特別企画

イケイケボディコン美人除霊師が悪霊達をしばき倒す! マンガ「GS美神 極楽大作戦!!」の魅力に迫る

「絶チル」椎名高志氏が90年代のバブル後を描く人気作

 1990年代初頭は「ドラゴンボール」(集英社)や「幽遊白書」(集英社)、「美少女戦士セーラームーン」(講談社)など、数々の名作と言われる作品が子どもたちから絶大な人気を誇っていた。

 そんな中、バブル期を象徴するかのような主人公の出立で、ひときわ異彩を放つ人気作品があった。亜麻色の長い髪にボディコンスタイルで「極楽へ行かせてあげるわ!!」の決め台詞で悪霊退治、巨額のマネーを稼ぐ異色のヒロイン「美神令子」が主人公の少年マンガ「GS美神 極楽大作戦!!」だ。

 「GS美神 極楽大作戦!!」は「絶対可憐チルドレン」でもお馴染みの椎名高志氏による、妖怪や悪霊退治を生業とする「ゴーストスイーパー」の主人公・美神令子と、その仲間達の活躍を描いたオカルトコメディーアクションマンガだ。小学館のマンガ雑誌「週刊少年サンデー」にて1991年20・21号合併号にて掲載後、1991年30号から1999年41号まで連載され、単行本は全39巻が発売された。

 他に類を見ない主人公と、キャッチーなストーリーで人気を博した本作は、東映アニメーションによってアニメ化され、「GS美神」というタイトルで1993年4月から1994年3月までテレビ朝日系列で放送された。アニメ放送終了後の1994年8月には、原作と同じ「GS美神 極楽大作戦!!」のタイトルで劇場版も放映され、幅広い層に愛される作品となった。

 筆者が本作に出会ったのは、幼少期に放送されていたアニメ版を観たのがきっかけだ。横島のギャーギャー喚く姿に笑い、神通棍と破魔札を持って華麗に戦う美神令子の姿に憧れた。保育園の七夕の短冊では、圧倒的にセーラームーンやニンジャレッド志望者が多い中、筆者は「ゴーストスイーパーになりたい」と書くほどだった。

 やがて中学生になると、原作を全巻買って読破。「美神さんのように強く、沢山お金を稼げる大人になるぞ!」と憧れ、夢見たのも束の間、気が付けば大金持ちとは縁遠く、美神さんも年下になってしまった。それもそのはず、コミックス1巻の発売から32年が経っているのだ。

 しかし、月日が経っても色褪せない美神さん達は、いつ読んでも楽しくて、元気をくれる。本稿では、コミックス1巻の発売日である本日4月15日を記念して、90年代を彩った力強い名作の一つ「GS美神 極楽大作戦!!」の魅力をご紹介したい。

連載終了から25年経った現在もその人気は根強く、2023年にはアニメ化から30周年を記念し、「GS美神」TVシリーズ全45話と劇場版「GS美神 極楽大作戦!!」を収録した全話いっき見ブルーレイが発売されている
【【公式】GS美神 第1話 ボディコン除霊師登場!】

高飛車な美神令子を主人公とした「GS美神 極楽大作戦!!」のストーリー

 特徴的な見所は、バブリーな見た目の高飛車なヒロイン・美神令子というキャラクターそのものと、主軸でもあるオカルト部分を活かしつつも、テンポと勢いの良さについ吹き出してしまうようなギャグ。そして、少年マンガの醍醐味でもある、キャラクターの成長を見られる、多彩な展開が楽しめるところだろう。

 作中ではキャラクター達がまるで生きているかのような、生々しいセリフ回しも必見だ。

あらすじ

 経済大国日本において、除霊は超ボロいビジネスとなった。社会の安全と経済活動を脅かす悪霊や妖怪を退治する現代のエクソシスト「ゴーストスイーパー」

 GSの仕事には巨額のギャラが発生する。例えば巨大オフィスビルに住み着いた悪霊を退治して「悪霊からの地上げ」を 成功させれば、何億ものギャラが転がり込むというビッグビジネス。主人公の美神令子はそんな花形職業の中でも、実力も超一流ならギャラも超一流の美人ゴーストスイーパー。

 美神は妖怪、悪魔、悪霊たちを様々な特殊アイテムを使って、退治・成仏させてギャラを稼ぎまくる。美神のパートナーは、美神の色香に血迷って時給250円という超薄給でアシスタントのバイトをする横島忠夫と、美神にお祓いしてもらい成仏するため日給30円のギャラで働く300年前の村娘の幽霊おキヌの二人。

