先行体験

ミギーとの出会いから別れまで。400点以上の生原画が展示される「寄生獣展」内覧レポート

【寄生獣展】
会期:年6月6日~6月21日
会場:YOKOHAMA COAST(アソビル2F ROOM1)
入場料:前売り券2,000円/当日券2,200円(6月6日のみ入場日時指定)

 6月6日より21日にかけて、「寄生獣展」がYOKOHAMA COASTにて開催される。この展示会では、著者である岩明均氏によって精緻に描き込まれた400点以上の貴重な生原画が展示されており、生原画だからこそ肌で感じられる圧倒的な迫力を体験することができる。

 会場は複数の区画に分かれており、それらすべての場所に連載時に使われた生原画が所狭しと並び、来場者を出迎える。また、場所によっては展示シーンに合わせた効果音が鳴っていたり、マンガで描かれていた1シーンを再現した仕掛が用意されているのも見所の一つだ。

 さらに今回の原画展を記念して、豪華作家陣や関連著名人25人から寄稿された特別な記念色紙のスペシャル展示も決定。作品を愛する著名作家陣が一堂に会し、本展のためだけに描き下ろした渾身の色紙の数々は必見だ。

 今回、開催前日にメディア向けの内覧会が行なわれたので、その展示内容を一足先にお伝えしよう。

膨大な量の生原画が持つ迫力に、最初から最後まで圧倒されっぱなし

 「寄生獣」は岩明均氏により、1990年から1995年にかけて「月刊アフタヌーン」などに連載されたマンガだ。後にアニメ化や実写映画化も行なわれた本作は「アフタヌーン公式サイト」によると、2020年時点で累計2,400万部を突破するベストセラーとなっている。

 主人公の高校生・泉新一は、突如飛来した謎の生物に襲撃されるが、からくも難を逃れる。その生物は新一の右腕に寄生しミギーを名乗り、寄生生物として次第に新一と生活を共にしていく。しかし、時を同じくして世界各地に現れた他の寄生生物は脳を奪い人に寄生し、さまざまな騒ぎを巻き起こす。そんな寄生生物と人間の、複雑に絡み合う物語が描かれていくのが本作だ。生命や地球、人類、環境問題といった、さまざまなテーマが織り込まれており、読む者を深く考えさせてくれるのが特徴の一つともいえる作品となっている。

 今回の展示会は、マンガ連載から30年以上が経過してから初となるもので、400点以上の貴重な生原画が展示されているのが見所だ。その会場は全部で9つのブロックに分かれており、入場すると最初にアフタヌーンKCDXの各巻に登場した、さまざまな表情のミギーが出迎えてくれる。主要キャラクターの紹介も書かれているので、これならば「作品名は聞いたことがあるものの、詳細はあまり知らない」という人でも問題なく鑑賞できるだろう。

 その先には「1」と銘打たれたブロックがあり、「寄生獣」プロローグ部分の生原画展示エリアとなっていた。生原画ということで、吹き出しの部分が手描きセリフの上に写植が貼られた状態で展示されているため、より一層生々しさを感じ取ることができた。また、「アフタヌーン」のロゴが入っているマンガ原稿用紙での展示も、そのリアルさに拍車をかけているといえる。このような部分から、原画のコピー展示では得られない、生原稿ならではの迫力を感じられた。

このブロックでは、始まりとなる第1話「侵入」の生原画が展示されている。コミックスでの第1話は42ページあるが、そのうちの半分ほどがこの会場に集まっており、ここを見るだけで「寄生獣」がどのようにして始まったのかがわかる

 続いての「2」ブロックでは、新一の脳を乗っ取ることに失敗したミギーの「ざんねん……だ……」というカットを背景に展示が行なわれているほか、新一とミギーが初めて戦った相手である寄生犬が、効果音と共に天井付近に飾られているという演出も。この大きさの犬が空を飛びながら襲ってくるのだから、自分ならばミギーを説得してでも逃げただろうに、巻き込まれたとはいえ新一は良く戦ったものだ……と感心しつつ、次のエリアへと歩みを進めた。

後に新一の彼女となる村野里美が、彼への違和感から発した言葉が書かれている「2」ブロック。上空には寄生犬が舞い、今にも襲いかかってきそうな迫力を醸し出していた

 「3」と書かれたブロック入口で来場者を待つのは、本作でも重要な立ち位置のキャラクターとなる田宮良子。ここには、後に田村玲子と名前を変えて登場する彼女との出会いと、「寄生獣」を代表するセリフの一つ「“この『種』を食い殺せ"だ!」に関連した生原画が展示されている。

 このブロックは展示されている原画の数は多くないものの、それらに書かれた彼女のセリフを逐一読んでいくことで、より本作に込められたテーマを考えることになる。

田宮良子との出会いの場面と、あわや彼女との戦端が開きそうになったシーンが展示されている。生原画など20の展示物には、岩明均氏からのコメントも添えられていた

 その直後にある「4」ブロックには、寄生生物によって殺されてしまった母親との思い出と、その母親に擬態した寄生生物と戦い敗北した新一がミギーによって息を吹き返し、復讐を遂げるまでの生原画が並ぶ。

 展示されている生原画は雑誌に掲載されるため基本的にはモノクロだが、所々にカラーページ用に着色された生原画もあり、それらが一際強い印象を与えてくるのだ。間近で見ると、描かれたのが30年以上も前とは思えないほどの力強さがあり、驚かされるばかり。

