特別企画

【今日の読み切り】「好きだからTBH」

すこし・ふしぎな昭和感を感じる令和ドタバタラブコメディ

【好きだからTBH】

著者:苺苺

講談社

 高校生の星子は、同じクラスの痛取くんのことが好き。でも、痛取くんが親友の綾瀬のことが好きだと知ってしまう。綾瀬は星子の正直なところを気に入ってくれているのに、星子はついついほかの友達に綾瀬を悪く誤解させるような物言いをしてしまい、自己嫌悪に陥る。落ち込んでいる星子は学校の帰りになぞの占い師から、悩みの消える薬をもらう。星子はそれを飲んで眠りにつく。目が覚めてみると、世界は一変していた。

 「好きだからTBH」は、「アフタヌーン四季賞2024 春のコンテスト」で沙村広明特別賞を受賞した、苺苺氏によるラブコメどたばたギャグ。突込みが止まらない独特のギャグは、レトロで今となっては新鮮な昭和感が感じられる。

 短編離れした洪水のような情報量で構築されるストーリーテリングの妙は圧巻。物語が進んでいる間、何度も挿し込まれては、ずっと言い訳を続けている久祖田踏夫総理大臣など、現代的な社会問題も取り込みつつ、すべてをナンセンスギャグにしてしまう。セリフの情報量がかなり多く、人を選ぶタイプの作風かもしれないが、ハマると抜けられない魅力がある。

【あらすじ】

 占い師からもらった“悩みの消える薬”を飲んで眠った翌日、日本は「正直法」が施行され、嘘をつくとどんないい嘘でも犯罪として取り締まられてしまうというとんでもない世界に変わっていた……。