先行体験

「ソウルイーター」生誕20周年でいま一度“魂の共鳴”! 物語終盤に向けて加速する狂気を体験できる原画展フォトレポート

【ソウルイーター生誕20周年記念原画展】

・東京会場

開催期間:8月23日~9月23日

開催時間:平日11時~21時/土日祝10時~20時

会場:Space Galleria(〒170-0013 東京都豊島区東池袋1-20-7 アニメイト池袋本店8F)

・大阪会場

開催期間:2024年10月25日(金)~11月25日(月)

開催時間:平日11時~20時/土日祝10時~20時

会場:Space Gratus(〒556-0005 大阪府大阪市浪速区日本橋4-15-17 アニメイト大阪日本橋別館3F)

 漫画家・大久保篤氏の代表作「ソウルイーター」の生誕20周年を記念して、同作初の大規模原画展が開催となる。

 「ソウルイーター」は死神が統治する世界を舞台に、武器に変身することができる人間と、それを扱う職人がペアを組む専門学校・死武専(死神武器職人専門学校)で繰り広げられる物語を全25巻で描いたダークファンタジー。2004年から2013年にかけて、スクウェア・エニックスが刊行する「月刊少年ガンガン」にて連載された。

 このたびの原画展は、8月23日から9月23日にかけてはアニメイト池袋本店8Fの、10月25日から11月25日にかけてはアニメイト大阪日本橋別館3Fのイベントスペースにて開催される。本稿では8月22日に行なわれた東京会場内覧会の模様をお届けする。

まるで連載中かと錯覚するほどの熱量と、その裏に潜む狂気に触れる展示

 会場に足を踏み入れると、まずは原画展のために描き下ろされたソウルたちメインキャラクターが来場者を出迎える。第一の暖簾の横には、大久保氏らしいキレ味鋭いジョークを添えたメッセージもあり、その文中には「ソウルイーターは作品を通して細かなスタイルチェンジを繰り返した作品」という作者評も。暖簾をくぐると、マカ&ソウル組、ブラック☆スター&椿組、キッド&リズ&パティ組のカラーパネルとともに、それぞれの初登場シーンが描かれた原画が展示されている。エリア中央には死神様のスタンディと、その傍らにあったおなじみの鏡も展示されており、今にも小山力也さんの声で陽気にしゃべる死神様の声が聞こえてきそうだ。

 歩を進めていくと、魔女・メデューサとの遭遇やアラクノフォビアとの戦いなど、本編で起きた時系列順に展示された多くの原画を見ることができる。個人的(きっと多くの読者にとってもそうだと思うが)には、ソウルが狂気の力を使うことを決めたブラックルームでのワンシーンや、ブラック☆スターが椿の妖刀モードを初披露するシーン、キッドが死神として覚醒していくシーンなど、強く印象に残っている名場面の数々の原画が、惜しみなく展示されている様には興奮を覚えた。

 展示も半ばを過ぎた(公式サイト掲載の簡易マップ・#6)あたりからは、本編でいう死武専若手精鋭部隊・スパルトイが結成された頃のクライマックスへと向かっていくシーンの原画が展示されていた。余談だが、このあたりからアニメのテーマソングである「resonance」「PAPERMOON」「STRENGTH.」などの音楽が聞こえてきて、内心ウキウキになりながら展示を確認していく。蛇腹状にセッティングされた壁面には、メデューサとクロナの歪な親子関係、その裏表を視覚的に表現する興味深い試みも。物語終盤の、狂気が加速していく空気感を感じ取ることができる内容となっていた。

会場の簡易マップ。#6は概ね中間地点となる

 五線譜が壁に描かれたエリアでは、マカ(声:小見川千明さん)、ソウル(声:内山昂輝さん)、クロナ(声:坂本真綾さん)による、撮りおろしボイスを使用した動画も公開されていた。作品の生誕20周年を迎えた今、改めてアニメ版キャストが“共鳴”した特別な内容となっているので、ぜひ現地で確認してほしい。

 会場最後となるエリアでは、連載当時の扉絵に使われたカラー原稿や月刊少年ガンガンの表紙を飾ったイラストなど、色付きの原画をまとめて展示。アニメでメインキャラクターを演じた声優陣、主題歌を歌った西川貴教さん、アニメ制作を担当したボンズの南雅彦プロデューサーや五十嵐卓哉監督など、関係者によるお祝いメッセージが寄せられた色紙もあった。

 原画展を観覧し終えての率直な感想としては、予想していた以上の展示ボリュームがあり、驚いたというのが正直なところだ。そもそも筆者は池袋アニメイト8Fにあるイベントスペースに来るのがこの日初めてで、会場の規模感を把握していなかったというのもあるが、それを差し引いてもここまでのボリュームで原画を見せてくれるとは思っていなかった。過去の名作を懐かしむというよりは、まるで現在連載中の作品の原画展に来たのかと思わされるくらいの熱量だ。

 作中に収められた印象的なシーンの生原稿を見ることができたのももちろん嬉しいが、壁面全体で世界観を表現する手法や、ライティングで来場者の気分を盛り上げる演出などは、やはり体験型イベントならではの醍醐味であり、作品の新しい楽しみ方を提示してもらったような気分だ。完全な余談になるが、ブラック☆スターが鏈黒を初披露するシーンの原画を見た時、「TVアニメ放送当時のCMでめちゃめちゃ見たな~」と懐かしい記憶もよみがえってきた……。展示の熱量が大きいだけに、きっとファンそれぞれの胸にもよみがえるものがあると思う。ぜひ、そんな思い出を迎えに行ってみてはどうだろうか。