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【年始特集】「薬屋のひとりごと」シーズン2放送前に“じれったい”2人の関係性など3つの見どころをチェック

コミカライズは子一族編のクライマックス。マンガもアニメも楽しもう

【TVアニメ「薬屋のひとりごと」シーズン2】

放送開始日:1月10日毎週金曜23時~

※初回放送は23時40分~

放送局:日本テレビ系枠

「薬屋のひとりごと」お正月ビジュアル第1弾

 TVアニメ「薬屋のひとりごと」のシーズン2の放送が1月10日からスタートする。「これ、毒です」とつぶやくシーンが印象的で、ネットでも一気に人気が拡大した「薬屋のひとりごと」。本作は、中世中国風の文化を持つ茘(リー)という架空の国の後宮を舞台に、毒見役の少女、猫猫(マオマオ)が次々に起こる事件の謎を解いていくというミステリー仕立ての物語。原作は日向夏氏の小説で、シリーズ累計3,800万部を超えるヒット作。現在は15巻まで発売されている。

 また、本作には2種類のコミカライズがある。「薬屋のひとりごと ~猫猫の後宮謎解き手帳~」は小学館の月刊「サンデーGX」で連載しており、作画は倉田三ノ路氏。最新19巻が2024年12月に発売されたばかりだ。

「薬屋のひとりごと ~猫猫の後宮謎解き手帳~」

 もう一方の「薬屋のひとりごと」はスクウェア・エニックスの月刊「ビッグガンガン」で連載しており、作画はねこクラゲ氏、構成は七尾一樹氏が担当している。こちらは現在14巻まで発売している。現在はどちらも子一族編に入っており、クライマックスへ向けて盛り上がっているところだ。

「薬屋のひとりごと」

 本作は登場人物が多く、作中には多くの伏線が張られている。そのためストーリーを覚えきれていないという人もいるのではないだろうか。その場合はぜひコミカライズ版で予習をしつつ、これから放送がスタートする新たな物語に備えるといいだろう。この特集では改めて、本作の面白さを3つの視点から考察してみたい。

【「薬屋のひとりごと」第2期ファイナルPV】
アニメ第1期ではコミックスの8巻までが描かれた

見どころその1:多くの想いが交錯する、後宮と花街、2つの女の世界

 「薬屋のひとりごと」は、毒に異常な執着を持つ薬師の娘、猫猫(マオマオ)が身近に起きる様々な事件を、豊富な知識で解決していく物語。物語の舞台となるのは、趣の違う2つの女の園、後宮と花街だ。

 猫猫は花街近くで薬師を営む羅門と暮らしていた。だがある日、人さらいにさらわれて後宮に売られてしまう。もともとドライな性格だったため、仕方ないとあきらめ、下女として後宮で働いている。

 舞台の1つ、後宮は中国風の文化を持つ茘(リー)という帝国の帝が后(きさき)となるべき女性を集めた場所。外とは隔絶されているが、后や官女約2,000人と1,000人の宦官が住んでいる巨大な街ともいえる場所だ。

 そしてもう1つの舞台となる花街は、芸や体を売る女性たちが集う店が軒を連ねる巨大な歓楽街。猫猫は緑青館という大店の売れっ子妓女たちから可愛がられている。

 物語には後宮や花街に暮らす多くの女性が登場し、群像劇といってもいいくらい登場人物が多い。多くの女や男たちの想いや情念が交錯し、複雑に絡み合った糸を、猫猫がすっきりと解決していく。この謎解きが本作の魅力だ。だが、中国風の名前や地名、制度などはアニメの発音だけではわかりにくい部分がある。その点、コミカライズなら耳慣れない単語も漢字で読むことができるので、この複雑な物語をよりわかりやすく楽しむことができる。

みどころその2:美貌の宦官、壬氏と猫猫のじれったい関係

 壬氏は女性と見まがうような美しい容貌の宦官。後宮全体を管理するのが役割で、様々な問題が彼のもとに持ち込まれる。猫猫を見つけ出して、上級妃のひとり玉葉妃の毒見役になるきっかけを作った。普段は笑顔を絶やさない柔和な性格だが、猫猫の前ではすねたり、妬いたりといった幼さを見せることがある。

 事件が起こるたびに猫猫と一緒に行動することが多く、だんだんと猫猫を意識するようになる。端から見ると露骨なくらいに猫猫に惹かれているのがわかるのだが、恋愛にかなり疎い猫猫の勘違いと、素直になれない壬氏のすれ違いが読者や視聴者をやきもきさせる。