心臓を貫かれて一度は死んでしまった新一を生き返らせるために、体の一部組織が彼と同化してしまったミギー。そのことで人の能力を超えた力を出せるようになった新一が、無我夢中で堤防をジャンプで越えていくシーンが壁に描かれている。高さは約3mでほぼ実寸大と思われるが、あのときの新一はここを越えていったのかと改めて驚かされてしまった

 次の「5」ブロックでは、新一の通う学校に転校してきた寄生生物・島田秀雄との、出会いから決着までを見ることができる。バックには、新一が最後に遠距離からの投石によって島田を倒すシーンが描かれ、そこに同一ページの生原画が展示してあるという見せ方が採られていた。非常に躍動感溢れる見せ方となっており、そこに書かれた音までもが聞こえてきそうに思えたほど。

 ここには、これまでの展示エリアよりも“過激な表現がある"と書かれた暖簾の先で、事件の結末として描かれていた“アレ"が置かれているのを目にすることができる。ここではあえて写真を掲載しないので、ぜひ自身の目で見てきてほしい。

 このブロックには、寄生生物の波長がわかる女子高生・加奈との死別シーンや、後に市長として登場する広川の初登場場面も展示されている。この展示スペースの背景は新一と加奈にとって特別な場所になった廃屋で、加奈が途中まで書いた落書きもそのまま書かれていたりする部分などにも注目したい。

対島田戦の印象的な場面が、一部モノクロ反転した線画で展示されている。この大きさで描かれると、かなりの迫力を感じられた

 「6」ブロックは、ストーリー展開を追う形での展示だったこれまでとは違い、名前を変えて田村玲子となった彼女の産んだ赤ん坊を軸とした、生命をテーマとしたコーナーとなっている。さらには、新一にとってのラスボスとなる後藤や、その右腕部分に寄生していた三木との戦闘シーンなども並んでいた。展示を見ていると、「寄生獣」テーマの一つと思われる命について、さまざまな視点から考えさせられてしまった。

母親となった田村玲子の、その心情が変わっていく様と最後の生原画が展示されている。原作を何度読んでも、いつもいろいろと考えさせられてしまうシーンだ

 「寄生獣」の中でも特に激しい戦闘シーンが描かれる、市役所を舞台にした人間vs寄生生物との戦い、それに関した生原画が集められたのが、ここ「7」ブロックとなる。このエリアは展示だけでなく他とは違うユニークな仕掛が用意してあるので、ぜひ案内に書かれた指示通りに移動してほしい。初めて見たときには、思わず声が出ること間違いなしだ。

モニタを使用したユニークな仕掛や、寄生生物との銃撃戦で使用されたショットガンの効果音が流れるなど、工夫を凝らした展示エリアになっている。また、タイトルにもなっている「寄生獣」のセリフが初登場したコマも、大写しで飾られていた

 ストーリーのクライマックス部分となる生原画が集められた「8」ブロックでは、後藤との対決シーンやミギーとの別れが描かれたクライマックス場面などを見ることができる。最終話直前に見開きで描かれた特徴的なページの生原画を見れば、地球に生きる一人の人間として生きることの意味を考えてしまうかもしれない。

人間も寄生生物も、決して一人で生きることはできない。そんな作者の思いが込められた見開きページが、展示の最後として飾られている。本展示会の特徴を、非常によく表しているといえるだろう

 最後の「9」ブロックには、カラー生原画が一堂に集められ展示されたギャラリーとなっている。ここには、公式HPに名前が掲載されている「寄生獣」関連著名人25名にも及ぶ、展示会開催記念色紙も飾られているのだ。

 そこを抜けると、今回の展示会に合わせて用意された数々のグッズを購入することができる物販スペースとなっている。ミギーのマスコットやポーチ、リングなどの他にも、劇中で広川が選挙で使用していたタオルといったユニークなアイテムも販売されていた。グッズラインアップは公式HPに掲載されているので、「寄生獣展」に行こうと考えている人は事前にチェックしておくのが良いだろう。

図録やマスコット、Tシャツなど50種類近いグッズを販売している。何も考えずに行くと目移りしてしまうので、あらかじめ公式HPで何があるかを見ておきたい

見応えがあるのはもちろん、今だからこそ心に刺さるテーマを内包した展示内容に考えさせられることしきり

 会場には、実際に使用された生原画が400点以上も展示されているため、非常にボリューミーな内容となっている。全部をジックリ見て回るのであれば、間違いなく1日では足りないだろう。一部の吹き出しでは当時のまま手描きのセリフが残っているのを見られるなど、生原画ならではのリアルさを感じ取れるのも本展示会の嬉しい部分だ。

 展示場所によっては刃物と刃物がぶつかり合うような効果音だったり、液体が流れる効果音が鳴るなど、目だけでなく耳でも感じ取れるように工夫されており、視覚と聴覚の両面で堪能することができるのもユニークだった。

 作者がメッセージを込めたと思われるページが展示の背景に使われていたり大きく扱われたりもしており、改めて本作に込められたテーマを考える機会にもなったと言える。とはいえ、全体的には奇をてらうような展示方法は採用されておらず、どちらかというと美術館でジックリと作品を見て回る感じ、というのが本展示会にはマッチする表現と感じられた。

 「寄生獣」はコミックス全巻で約2,000ページを越える量があるのだが、そのうちの約1/5弱がこの会場に集まっているといえば、本展示会のボリュームの凄さがわかるのではないだろうか。これだけの数の生原画を見られるイベントというのはそうそう無いので、興味を持った人はこの機会にぜひ足を伸ばして、ジックリと鑑賞して欲しい。