特別企画

ありそうでなかった“俺TUEEE”の形! アニメ「片田舎のおっさん、剣聖になる」放送前にコミカライズ版を予習

キャッチーなコンセプトの裏で、おっさん特有の“ほろ苦さ”を感じさせる作品

【TVアニメ「片田舎のおっさん、剣聖になる」】
4月5日 放送開始
放送局:テレビ朝日系全国24局ネット
マンガ「片田舎のおっさん、剣聖になる」1巻

 4月5日より、TVアニメ「片田舎のおっさん、剣聖になる」がテレビ朝日系列ほかにて放送開始となる。本作は、小説投稿サイト「小説家になろう」にて展開されていた、佐賀崎しげる氏による小説「片田舎のおっさん、剣聖になる~ただの田舎の剣術師範だったのに、大成した弟子たちが俺を放ってくれない件~」を源流として、原作に鍋島テツヒロ氏が加わったマンガ版(秋田書店・どこでもヤングチャンピオン掲載)を初アニメ化したもの。

 本作は作品名にもある通り、片田舎で代々続く剣術道場の師範をしていた中年、ベリル・ガーデナントを主人公に、彼が門下生として剣術を教えた弟子たちが各方面で大成し、その弟子たちの働きかけによって思いがけず脚光を浴びていくという内容だ。この記事では、そんな本作のTVアニメ化にあわせ、単行本第6巻までの内容について紹介していく。

【TVアニメ「片田舎のおっさん、剣聖になる」ティザーPV】
マンガ版の第1話より(画像はマンガ版作者の乍藤和樹氏のXより)
スクウェア・エニックスのレーベルSQEXノベルからはライトノベル版も発売されている

突出した実力を持ちながらも異様に低い自己評価。“片田舎のおっさん”が剣聖になるまでの物語

 本作の主人公ベリル・ガーデナントは、片田舎で道場を営む剣術師範の中年男性。親父からは孫の顔を見せてほしいと言われてしまうおっさんである。この世界では騎士や冒険者として生計を立てることが剣士の目標であるが、自分は道場の師範としての道を選び、その生活を受け入れていた。

 そんなある日、弟子として剣術を教えたアリューシア・シトラスが道場にやってくる。彼女は道場を出た後、精鋭を束ねる「レベリオ騎士団」の団長を務めていた。そんなアリューシアはベリルを騎士団の特別指南役として推薦したことを明かし、ベリルとしては「なんで俺が……?」という気持ちを持ちつつも、彼女の依頼を渋々受けることになる、というのが冒頭の展開になっている。

【TVアニメ「片田舎のおっさん、剣聖になる」第3弾PV | 2025.04 ON AIR】

 本作はいわゆる「なろう系」と呼ばれるもので、「舞台が異世界」、「主人公が最強格」といった設定が当てはまる。作中で起こる様々な出来事を介し、主人公・ベリルの揺るぎない実力が描写されていくが、当の本人は何故か田舎道場のいち師範に甘んじようとしていて……? というのが本作最大の謎であり、ユニークなポイントだ。ここで、そんなベリルと彼の弟子たちについての紹介をはさみたい。

・ベリル・ガーデナント
 とある王国の片田舎、生家である道場にて剣術の師範をしている中年男性。剣の腕を磨くなか、子どもの頃は自身の剣で多くの人を助けることを夢見ていたが、今となっては「護身程度の剣を教えられる実力でしかない」と卑下にも近い自己評価を下している。その原因になっている出来事とは……? 王国で輝かしい活躍をする人物たちが同じ師に手ほどきを受けていたという噂によって、「片田舎の剣聖」という名で(本人の知らぬところで)呼ばれていた。

・アリューシア・シトラス
 作中で初めに登場するベリルの弟子で、王国最強の騎士団と名高いレベリオ騎士団の団長。道場にいた頃は見様見真似でベリルの剣技を習得してしまったほどの才女で、ベリルからは早々に教えることがなくなってしまったと評されている。ベリルを心から師とあおぎ、必要以上に自身の腕を低く見積もる彼について歯がゆい想いを秘めている。アリューシアが騎士団の剣術指南役としてベリルを指名したことから、本作の物語が動き出す。

