特別企画
「銀河鉄道999」50周年を記念した「松本零士展 創作の旅路」レポート。デビュー作から有名作品まで、約300点の原画や資料を公開
2025年6月20日 16:05
- 【松本零士展 - 創作の旅路】
- 会期:6月20日~9月7日 ※会期中無休
- 会場:東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)
- 開場時間:10時~21時(最終入館20時)
- 入場料:一般 2,400円、高校・大学生 1,700円、4歳~中学生 1,100円、65歳以上 2,100円
1938年に福岡県で生まれ、1970年代には松本零士アニメブームなどを引き起こした漫画家の松本零士氏。
「男おいどん」「(漫画)宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道999」など、数々の有名作品を世に送り出してきたが、代表作である「宇宙海賊キャプテンハーロック」「銀河鉄道999」が2027年に誕生から50周年を迎えることを記念して、「『銀河鉄道999』50周年プロジェクト 松本零士展 創作の旅路」が6月20日より9月7日にかけて、六本木ヒルズ森タワー52階・東京シティビューにて開催される。
会場は3つのゾーンで構成され、最初のZONE1では“歩みを刻む零士メーター”として、デビュー作品だけでなく作家としての地位を築くこととなった「男おいどん」や、その時代の原画や当時の資料などを多数展示。続いてのZONE2は“唯一無二の創作宇宙”と題し、「銀河鉄道999」を中心とした作品の原画展示に。劇場版「銀河鉄道999」の、ラストシーンも見ることができる。そして最後のZONE3は“Artist Leiji Matsumoto”と銘打ち、氏が手がけたカラー原画を展示、という内容だ。
今回、展示会に先駆けてプレス向け内覧会が開催されたので、その内容をまとめてお伝えしよう。
「虫の世界探検記」はじめ、松本氏の原画が展示されたZONE1
最初の展示スペースであるZONE1では、氏のデビュー前作品であり今回原画が発見されたということで初の展示となる、14歳の時の漫画「虫の世界探検記」を見ることができる。また、デビュー直後は志望していた少年漫画の作家層が厚かったため、比較的新しいジャンルだった少女漫画誌にて漫画を描いていた。その頃の作品原画も並んでいるが、目立って展示されているのは、氏の漫画家としての地位を築いた「男おいどん」。自身が駆け出しの頃の実体験を反映したこの作品が大ヒットし、漫画家としての出世街道を進んでいくこととなった。
ここには、同時期に掲載されていた「戦場まんがシリーズ」や「模型の時代」といった原画も展示されており、若かりし頃から松本零士氏の才能がいかに優れていたのかを読み取ることができるだろう。
その先には、氏の名前を一躍有名にした「宇宙戦艦ヤマト」や「宇宙海賊キャプテンハーロック」「Queen エメラルダス」「惑星ロボ ダンガードA」「新竹取物語 1000年女王」などの原画も展示されている。なお、ここには1961年に松本零士氏と結婚した漫画家・牧美也子さんの作品も掲示されていた。筆者は恥ずかしながら、氏が結婚していたことを今回の展示会で初めて知り、良き勉強になった。このような新発見があるのも、展示会の良いところといえるだろう。
「銀河鉄道999」を中心としたZONE2
“唯一無二の創作宇宙”と題されたZONE2は、「銀河鉄道999」を中心とした展示コーナーとなっている。松本零士氏が各エピソードに込めた、生命について・幸せについての問いかけやメッセージを追えるよう作品の原画が解説付きで展示されており、子供の頃にはわからなかったことを改めて読み取ることができた。大人になった今だからこそ理解することができる、それを促すような展示内容になっていたことには、終始感心させられっぱなし。また、一部の原画が展示されている上部エリアには、作品の中から選ばれた印象深いセリフが書かれていた。これなども、「大人になると、本当にそう思う……」と心の中で何度も反芻するほど共感し、そして心に沁みるはずだ。
エリア奥では劇場版「銀河鉄道999」のラストシーンも上映されており、展示物と相まって当時の記憶を思い出し、目元をそっと拭う来場者も見かけた。氏の作品に思い入れのある人ほど、胸を熱くさせることだろう。
松本氏のカラー原画が堪能できるZONE3
最後のエリアとなるZONE3は“Artist Leiji Matsumoto”として、氏の描いた色鮮やかな原画が展示されている。枚数はそれほど多くはないものの、1枚1枚の持つ迫力に圧倒されること間違いなしだ。実際、完成から数十年の時を経た今でも、それらイラストが時代を超えて輝いているのを自身の目で確かめることができたことで、改めて氏の凄さが身に染みた。
レストランでは鉄郎の“ビフテキ”などオリジナルメニューが展開
展示会会場に隣接するレストランTHE SUN & THE MOONでは、本展の開催を記念して「銀河鉄道999」に登場するメニューからインスパイアされた、オリジナルメニューが用意されている。「銀河鉄道999 鉄郎の“ビフテキ”」は、999号の食堂車で鉄郎がよく食べている“ビフテキ”を再現したもので、ほかにも幻覚と戦い砕け散ったウエイトレス・クレアの名前を冠した「クレアの涙星カクテル」、メーテルの黒い衣装と金髪をイメージした「漆黒の女神~メーテルの秘密~」があり、コラボレーションメニュー1品につき1枚、ここでしか手に入れられないコースターがプレゼントされる。
単なる原画の展示に止まらず、”松本零士ワールド”を堪能できる展示会に
松本零士氏が漫画家としての地位を確立するまでのZONE1、代表作である「銀河鉄道999」を中心とした展示のZONE2、そしてカラー原画が展示されているZONE3と、氏の作品をおおよそ時系列で鑑賞することができる本展。なかでも、今回は誰もが知っているであろう「銀河鉄道999」を中心とした展示になっており、当時アニメや漫画を見ていた人であればもちろん、その他の作品原画も展示されているので、氏のファンであれば興味深く鑑賞できるのは間違いない。
当時は「漫画・アニメだから面白い」としか思わなかった筆者だったが、今回の展示会では原画のセリフに込められた意味などを解説を通じて知ったことで、新たな面から作品や松本零士氏を見ることができたことが非常に有意義だと感じられた。大人になった今だからこそ理解できる部分も多かったので、当時ハマっていた人ほどオススメしたい展示会と言えるだろう。
(C)松本零士/零時社
(C)松本零士/零時社・東映アニメーション