 そこに、美神の商売敵や、世間知らずの箱入り娘GS等が絡んでドタバタオカルトコメディーを繰り広げていく。

読者を飽きさせない!笑いもアクションもいけてしまう魅力的なキャラクター達

 本作の魅力の一つでもある個性豊かなキャラクター達は、普段はドタバタとコミカルな様子が多いが、バトルシーンとなると、東洋から西洋まであらゆるスタイルのアクションで読者の心を鷲掴みにしてくる。

 例えば、主人公の美神令子は、多種多様な除霊アイテムを使って戦うスタイル。メインで使用する「神通棍」は、霊力を込めると刀身部分が映画「スター・ウォーズ」シリーズでおなじみのライトセーバーのように伸びる武器になっている。中盤以降は鞭のような形状にも変化し、まさに女王様を思わせる美神らしいアクションが見れる。

 作中に登場する他のゴーストスイーパー達も、皆個性的で、それぞれ異なる戦闘スタイルを持っている。

 小笠原エミは、アフリカのシャーマンを思わせる呪術を得意としている。一定時間踊ることで発動できる「霊体撃滅波」は、踊っている間は完全に無防備な状態になる少々リスキーな技だが、周囲の霊体を一瞬にして吹き飛ばす威力だ。また、美神とエミの同期でもある、六道冥子は、仏教で薬師如来に従事したと言われている「式神十二神将」をベースにした、式神12体を同時に操ることができる。

 唐巣 和宏(通称:唐巣神父)は、元はキリスト教の神父だったこともあり、聖書を片手に戦う。(原作者曰く「元ネタは映画『エクソシスト』のダミアン・カラス神父やね」と自身のXで語っている。)

 ピエトロ・ド・ブラドーは、ヴァンパイア・ハーフで、且つ唐巣神父に弟子入りしていることで、吸血鬼の力と聖なる力の両方を扱う。ドクター・カオスは、ゴーストスイーパーではなく錬金術師だが、女型ロボットのマリアを使ってゴーストスイーパー達と共に戦う。

 皆お互いに商売敵でもあるが、有事の際は共闘することもある。美神とエミに至っては因縁のライバルで、よくお互いの面子の潰し合いをしているが、共闘時は基本的にエミは自ら美神のサポートに回ることが多い。くだらない喧嘩をしたり、時に協力しあったりするカラッとした2人の様子は見ていて小気味いい。普段泣き虫で式神を暴走させがちなおっとりした冥子も、いざとなると適切に式神を操ってプロの顔を覗かせる。普段はスケベでギャグ要員の横島も、中盤以降からは、ゴーストスイーパーとしての顔を見せるシーンがある。

 ドタバタとコメディーをやりつつも、決めるところは決めてくるギャップが、よりキャラクター達を魅力的に映し出している。

【美神除霊事務所】
・美神 令子(20歳)

美神 令子

 主人公でメインヒロイン。抜群のスタイルと美貌、巨額の資産を持つ超一流のゴーストスイーパー。美神除霊事務所所長。

 どんな乗り物も乗りこなし、大体のスポーツもハイレベルでやりこなすほどの高い身体能力と戦闘力を持つ。だが、お金に対する執着がすごく、プライドも非常に高くわがままでSっ気のある自己中心的な性格。自分の興味を惹かない物事やお金にならない事にはまったく関心を持たない。

・横島 忠夫(17歳)

横島 忠夫

 美神除霊事務所のアシスタント。海外赴任中の両親と離れて一人暮らしをする高校2年生。女性の姿をしていれば神も人外もなく欲情する煩悩と劣等感の塊。セクハラの常習。

・おキヌ

おキヌ

 300年前、15歳で山の怒りを鎮めるための人柱となった村娘の幽霊。

 巫女装束がトレードマーク。かつては山の地縛霊として過ごしていた。美神の力により地脈から解放されたものの成仏の仕方がわからず、日給30円で美神除霊事務所の一員となる。

【その他ゴーストスイーパー】
・小笠原 エミ

小笠原 エミ

 小笠原エミ除霊事務所所長。美神もその実力を認めるほどの日本最高の呪術師。褐色の肌色に抜群のプロポーションを持つ。美神のライバルで犬猿の仲。生粋の美男子好きでピートに目をつけている。

・六道 冥子

六道 冥子

 六道家に千年以上伝わる式神十二神将を使役する式神使い。箱入り娘で常識外れの天然ボケ。感情の起伏が激しく、泣くと式神が暴走するなどゴーストスイーパーとは思えないほど精神が軟弱。GS資格取得試験で美神・エミと出会う。

