特別企画
「もやしもん」続編が始まる前に! “菌”と農大生たちによる異色の物語をイチから振り返る
シュールストレミング並みに強烈なエピソードの数々
2024年11月24日 00:00
- 【もやしもん】
- 既刊13巻(講談社)
- 11月25日より続編「もやしもん+(プラス)」連載開始
石川雅之氏のマンガ「もやしもん」の続編となる「もやしもん+(プラス)」が、11月25日より「アフタヌーン」2025年1月号にて連載開始となる。それに先駆け、10月25日発売の「アフタヌーン」12月号にて特別読み切りが掲載された。
同作は“菌”をめぐる大学生たちの青春ストーリーで、単行本の売上が累計800万部を超えているヒット作。TVアニメ化のほか、実写ドラマ化も果たしている。
今回はそんな同作の魅力や名エピソードの数々、続編の見どころについて詳しく紹介。ふたたび物語が幕を開けるこの絶好の機会に、あらためて作品世界をおさらいしておきたい。
「もやしもん」ってどんな物語? ゆるキャラのような“菌”との交流
同作の連載が始まったのは、2004年のこと。当初は「イブニング」にて掲載されていたが、その後「月刊モーニング・ツー」に移籍し、2014年に完結を迎えた。
作品の舞台となるのは東京にある「某農大」で、物語は主人公である種麹屋(もやし屋)の次男・沢木直保の入学式から始まる。沢木は“菌”を肉眼で見ることができる能力の持ち主で、個性派揃いの大学キャンパスにて次々とトラブルに巻き込まれていく……。
同作に登場する菌は沢木の目を通して描写されたものなので、生々しい見た目ではなく、かわいらしくデフォルメされているのが特徴。ニホンコウジカビの「A.オリゼー」や青カビの「P.クリソゲヌム」、はたまた納豆菌としてお馴染み「B.ナットー」や松茸を作る「T.マツタケ」まで、さまざまな種類が存在する。それぞれ見た目や性格にも違いがあり、連載当時は盛んにグッズ展開が行なわれていた。
その一方、人間と友好的な関係を築ける菌ばかりではない。たとえば、日本酒をダメにしてしまう火落ち菌や、人体の脅威となる「O-157」や「ボツリヌス菌」なども登場する。とくに畜産科の先輩が作ったご飯に「O-157」が付いていた……というエピソードでは、菌たちの「かもして ころすぞ」という物騒すぎる言葉が飛び出したことで読者に衝撃を与えた。
そんな世界観において、沢木は菌を見る力を活かして、食中毒の被害を防いだり、女性の足に水虫の原因となる白癬菌がいることに気づいてアドバイスしたりと、さまざまな活躍を繰り広げる。
沢木の能力はそれだけにとどまらず、菌と会話して意思疎通を図ることも可能だ。とくに実家で長年共に過ごしてきたオリゼーたちにはよく懐かれている。菌がたんなる題材ではなく、存在感の強い登場人物となっていることが、同作ならではの面白さと言えるだろう。
農大ならでは? トラブルと発酵食品だらけのキャンパスライフ
作中で描かれるのは、沢木が某農大に入学してから1年間の物語。入学式から始まり、2年生に進学するところで終了を迎えている。その時間はきわめて濃厚で、いくつもの衝撃的な出来事が繰り広げられた。
まず入学初日には、変わり者の農学部教授・樹慶蔵が登場。地中に埋めたアザラシの体内に海鳥を詰め込み、発酵させるという食品「キビヤック」にかぶりつく様子が描かれた。しかもその食べ方は海鳥の尾羽根をちぎり、肛門から直接内容物をすするというもので、当然ながら沢木たちを唖然とさせた。
さらに樹教授は別の日、エイの発酵刺し身「ホンオフェ」を持ち込んで沢木たちに提供するのだが、こちらもインパクト絶大。“世界で2番目に臭う発酵食品”だという独特の臭気で、阿鼻叫喚の図を作り出した。
