特別企画

奇怪な島と妖しい敵に圧倒される「地獄楽」の世界観。毎週月曜の楽しみだったジャンプ+発の1作

画眉丸の愛妻家っぷりや次々に変化する人間関係が面白い!

【「地獄楽」1巻】
2018年4月4日 発売
「地獄楽」1巻

 「地獄楽」は2018年1月から2021年1月まで集英社の「少年ジャンプ+」で連載されていた賀来ゆうじ氏の作品だ。「ジャンプ+」は昨年2024年に10周年を迎えたが、この黎明期を支えたWeb発の人気マンガである。魅力的なキャラクターたちと息をつかせぬ戦いが面白く、次にくるマンガ大賞2018のウェブマンガ部門・11位、第14回全国書店員が選んだおすすめコミック4位になっている。また、2023年にはアニメ化、舞台化もされた。

 筆者は舞台となる島・神仙郷(しんせんきょう)の不気味さと、あまりの敵の強さに次はどうなってしまうのかと月曜日の配信の度にハラハラドキドキしながら読み、好きだったキャラクターが亡くなった時は本気で落ち込んだものだ。本記事ではそんな「地獄楽」の世界を紹介したい。

【TVアニメ『地獄楽』第一弾PV】

忍の画眉丸とお目付け役の佐切を中心とした「地獄楽」の物語

 まずはじめに「地獄楽」のあらすじを説明する。主人公の「画眉丸(がびまる)」は石隠れの里の筆頭であった忍で、味方の裏切りで捕らえられ死罪人となったものの、どのような処刑方法でも殺されることはなかった。別に死んでも構わないのにと思い、大人しく様々な処刑を受けていた画眉丸であったが、そんな彼の様子を調べていた打ち首執行人の山田浅ェ門一族の1人「佐切(さぎり)」は、画眉丸が心の底では生き延びたいと思っていることに気づき、それを彼に自覚させる。

画像は賀来ゆうじ氏の公式Xより

 妻と再び暮らすため生き延びたいと思っていることに気づく画眉丸に、佐切は唯一処刑されずに済む方法があると告げる。それは極楽浄土と言われる謎の島に赴き、不老不死の薬を手に入れて戻ること。それを成し遂げた死罪人は無罪放免となることができるのだ。

 しかし、その島から戻ってきた船は鮮やかな色彩の花に満ちており、その中で息絶えている役人は皆、己の全身から花が生えており、唯一生き残り薬についてを報告できた役人も体がどんどん花に侵食されていた。

帰ってきた船の様子
アニメでは鮮やかな色の花が全身に咲いていることが確認できる

 その様子から、尋常ではない島であることを覚悟しながら、妻と共に暮らす為に仙薬を持ち帰ろうとする画眉丸。さらに、彼をはじめとする10人の死罪人と、お目付け役の10人の山田浅ェ門たちは不老不死の仙薬を求め、謎の島・神仙島に向かうというのが「地獄楽」のあらすじだ。

不気味な島で次々と訪れる危険と目まぐるしく変わる人間関係が面白い!

 圧巻なのは、「地獄楽」というタイトルに思わず納得してしまう島の様子である。物語の舞台となる神仙島は一歩足を踏み入れると、色とりどりの花に溢れ蝶が飛び交い、そのあまりの美しさにまるで極楽浄土に来たかのような錯覚に襲われる。

 しかし同時に、よく見るとその島にいる虫たちは、人面の蝶や人の頭ほどの幅で数メートルある長さのムカデのようなもの。さらには、人の体に何本もの腕と魚の頭部や昆虫の頭部を持った化物や、海に巣くう腹にいくつもの吸盤をつけた人の顔がある蛇たち。加えて10メートル以上もある巨人たちも存在し、こちらは目から腕が生えていたりととにかく異形なものたちが徘徊しているまさに地獄のような島であった。

色鮮やかな神仙島

 そんな神仙島で、文字通り「がらんどう」であったところに妻から愛を教えられただけの、情緒的には幼子に等しい画眉丸と、父に憧れ山田浅ェ門となったものの、人を殺すという役目に対し迷いの中にいる佐切の2人の精神的成長を軸に物語は進んでいく。

画眉丸と佐切

 神仙島に送られた死罪人は、まずは殺し合いを始めようとする。なぜなら、無罪放免となるのは仙薬を持ち帰った1人だけであり、皆で仙薬を探すより自分以外の全員を排除してゆっくり探そうという魂胆からだ。しかし、画眉丸はこの島に生息する化物たちから身を守っていくうちに、自分のお目付け役の山田浅ェ門や他の死罪人と力を合わせていかないと生き延びることは不可能だと悟り、共闘していくようになる。