・唐巣 和宏(45歳)

唐巣 和宏

 腕利きのエクソシスト。作中では「唐巣神父」と呼ばれている。美神とピートの師匠でゴーストスイーパー業界ではトップ10に入る実力の持ち主。心優しく穏やかな性格。

・ピエトロ・ド・ブラドー

ピエトロ・ド・ブラドー

 吸血鬼・ブラドー伯爵と人間の母の間に生まれたヴァンパイアハーフ。愛称はピートで唐巣神父の弟子。実はとてつもなく音痴。

・ドクター・カオス(1051歳)

ドクター・カオス

「ヨーロッパの魔王」と呼ばれるマッドサイエンティスト。女性型ロボット「マリア」を連れている。横島に次ぐギャグ要員。

【神族】
・小竜姫

小竜姫

 竜神族。人界と天界の接点である妙神山修行場の管理人。

【敵】
・悪霊

悪霊

 ゴーストスイーパー達が普段除霊している対象。敵としてはこのほかにも魔族のアシュタロスは作中トップクラスの実力をもつ上級魔族で、メドーサ、デミアン、ベルゼブルら強大な魔族を従える。全編に渡り何らかの形で大きな事件に関わっている。下級魔族を創れるため、美神の前世(メフィスト・フェレス)などを部下として作り出し、ラスボス的存在になっている。

ヒロインのイメージを覆す主人公「美神令子」の魅力。

 バブル経済が崩壊したものの、まだその名残を残していた90年代初頭の日本。

 本作が「週刊少年サンデー」にて連載開始された1991年は、体のラインがはっきりとわかるボディコン衣装に「ジュリ扇」と呼ばれる派手な扇子を振り、お立ち台に立って踊るクラブハウス「ジュリアナ東京」がオープンした年でもある。

 美神令子のビジュアルはまさに、この頃お立ち台に立って踊っていたような20代女性を彷彿させるようなビジュアルだ。加えて、ヒロインだが最強のゴーストスイーパーとして高い戦闘能力を持ち、あくどくてワガママで、他のキャラクターからは時折「クソ女」と評されるほどの自己中心的な性格の美神。

 改めて考えると、それまで「ヒロイン=癒し系・可愛い」が一般的なイメージだったのに対し、美神令子はその逆で、ビジュアルから発せられる「プライドが高そう」などのネガティブイメージが、これでもかと誇張されたような性格だ。むしろそれがかっこいい! と思わせてしまうほどの、新たなヒロイン像を見せてくれた。

原作の椎名高志氏は「がめついけれど、お金が好きというより、勝つことが好き」と、美神について語っている。※「椎名高志の漫画術」(小学館)より

 一見お金にがめつい美神だが、こういった美神なりのポリシーをしっかり貫いて生きているところに、大人の女のかっこよさがある気がする。

 しかし、そんな美神だが、実は寂しがり屋で情に脆く、時にはチラリと女性的な包容力を見せる一面もある。ヒロインにしてはかなり人間臭いところも筆者は気に入っている。大概のことは「美神さんだから」で許されてしまうような、とても魅力的なキャラクターだ。ここでは、筆者が美神の人間味を感じたセリフをいくつかご紹介する。

・「時給250円!!250円ったら250円!!それが気に入らないっていうのなら240円!!ほらほらどーするの!?どんどん下げるわよ!!230円!!220円!!」
・「時給255円でよけりゃ、戻ってらっしゃい!」 美神令子/コミックス3巻(リポート1・上を向いて歩こう)

ライバル・小笠原エミが横島に年棒2千万・完全週休2日・希望すれば社宅としてマンションを提供すると打診して引き抜こうとしたところ、美神は引き止めるどころか横島の時給をどんどん下げてしまう。最終的にこの後どんどん下げられてしまい10円まで下がってしまいエミに引き抜かれる。最終的にはエミのところでボロボロになって帰ってきた横島に対して5円賃上げする美神

・「生きて、おキヌちゃん!! 生き返ったあと あらためてまた本当の友達になりましょう…!」美神令子/コミックス20巻(リポート10・スリーピング・ビューティー【その11】)

おキヌは生き返ることができるようになるのだが、その代わり幽霊の時の記憶を全て無くしてしまうことになる。美神の情の厚さを感じるシーン

・「世界を救う戦いなんて一銭にもならないボランティア……!! 一刻も早く終わらせて悪霊退治で小銭を稼ぐ平和な生活に戻るのよっ!!」美神令子/コミックス35巻(リポート4/ジャッジメント・デイ【その17】)