 シーズン1後半では、壬氏が国の祭祀(さいし)に参加していたりと、ただの宦官ではないということがようやく具体的にわかってきた。さらに猫猫と一緒に変装して街歩き(デート?)をしたりと、2人の関係も少しずつ前進の兆しを見せている。

 壬氏の本当の姿や、猫猫に対する気持ちは今後の事件でさらに明らかになっていく。ネタバレ防止のために詳細は控えるが、壬氏と猫猫がお互いの本当の気持ちにかなり肉薄するシーンがアニメでどのように描かれるのか、期待が膨らむ。

見どころその3:猫猫が披露する、様々な薬の知識

 本作が他の中国風ファンタジーやミステリと違うのは、謎解きに科学知識が使われることだろう。猫猫は毒や薬だけでなく、様々な科学現象への豊富な知見を有している。例えば、鉛中毒や粉塵爆発から、温室を使った促成栽培など、科学的な知識による解決方法が髄所に登場する。多くの人が幽霊や悪霊を信じている時代に、その科学的な手法は魔法のようにも見えて周囲を驚かせる。

 科学がまだ発達していない時代を背景に、科学的なアプローチで事件を解決していくという痛快さが「薬屋のひとりごと」を非常にユニークな作品として成立させている。

TVアニメ「薬屋のひとりごと」がお正月ビジュアルとミニドラマを公開

 アニメ2期の放送開始を控える中、お正月シーズンに合わせて猫猫と壬氏が羽子板勝負を楽しむミニボイスドラマが公開された。作中では見られない2人のショートエピソードとなっており、キャラクター2人について公開されたビジュアルと合わせて紹介しよう。

猫猫(マオマオ)

 毒と薬に異常なまでの執着を持つ、花街育ちの薬師。玉葉妃の娘の命を毒から救ったことで、壬氏にその才を見抜かれ、毒見役となる。一度は後宮を解雇されるも、壬氏付きの侍女として再び宮中に戻り、玉葉妃の妊娠判明後は再び翡翠宮で毒見役として仕えている。

 好奇心と知識欲、そしてほんの少しの正義感から、事件に巻き込まれることもしばしば。

TVアニメ「薬屋のひとりごと」公式からポストされたお正月ビジュアル第2弾の猫猫

壬氏(じんし)

 後宮を管理している宦官。その美貌は、もし女性だったら傾国と言われるほど。後宮で起きるやっかいごと、問題を猫猫に持ち込んでは解決させている。その立場や出生には謎が多く、壬氏の命を狙った事件では、猫猫の機転で一命をとりとめた。最初は猫猫のことを都合のいい駒と考えていたが……。

TVアニメ「薬屋のひとりごと」公式からポストされたお正月ビジュアル第2弾の壬氏
【『薬屋のひとりごと』お正月ビジュアル スペシャル動画】

2つのコミカライズ、どちらで読むか?

 上記を踏まえたうえで、2つあるコミカライズのどちらを読めばいいだろうか? 同じ原作を下敷きにしているので、基本的なストーリーラインやセリフ回しに違いはない。ただ、シーンの組み立て方や、マンガ的な演出に多少の差がある。筆者の極めて個人的な感想を付け加えると、小学館の「薬屋のひとりごと~猫猫の後宮謎解き手帳~」は事件そのものにフォーカスされて、全体が見通しやすく構成されている印象。対してスクウェア・エニックスの「薬屋のひとりごと」は印象的なシーンの演出が優れていると感じた。とはいえ、基本的には個人の好みで決めて問題ない。むしろ両方を読み比べることで、コミカライズをする際のアプローチの違いを見ることができて面白いので、時間に余裕があれば、ぜひ両方ともに挑戦していただけると幸いだ。

 ネタバレは避けたいということであれば、どちらでも、まずは1期の終わりにあたる8巻まで読んでおいて、2期が終わってからぜひマンガでも続きを楽しんで欲しい。たぶん、かなり気になるところで終わっているので、そのまま原作小説へも食指を伸ばしたくなるかもしれない。多くのメディアで触れることができる「薬屋のひとりごと」の世界を、ぜひ様々に楽しんで欲しい。

 なお、TVアニメ「薬屋のひとりごと」シーズン2は1月10日毎週金曜23時より日本テレビ系にて放送開始となる。初回は23時40分より放送される予定で、その後は各種配信プラットフォームでの配信も行なわれる。シーズン2では、PVにもちらりと登場している異国からの使者をもてなす話や、キャラバンにまつわる事件など、さらに後ろに潜む巨大な陰謀に続いていく小エピソードが描かれる。連続2クールの先では、猫猫と壬氏の関係の進展も描かれるはずだ。原作のあのシーンやこのシーンがアニメでどのように演出されるのか、今から楽しみだ。

「薬屋のひとりごと」第2期