特別企画

文字たっぷりで世界観を堪能!「小説『薬屋のひとりごと』原作展 毒と薬、科学とミステリー」内覧レポート

会期:12月5日~12月25日
会場:東京ソラマチ 5F イーストヤード11番地 スペース634
入場料:
小・中・高:1,000円
一般・大学生:2,000円
グッズ付A(パス&ネックストラップ):3,300円
グッズ付B-1(マルチケース:猫猫デザイン):4,300円
グッズ付B-2(マルチケース:壬氏デザイン):4,300円
グッズ付セット(パス&ネックストラップ、マルチケース:猫猫デザイン、マルチケース:壬氏デザインの3点セット):7,800円 ※ヒーロー文庫STORE限定販売

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 イマジカインフォスは、「小説『薬屋のひとりごと』原作展 毒と薬、科学とミステリー」を12月5日より25日にかけて、東京ソラマチ5F スペース634にて開催する。本展示会では日向夏氏による物語と、しのとうこ氏によるイラストが織りなす、小説の世界観を深く掘り下げる特別展示を楽しむことができる。

 東京スカイツリーお膝元に位置する会場には、小説のページや挿絵が貼り出された通路が準備されているほか、有名エピソードで使われている毒や、用いられている科学手順についての説明コーナーを用意。日向夏氏の作業机を模したスペースや、しのとうこ氏のイラストを展示した回廊だけでなく、アニメ・コミックよりも先のシーンだけで構成されている特別なスポットも用意されているなど、原作小説ファンにとってはたまらない内容となっている。

 加えて、日向夏氏が本展覧会のために書き下ろした、週替わり完全新作エピソードの冒頭部分が読めたり、「薬屋のひとりごと」が連載されているヒーロー文庫編集部の収蔵庫大公開といったエリア、漫画とアニメ版の「薬屋のひとりごと」紹介コーナーなど、盛りだくさんの内容となっている。

 今回、イベント開催前日にメディア向け内覧会が行なわれたので、その展示内容を紹介する。

前半は文字のシャワー、後半は挿絵イラストで魅せる構成に

 小説「薬屋のひとりごと」は、毒と薬に異常な執着を持つ薬屋の娘・猫猫(マオマオ)と、謎多き美形の宦官・壬氏(ジンシ)を始めとした登場人物たちが、後宮で巻き起こる難事件に巻き込まれながらも解決していくというストーリー。小説とマンガを合わせたシリーズの累計発行部数は2025年11月現在で4,500万部を突破しており、アニメも3期が2026年1月から放映開始、映画が2026年12月に公開となるメディアミックス作品だ。

 本展示会は原作となる小説「薬屋のひとりごと」にスポットライトを当てた、これまでにない構成となっている。その会場に入ると、最初に目にするのは原作小説の一部ページが貼り出された長い回廊。最新刊まで追いかけて読んでいる人であれば、久しぶりに目にする1巻序盤部分を見て、思わず懐かしい気持ちになるかもしれない。天井からは、挿絵の入った見開きページがのれん状態で飾られており、文字だらけのトンネルを歩いているような感覚が味わえる。

会場に入ってすぐの場所には、日向夏氏からの“ごあいさつ”が飾られているのだが、そこには「文字だらけですけど……いいですか? 大丈夫ですか?(後略)」という文章が。実際その通りで、会場内の半分は文字中心の展示になっている
最初の回廊には、右手とのれんに書籍から抜粋した小説のページが飾られている。ジックリと読み進めていくのも楽しい

 回廊を抜けると“薬屋のひとりごと大解剖”と銘打ったコーナーとなり、原作小説を巨大化した本が開いて置かれ、特徴的なエピソードが解説付きで取り上げられている。皇帝の妃候補の1人である梨花妃が、おしろいによって病に伏せった回での鉛白中毒や、宮中内にさまざまな混乱を巻き起こした翠苓が一時的な仮死状態に陥るために飲んだ薬で使われていた曼荼羅華(朝鮮朝顔)の展示、そしてそれらにまつわる解説が掲示されているなど、毒と薬を堪能できるのが面白い。

 その隣では“薬屋の事件簿”として、毒にまつわるエピソードや謎解き関連の原作紹介と、それに合わせて“日向夏先生のひとりごと”と題した、日向夏氏からのコメントを読むこともできる。こちらは、科学とミステリに関した展示になっているといえるだろう。

毒については曼荼羅華やおしろい、参考にした書籍の解説などを見ることができる。それらが、ヒーロー文庫から発売されている小説「薬屋のひとりごと」を模した、巨大な本を開いたところに展示されているのもユニークなところ
謎解きに関しては小説の該当部分だけでなく、そこで執筆者が何を考えていたかという日向夏氏からのコメントも読むことができる。両方を合わせれば、執筆時にどのようにして謎を創りあげていくのかがわかる……かもしれない!?
“作家 日向夏をひもとく”と題したコーナーでは、日向夏氏の机周りをイメージ的に再現してあるほか、日向夏氏のひとりごとというスペースでは、日向夏氏がX(旧Twitter)でつぶやいた“ひとりごと”が吹き出し形式で掲載されているのを読むことができる。左下の“毛毛(マオマオ)散歩”は、ここにスマートフォンのQRコードリーダをかざすと、毛毛のアニメーションを見ることができる。4カ所は会場内にあるが、5つ目は会場から徒歩4分のところにあるLATTEST ミズマチにて開催されているコラボカフェの中に掲示されている
登場人物たちの紹介と相関図も、しのとうこ氏の挿絵版で見ることができる。もちろん、こちらも日向夏氏のコメント付きだ