 この過程でキャラクター同士に生まれる絆がこの作品の魅力である。死罪人にも様々な者たちがいる。山の民として生まれた為に、何の罪も犯していないにも関わらず死罪人にさせられた「ヌルガイ」や、自分の名を永遠に残したい剣豪「民谷厳鉄斎(たみやがんてつさい)」。明るくお調子者なくのいち「杠(ゆずりは)」に、盗賊団の頭領「亜左弔兵衛(あざちょうべい)」。そして山田浅ェ門も解剖大好きな「付知(ふち)」や気が弱く博識な「仙汰(せんた)」。真っすぐで正義感が強い「典坐(てんざ)」と、典坐の師匠で盲目の剣士「士遠(しおん)」と兄の弔兵衛を助ける為に山田浅ェ門となったブラコンの「桐馬(とうま)」。

 それぞれが実に魅力的なキャラクターたちで、共闘し合い始めてからのやり取りが読んでいて楽しい。最初は仕方なしに手を取り合っただけなのにいつしか信頼や友情が芽生えていったり、憧れ、恋したり、尊敬し、教えを乞うたりする。

 また、はじめは画眉丸・佐切・杠・仙汰で組んでいたが、やがて画眉丸は厳鉄斎・付知と共に行動し、佐切は杠・ヌルガイ・士遠と一緒に島の中心部に赴いたりと、状況に応じて行動するメンバーが違っていくため、それぞれ異なるキャラクターの一面が見えて面白い。また、ピンチの時に離れていた仲間と合流すると心が躍る。

共闘を誓う画眉丸と厳鉄斎と山田浅ェ門付知

 そして死罪人たちと浅ェ門たちの間に絆ができてしまった後に、新たに上陸した浅ェ門たちとの間に起こる葛藤も見どころの1つだ。

圧巻のバトルが読んでいて心を熱くする

 そして、「地獄楽」の一番の醍醐味は休む暇もなく出てくる化物たちとの戦いだ。島に多く飛んでいる人面蝶の鱗粉は人の意識を混濁させるし、刺されたらその箇所から花化が始まってしまう為なんとしても避けなければならない。そんな蝶を避けながら、巨大な化物を倒していくだけでも大変であるのに、突然妖艶な美しさを持った者たちが死罪人と浅ェ門の元に現われる。彼らは天仙と呼ばれ、氣を使った術を使う者たちであった。

天仙たち

 この天仙たちはとにかく強く、死罪人と浅ェ門たちは最初はなすすべもない。なんとか天仙の体を斬っても切り口から植物の蔓が伸び、斬られた箇所を補完してすぐに再生してしまう。

すぐに再生する天仙

 この、逃げ延びきれなければ死があるのみというスリルに満ちた状況が堪らない。たとえ逃げ延びたとしてもいつ天仙が現われるかわからないため、常に緊張感を持ちながら読むこととなる。やがて異形の者たちや天仙の弟子となる道士との戦い、島で見つけた不思議な少女の助言を経てそれぞれが天仙を倒すヒントを得るが、それでも複数人で命がけである。

天仙の弟子・道士との戦い
鬼尸解となった天仙との戦い

 だからこそ、先に述べた共闘している仲間とどのようにして天仙と戦い倒していくのかが最高にエキサイティングで「地獄楽」最大の見せ場となっている。

まだまだ広がっていく「地獄楽」の世界

 マンガの「地獄楽」本編は2021年に最終回を迎え、物語は完結してしまったがその後も様々な展開が行なわれている。2023年4月からアニメが放送され、この際にはコミックス5巻までの内容となっていたが、この続きとなるアニメ第2期が2026年1月にスタートするのだ。アニメ1期は画眉丸の記憶喪失、新たに島に来訪するキャラクターの登場、そして連載時読者に多大な驚愕を与えた杠が画眉丸の妻の存在に疑問を投げかけた場面で終わっており、続きが気になっているアニメ視聴者も多いだろう。アニメは原作の神仙郷の奇妙な世界と天仙たちの不気味な美しさを見事に描いており、原作だけでなくぜひこちらも視聴して欲しい。

【TVアニメ『地獄楽』第二期ティザーPV/2026年1月放送】

 また、新たに始まるのはアニメだけではない。2025年年内にはAndroid/iOS用RPG「地獄楽 パラダイスバトル」として、ゲーム化することが発表されている。すべての仲間たちがフルボイスで、しかも完全新規オリジナルストーリーもあるとのことで「地獄楽」の世界やキャラクターが好きならぜひプレイしてみて欲しい。まだ知らないキャラクターの一面を知ることができるのかと思うと今から楽しみでならない。

【事前登録PV『地獄楽 パラダイスバトル』スマホ/PC向け新作ゲーム】

 「地獄楽」は時折見られる画眉丸の愛妻家っぷりに癒されながらも「この島と天仙様とは一体なんなのか?」、「不老不死の仙薬は本当に実在するのか?」、「島で出会った不思議な少女は何者なのか?」そして、「激しい戦いの末、誰が生き延びることができるのか?」と次々生じる疑問に、最初から最後まで読んでいてハラハラドキドキが止まらない、そんな作品だ。まだ読んでいない人は、ぜひ手に取って貰いたい。神仙島の恐ろしい魅力に惹きつけられるに違いない。

Prime Videoで視聴