お金のためとはいえ命懸けで戦うし、なんだかんだ人々を救う仕事をしている美神。「アシュタロス編」では世界を崩壊から救うことがオカルトGメンを含むゴーストスイーパーチームの使命だ。自己中心的な美神が世界を救うために戦うという、本来のテンションとは異なるストーリーだが、だからこそ本作独自の面白さがある

オカルトとコメディーのバランス感は唯一無二。時代が進んでも笑えるギャグシーン

 時代と共に笑いのトレンドも変わってくるものだが、本作は直球で笑わせてくる、普遍的なギャグの面白さがある。勢いのある一瞬の一発ギャグから、テンポよく笑わせてくるシュールなギャグまで、その種類は様々だ。

 時折、ページいっぱいにぶつけられている作者の熱量にねじ伏せられてしまうようなシーンがふいに出てくるから油断ならない。

【コミックス5巻(リポート8/何かが道をやってくる!!)】
大量のチビパイパーたちが笛を吹くのを阻止するべく「小さい子供が笑うよーなレベルの低いギャグを言うのよ!!」と美神に無茶振りされる横島。土壇場で思いついたしょーもないギャグを全力でやる横島が最高だ

 また、シリアスな展開でも違和感なくスッと入り込むギャグによって、作品がブレていないところもすごい。もちろん全39巻の中には涙なしに読めないシーンもあるが、ボス戦だろうがしっかりギャグが入ってくるし、ちゃっかり笑ってしまう。

 この部分に関して、原作者の椎名高志氏は「(少年マンガらしい物語を)正面から描くのは照れがある」と語っている。(※「椎名高志の漫画術」より)

【コミックス34巻(リポート9/ジャッジメント・デイ その12)】
ラスボスらしいビジュアルでかつ強敵のアシュタロス。緊迫している状況の中、美神と横島の夫婦ギャグに巻き込まれ、顔面が思いっきり崩壊する

 いくら笑ってしまう、とはいっても、本作はちゃんと「オカルト」コメディーなんだと思わせてくれるような、ちょっとゾッとするような話も登場する。

 筆者は、ハーメルンの笛吹き男がモデルとなった悪魔「パイパー」と、リカちゃん人形がモデルになっている「モガちゃん人形」のエピソードは、いまだにちょっぴり怖い話として記憶している。

 パイパーは、笛の音で大人を子どもに変えて霊力を奪う悪魔で、ビジュアルが映画「IT(イット)」(1990年)のピエロのような見た目だ。それだけでもう嫌だが、アニメ版だと、笛の音色も絶妙に不協和音で耳にこびりつく。アニメ版のパイパーの声も、幼い頃の筆者には十分すぎるくらい不気味だったが、後になってから「サザエさん」に登場するアナゴさん(声優・若本規夫さん)だと知った時は不思議と安心した。

コミックス5巻(リポート2/何かが道を やってくる!!)

 「モガちゃん人形」は、可愛がっていた人形に魂が宿ってしまうエピソードなのだが「そういえば実家のあの人形どこにいったんだ……?」と急に不安になる。大人になってからも、なるべく形を模しているぬいぐるみや人形などは買わないようになった筆者。地味にトラウマになっているようだ。

 他にも、横島が雛人形を除霊するエピソードも不気味だが、最後除霊に失敗して、雛人形に頭のてっぺんを丸刈りにされている横島でだいぶ不気味さが和らぎ、やっぱり笑って終われるところが本作の良いところだ。

コミックス27巻(リポート6/私の人形は良い人形!!)

 こういったオカルト要素を踏襲しながら、アクの強い美神達がドタバタと除霊していく姿を楽しみながら読めるのが本作の最大の魅力の一つだろう。

時給255円の助手からゴーストスイーパーとして成長していく「横島忠夫」がかっこいい!

