埋まるという。またパティシエにとっての一大イベントであるクリスマスを乗り切った後、パティシエは休みを取るのが一般的だそうだが、ここは神社にとっての一大イベントである年末年始と三が日も営業する。初詣の後にお汁粉や甘酒ではなく、ケーキで迎える新年というのもなにやら現代的で面白そうだ。
最後に、せっかく現職の宮司さんに直接お話を聞ける機会をいただいたので、初詣にまつわるお作法やオススメの時期などについても聞いてみた。
――参拝の作法としては「二礼二拍手一礼」が知られていますが、そのほか初詣ならではの作法や頭に入れておいた方がいいことはありますか?
宮司さん:二礼二拍手一礼はもちろん、鳥居をくぐる前に頭を下げるとか、参道の真ん中を歩かないとか、形としては一応ありますが、神社には大きな規律とかはありません。原則そうした方がいいよという流れはありますが、自由に参拝していただければと思います。私としてはそんなの気にせず、遊びに来るような感覚で来ていただければ。神社が日常生活に常にあるような存在だと嬉しいです。
――初詣にオススメな時期などはあるんでしょうか?
宮司さん:みなさんお休みなので三が日にいらっしゃるのが習慣になっていますけど、本来は節分までであれば「初参り」なんですよ。なので2月2日までであれば、初詣ということになります。ウチは近くにアリオ(※大型ショッピングセンター)があるので、三が日はすごい人出になるんですよ(笑)。
2025年には「こち亀」をテーマにした体験型アミューズメント施設がオープン!
ここからは余談になるが、香取神社のすぐ近くには「こち亀」をテーマにした体験型アミューズメント施設が2025年にオープン予定。社務所にはその告知ポスターも張り出されており、その位置から振り返るとその建物を確認することができる。ファンにとっては聖地巡礼の楽しみが増えるほか、香取神社への導線にもなっているので、2025年はさらなる活気へとつながりそうだ。
またJR亀有駅の周辺には公園前派出所のモデルになった交番や、来訪者を歓迎する両さんの像もある。初詣に訪れた際には、ぜひチェックしてほしい。