特別企画
「よつばと!」4年ぶりの新刊発売までもうすぐ! 無邪気さ、愛情深さ、傍若無人さ、絵の力……その魅力を改めてお届け
コミックス16巻ではよつばの前に究極の刺客現わる!?
2025年2月25日 00:00
- 【「よつばと!」16巻】
- 2月26日 発売予定
- 価格:847円
あずまきよひこ氏によるマンガ「よつばと!」のコミックス最新16巻が2月26日に発売される。15巻が発売されたのが2021年2月27日。本作はKADOKAWAの「月刊コミック電撃大王」にて連載されているが、単行本派の人は4年ぶりに「よつば」たちに出会えるわけだ。
「よつばと!」の英語表記は「YOTSUBA&!」であり、5歳の少女「よつば」と、その周囲の子どもや大人たちの日常が丁寧に描かれている。第1話は夏休み前日であり、15巻の第99話時点で「正月まであと1カ月ぐらい」と語られるシーンがあるため、(単行本の)作中では約4カ月しか経過していない。「よつばと!」の連載がスタートしたのは「月刊コミック電撃大王」2003年3月号。我々は22年間、よつばの4カ月を見守ってきたことになる。
今回は「よつばと!」16巻発売に合わせて、改めて本作の魅力をお伝えしたいと思う。
「よつばと!」のこれまでのストーリー
「よつばと!」は前述のとおり、よつばと、その周囲の人々が織りなす日常を描いた作品だ。主要人物は「よつば(小岩井よつば)」、「とーちゃん(小岩井葉介)」。隣の家に住む「えな(綾瀬恵那)」、「ふうか(綾瀬風香)」、「あさぎ(綾瀬あさぎ)」の3姉妹。その両親の「かーちゃん」と「おっちゃん」。そして、ひんぱんに小岩井家に訪れる、とーちゃんの友達「ジャンボ」こと「竹田隆」だ。
また、とーちゃんの後輩「やんだ」、えなの同級生「みうら(早坂みうら)」、あさぎと同じ大学に通う「とら(虎子)」、ふうかの同級生「しまうー(日渡)」も登場回数が多く、後半に登場してきたとーちゃんの実母「ばーちゃん」、妹の「こはるこ(小岩井小春子)」も重要な人物である。
このほかにもみうらの母親、坂田自転車店店主「ひげもじゃ」、よつばの砂場友達「みーちゃん」や、うどん屋店主とその妻などが登場しているが、15巻も続いている作品としてはキャラクターが非常に少ないと言える。
物語は基本的に1話完結。ただし、第14話と第15話の「おみやげ」や、第20話の「花火大会?」と「花火大会!」など一部複数話構成の回もある。また、明確にタイトルで複数話とされていなくても、話が続いていることも多い。
作中最大のイベントは「ひっこし」。15巻まででそれに次ぐ大きなイベントは、花火大会、牧場訪問、気球見物、キャンプ、祖母来訪、東京のホテルでランチ……などが挙げられる。ほかの回は、我々から見れば本当に些細な出来事をよつばが体験するというエピソードだ。しかし、規格外に感受性豊かなよつばは、驚くほどの喜怒哀楽を見せてくれる。といっても、「怒」、「哀」は少ないし、そのあとには「喜」、「楽」が待っているのでご安心を。
「よつばと!」の物語を語る上で欠かせないのが、よつばととーちゃんが実の親子ではないということ。この設定は第7話「おおあめ」でとーちゃんがふうかに「外国で拾って、育てることになった」と明確に明かされている。
しかし、よつば自身がこのことを知っているのかどうかは、作中では明確に描かれていない。よつばは昔「ずっとずっと左の島」に住んでいたと語っているが、とーちゃんはよつばに最初に会ったのは「赤ちゃんみたいな時」と言っている。彼女が実の親子ではないことを知っている可能性は低いと考えられる。
無邪気さ、愛情深さ、そして絵の力
本作最大の魅力はよつばの無邪気さだ。よつばは徹底的に空気を読まない……というより空気を読むことをまだ知らない。第92話「ヨガ」では、ヨガ教室に訪れ、見知らぬお姉さんたちに挨拶したあと、更衣室に入ろうとするふうかとしまうーに「みんな ふとったから きたのかな?」と口走ったりしてしまう。
もちろんよつばには悪意はまったくなく、思い浮かんだ疑問をそのまま口に出しているだけ。この瞬間にヨガ教室に流れた微妙な空気はなんとも言えない面白さだ。
よつばはある意味傍若無人だが、その一方で周囲の人のことが大好きだ。第25話「せいしゅん」では、ふうかから失恋について聞いているとき、「失恋」のことを「とーちゃんは よつばちゃんのこと 好きじゃなかった」という例えで説明されただけで、泣いてしまいそうになった。それだけとーちゃんのことを慕っているわけだ。
個人的には第89話「くろいおばけ」で、よつばが「おみやげなんか なくてもいい」と語るシーンが「よつばと!」作中で一番泣けて、彼女の愛情深さが心に沁みた。ここは詳しく説明するべきではないと思うので、ぜひご自身でじっくりと味わってほしい。
作品全体の見どころとしては、絶対に絵の魅力ははずせない。まず、デフォルメされた絵であっても表情の変化が絶妙だ。ほんのわずかな描線の違いで喜怒哀楽の変化、そしてそれぞれの大きさが表現されている。1コマも逃さずに見るというよりも、1コマを味わい尽くすように読みたくなる絵だ。
また、1コマ1コマが背景も含めて緻密に描かれており、釣り、祭り、気球などなどあらゆるイベントの解像度が高い。どのイベントもあずまきよひこ氏が実際に体験して、ストーリーや、絵として再現しているのだと思う。特に大きいコマについては額に入れて飾りたいぐらいだ。
小学校に現われる究極の刺客とは? 16巻の注目ポイント
15巻の第98話「くつした」、第99話「バナナジュース」、第100話「いし」までは通常回だが、第101話「しけんべんきょう」、第102話「えのぐ」、第103話「ほん」、第104話「ランドセル」では、作中の翌年に「よつば」が小学校に入学することが描かれている。
えなやみうらと同じ学校に通うことになるのだろうが、意外なことに15巻までにその小学校は登場していない。しかし16巻公式紹介文には「そして逆上がりの練習に訪れた小学校の校庭で、よつばの前に現れた究極の刺客の正体とは!?」と記載されており、新たな“キャラクター”が登場するようだ。どのような出会い、もしくは対決が待っているのか、単行本派の筆者は本当に楽しみにしている。
16巻以降は物語が大きく動いていく?
「よつばと!」16巻の発売は、私を含めたファンにとって待ちに待った瞬間だ。15巻の第104話「ランドセル」では、「とーちゃん」が父親としての感情を持ったときのエピソードが描かれ、また前述のとおり、よつばの小学校入学が控えている。16巻以降は物語が大きく動いていくのかもしれない。
既読の方に私がいまさら購入を勧める言葉はない。すでに15巻まで読んでいるファンは、本記事を読むまでもなくすでに16巻を予約していることだろう。だからこそ、「よつばと!」未読の方は、この機会にぜひその魅力に触れてほしい。なにしろ、16冊を一気に読める至福の時間を過ごせるのだ。本記事がそのきっかけとなれば幸いだ。
なお、コミックス最新刊の発売に合わせて、東京都の「新宿マルイ アネックス」にて2月22日より「よつばと!ミニ原画展&ショップ」が開催される。個人的にもぜひ訪れたいと考えている。
(C)KIYOHIKO AZUMA/YOTUBA SUTAZIO