・スレナ・リサンデラ
 アリューシアと同じくベリルの弟子で、ギルドに所属する冒険者。瞬く間に傷を癒やしてしまうドラゴンをひとりで屠った逸話から、ギルドにおける最高ランク・ブラックランクの肩書きを持つ。幼い頃、移動中に魔物に襲われたことから両親を亡くし、ベリルの道場にはなかば拾われる形で門下となった。アリューシアにも引けを取らない実力者。

・クルニ・クルーシエル
 アリューシアが団長を務めるレベリオ騎士団に所属する、ベリルの弟子のひとり。小柄な体格でありながら常人の域を超える怪力の持ち主で、騎士団のムードメーカーでもある。

・フィッセル・ハーベラー
 王国が擁する魔法師団、その若きエースと評されるベリルの弟子。ベリルから指南を受けた剣術と、魔術の才に恵まれたことからそれらを組み合わせた「剣魔法」を使用する。大人しそうな見た目とは裏腹に、本作でも屈指の負けず嫌い。

「出る杭は打たれる」を痛感している現代人、その心の奥底に沈めた感情をくすぐる構造

 キャラクター紹介でも触れた通り、ベリルは「誰かを助けたい」という動機が強い人物として描かれている。誰もが目を見張るほどの実力を持ちながらそれをひけらかすことはなく、物腰は低くお人好し……そんな彼の人柄と実力を敬愛する弟子たちが、王国の各機関の要職に就くほど大成し、不世出の師を世に引っ張り出していく……今までありそうでなかった、いわば“俺TUEEE”の変形としての面白みが本作の大きな特徴だ。

 穿った見方かもしれないが、現代を取り巻く様々な環境によって「出る杭は打たれる」を痛感している人々が、多軸から評価されることで心の奥底に沈めた「それでも万能感を味わいたい」という欲望をくすぐる構造となっており、事実としてそこに惹き込まれる自分もいる。現代人が忘れようとしている、プリミティブな感情に訴えかけるものがある作品だ。

【TVアニメ「片田舎のおっさん、剣聖になる」第1弾PV】

キャッチーなコンセプトの裏で、おっさん特有の“ほろ苦さ”を感じさせる作品

 ベリルはアリューシアに騎士団剣術指南役として引っ張り出された後、冒険者ギルドの依頼で災害に例えられるほど強力な「ネームド」と呼ばれるモンスターを討伐したり、不穏な魔術を研究している向きのある宗教一派との戦いに身を投じるなど、着実にその名を広めつつある。この記事を執筆している3月21日現在ではコミックスが第6巻(第7巻は3月27日に発売)まで刊行されており、その最新エピソードではベリルが自身に近い実力を持つ剣士・シュプールとの邂逅と戦いが描かれる。

 互いの素性を知らず、酒場で出会った2人は、互いの身の上話をこぼす。仕事でしくじり、今は飲んだくれているというシュプールに対し、今の歳になるまで田舎に引きこもっていたことを後ろめたく思っている胸中を吐露するベリル。そのやりとりのなか、シュプールから「剣士には必ず“役目”がある」というセリフが放たれるのだが、これが後に対比される2人のキーワードとなってくる。

作中で初めてベリルに近い実力を持つ剣士として登場し、ベリルとは対象的に描かれるキーキャラクター・シュプール

 作品タイトルにあるキャッチーなコンセプトの裏で、本作は「男には役目があり、それを果たすことができなかった人間はどうなるのか」というテーマを描こうとしている……そんな意図を感じるエピソードだった。

 アニメは4月5日よりテレビ朝日系全国24局ネット"IMAnimation"枠にて毎週土曜日23時30分に放送開始。また、配信はAmazon Prime Videoにて4月6日0時より独占配信が行なわれる。上記で紹介したようなおっさん特有の“ほろ苦さ”を感じさせる本作が、アニメではどう我々を楽しませてくれるのが目が離せない。

ヤンチャンWebの「片田舎のおっさん、剣聖になる~ただの田舎の剣術師範だったのに、大成した弟子たちが俺を放ってくれない件~」のページ

アニメ「片田舎のおっさん、剣聖になる」のキービジュアル