 本作のファンには、メインキャラクターの1人「横島忠夫」の成長の様子を見て、そのギャップに惚れてしまった方もいるのではないだろうか。筆者はそうだ。

 通常パートでは、主にギャグ要員で煩悩と劣等感にまみれ、長いものには巻かれる小物感満載の横島。そんな彼が、1人のゴーストスイーパーとして成長していく姿は、見応えがあり、最早もう1人の主人公と言っても過言ではないだろう。

 横島の力の片鱗は、除霊中の美神の胸を触ったことで強力な霊力が発現した所から現われる。また、美神の妙神山での修行の際、小竜姫は横島の霊力に薄ら気づいてたりと、物語序盤からチラチラと見受けられたいた。作中では小竜姫がGS資格取得試験の受験を勧めている。

小竜姫は横島の微かな霊力を感じとり、特別に美神の助っ人として、横島のシャドー(霊力の分身)を取り出してみたところ、期待ハズレのしょーもないシャドーが出現した

 実際の成長は、GS資格取得以降から始まる。横島は、煩悩が霊力の出力と関係する特殊なタイプ。つまりスケベなことを考えて悶々としなければ、その出力が弱まるという不安定な霊能力者だ。しかし、徐々に自分の霊力を使いこなせるようになり、掌に霊力を集中することで盾にしたり投げたりできる「サイキック・ソーサー」、右手に霊力を集中させ霊波刀のようになる「栄光の手(ハンズ・オブ・グローリー)」、霊力をビー玉程度にしたもので、漢字一文字の念を込めて投げるとチート級の強力な威力を発揮する「文珠」など、見た目とは裏腹にかっこいい技をいくつか会得し、徐々にゴーストスイーパーとしての力をつけ始める。

コミックス11巻(リポート1/誰が為に鐘はなる!!【その14】)

 物語後半「アシュタロス編」では、人間的にも急成長を見せる。メンタル面の成長も相まって、ついには美神すらも超えてしまう実力を見せるシーンが度々見られ、読み始めた最初の頃の横島を思うと感動してしまう。

 だが、前述した通り、シリアスな状態の横島では、霊力が思うように発揮されないという弱点があるのがなんとも横島らしくて、ここがまさに「GS美神」という感じがする。

・「ルシオラ・・・!ちゃんとおめーに、見る目があったってこと証明してやるぜ!!」横島忠夫・コミックス31巻(リポート5/ザ・ライト・スタッフ)

美神の母親は、横島用のプログラムと称して突如本物の美神を送り込むが、横島はついに美神を超える実力を発揮する。トドメをさせたはずの横島だが最後に躊躇って相打ちとなる。美神と互角に戦う横島の描写がかっこいいのはもちろん、相打ちで気絶した横島に「いつのまに、そんなに強くなっちゃったの?』と声をかける美神の愛おしそうな表情も素敵だ

 元々横島は通常パートでも人間性がよく出ているキャラクターだ。スケベだが、優しいし面倒見も良い。きっと思春期相応のコンプレックスの裏返しで、女性との距離感が測れず、直情的になってしまいがちなのだろう。

 実は小学生の頃モテていたという過去エピソードがあるが、横島がモテるのは納得がいく。特に魔族と恋に落ちた辺りからの横島には、余裕が出て色気すら見える瞬間がある。あの美神ですらドキッとしている瞬間があるし、今でいう「リアコ(「リアルに恋している」の略)」みを感じてしまうくらいだ。

 時給250円の横島が、主人公美神と並ぶに相応しい魅力的なキャラクターへと成長する展開にただただ感動していたが、まさか横島の成長を、原作者側は始めはパロディ的なノリで描いていたとは思いもしなかった。(※「椎名高志の漫画術」より)。さすがは「GS美神」だ。ちなみに筆者、男性キャラは横島推しだ。

 本作は、ここでは紹介しきれないくらいのボリュームがあるマンガだが、それを一切感じさせず、最初から最後までキャラクターもストーリーも新鮮で生き生きとしている。それはきっと、美神令子というキャラクターが、終始ワガママで元気だからなのかもしれない。あんな風に、自分の中にブレないポリシーを持って、いい意味で自分のためにわがままに元気に生きる美神令子の姿には、今も憧れてしまう。

【【期間限定公開】GS美神 第9話「お願いチューして!!」】
現在、東映チャンネルではアニメ版「GS美神」を全45話が期間限定公開されている

 アニメ版では、豪華声優陣のアドリブも炸裂しているので、よりリアルなキャラクターたちが見られる。特に横島忠夫役の堀川りょうさんと、ドクター・カオス役の千葉繁さんのアドリブ合戦は爆笑必至だ。

 平成から令和になり、未だに経済も世の中の空気も陰っていてパッとしない日本。そんな今だからこそ、バブル崩壊直後の時代を、底なしの明るさで彩った本作は、たくさんの人が元気づけられる作品なんじゃないかとふと思った。是非、原作と合わせて「GS美神 極楽大作戦!!」の世界を楽しんで欲しい。間違いなく、楽しく元気になれるだろう。