 同じ場所には、「ご注意ください」と書かれた隔離スペースも用意されている。この奥には原作小説5巻以降の、まだアニメ・コミックスに登場していないシーンが用意されている。そのため、アニメ・コミックス派だからということで原作を読んでいない人が入ってしまうと、ネタバレで大ダメージを喰らってしまうこと間違いなし。筆者も気にせず中に入ってしまい、取材中にもかかわらず「えっ!?」と驚いて大声を出してしまったほどのネタが用意されていた。原作を未読であれば見るかスルーするか、悩むことだろう。

この中には、最新刊までの中から特に印象深いシーンの挿絵が大きく展示されている。アニメやコミックスよりも先の話なので、最新刊まで読んでいるか、ネタバレに寛容な人のみが入るべし

 先へ進むと、“薬屋の調合書(レシピ)”と題して、猫猫の友人・小蘭(シャオラン)が氷の件でトラブルを起こした際に猫猫が作った友情の氷菓(アイス)と、壬氏に「媚薬を作ってくれないか」と言われて調合した“媚薬”チョコレートの創り方が、実際にできあがった写真と共に載っているのを見ることができる。物語で読んだ、“あの味”を再現できるのも魅力の一つ。

レシピ展示の隣には、調合したアイスを美味しそうに味見する小蘭が描かれた挿絵が大きく飾られていた
“イラストレータ しのとうこ画回廊”の途中には、フォトスポットとして野草を摘む猫猫と、通路を歩く壬氏、その従者高順(ガオシュン)をバックに撮影できる場所が用意されている

 続いてのエリアでは、日向夏氏が本展覧会のために書き下ろした完全新作ショートストーリーの冒頭部分を読むことができる。このエピソードは全3部が用意されており、第1部が12月5日から11日、第2部が12日から18日、そして第3部が19日から25日までと、週替わりで順次公開されていく。

 それぞれの全文が掲載されたリーフレットは展示会場出口にて来場者全員に配布されるので、全容が知りたい人は都合3回足を運ぶ必要がある。

冒頭の触り部分が吊り下げられており、読めば先が気になること間違いなし。各部の全文は、出口でもらえるリーフレットに掲載されている

 続いて現われるのは、小説「薬屋のひとりごと」を発行しているヒーロー文庫編集部収蔵の、「薬屋のひとりごと」に関連する各種アイテムが一堂に飾られたスペースだ。2011年から現在までの「薬屋のひとりごと」に関連する年表が書かれていたり、これまでの各種イベントで使われた等身大ポップや世界各国語版「薬屋のひとりごと」も展示されているなど、まさに蔵出し感満載。過去に見損ねたグッズなどがあった人は、思わず小躍りしてしまうかもしれない。

このスペースを見て回れば原作やコミック、アニメだけでなく、開催された各種イベントも知ることができる。タイアップも数多く行なわれてきたことがわかる
作品で一番有名なセリフ「これ、毒です」を、書籍が翻訳された各国語版で見ることもできる。とはいえ、このセリフを使う機会には恵まれたくないが……。なお飾られているイラストは、2022年に国立科学博物館で行なわれた特別展「毒」のために描き下ろされたもの。
収蔵庫エリアを抜けるとコミック・アニメ関連の展示があり、その次が物販スペースとなっている。今回の展示会のために新たに製作されたグッズ約30種類に加えて、その前に取り扱っていたアイテムも販売しているとのことなので、来場前に公式ページでチェックしておきたい。
内覧会開始前には、日向夏氏に飼われているうりぼう“うりりん”を交えてのフォトセッションも行なわれた。撮影時には、あちこちから「かわいい」との声も

原作小説版の魅力を再確認。週替わりの完全新作書き下ろしショートストーリーという嬉しいお土産も

 原作小説をメインとしたことで、オーソドックスな展示会よりは文字が多めの内容となっていたが、有名エピソードについて原作者からのコメントを見られたり、毒や科学についての知識を得られるというのは非常に面白い部分。理系科目が好きな人ならば、そういった面で興味をそそられるのではないだろうかと感じた。

 展示内容としてはコンパクトであるものの、実際に小説を読める回廊があるのはユニークな要素だし、週替わりで完全新作ショートストーリーが読めるというのもファンには嬉しいお知らせ。全体的には“観る”よりも“読む”という方向性なので、たっぷりと時間を確保して来場し、端から端までジックリと読み込むのがオススメの鑑賞方法だ。もれなく回れば、小説の世界をより深く味わえるとともに、来年のアニメ3期と映画もより楽しめることだろう。