ほかにも同作では古今東西からさまざまな発酵食品が登場し、その都度詳しい解説が挟まれるため、トリビア的な面白さを味わうことができるだろう。とくに日本酒造りに関するエピソードでは、日本酒における菌の働きから日本酒業界の裏事情まで、マニアックな情報が色々と明かされていく。
また農大ならではの体験は食べ物だけでなく、沢木は入学からわずか2日目にして、牛の卵胞の大きさを調べるため、肛門から腕を入れる……という洗礼を浴びることに。そして仲間たちと一丸となって行なう日本酒造りや、学生たちが一定期間“独立国”となった農大内に閉じ込められる「春祭」など、一風変わったイベントが次々と巻き起こる。
他方で、一般的な大学生らしいキャンパスライフの様子がしっかりと描かれているのも大きな魅力。不潔ではあるものの賑やかで楽しい寮生活や、ミスコンの「ミス農大落とし」など……。濃密な青春の日々を駆け抜けていく沢木たちの姿はとても眩しい。
ゴスロリにボンデージ……クセ者ぞろいの登場人物たち
ところで同作において、最大の魅力といってもいいのが菌たちに負けず劣らず個性的なキャラクターたちだ。樹教授についてはすでに触れたので省略するとして、そのほかの主要人物を振り返っておこう。
まずは沢木の幼馴染みである酒蔵の息子・結城蛍。中性的なルックスで、とある理由からゴスロリファッションで通学し始めるのだが、再会した際に沢木にいきなりキスをするなど、ミステリアスな行動を連発する。本人は沢木への恋愛感情を否定しているものの、周囲からはまったくそう思われておらず、菌たちも2人が“一線”を超えることを応援していたほどだ。
入学直後から親しくなる先輩の美里薫と川浜拓馬は、“ダメ大学生”を体現するような2人組。なにせ初登場シーンから大学内で日本酒造りを試み、タンクをひっくり返す大事故を巻き起こしていた。当然この行為は酒類の密造にあたるので、ヤンチャにもほどがある。
しかし不真面目なだけでなく、彼らなりの知的探求心を持ち合わせていて、当初敬遠されていた樹教授からもすぐに認められるのだった。
そして樹ゼミに所属する大学院生・長谷川遥は、ボンデージファッションに白衣という独特の姿が特徴。Sっ気の強い性格だが、実は許婚が決まっていたほどの良家のお嬢様というギャップを秘めていた。
作中では紆余曲折を経て、犬猿の仲だった美里とのロマンスを育んでいくことに。とはいえ基本的に素直ではない性格なので、図らずもツンデレ的な雰囲気を醸し出してしまっている。
そのほか、バニーガール姿に定評がある同級生の及川葉月や元ミス農大の“残念美人”武藤葵、年下の狂犬女子・西野円など、ひと癖もふた癖もある登場人物ばかりだ。
沢木をめぐる三角関係の行方は? 続編で期待したいポイント
それでは続編となる「もやしもん+」は、どのような展開に期待できるだろうか。
まず気になるのが、登場人物たちの恋模様。作中終盤では、沢木のことを「ダーリン」と呼んで結婚しようとする西野が登場したことをきっかけに、蛍を含む三角関係のような構図が生まれていた。
しかし結局、西野との関係は色恋には発展せず、蛍も沢木への恋愛感情を否定する形で終わっている。ただ、蛍の言動はいつも謎めいているため、それが真実だったかどうかは分からない。西野からも本心を“偽装”しているのではないかと直球で突っ込まれていたほどだ。続編では、そうしてうやむやになったままの人間関係にあらためて焦点が当たることを期待したい。
また、美里と長谷川の関係性についても気になるところ。長谷川は今は恋愛するつもりがないといいつつ、美里が大学を卒業するまで“仮予約”しておくと宣言していた。とはいえこのまま平穏に交際まで進んでいくとも思えないので、なにか一波乱が巻き起こるかもしれない。
その一方、「もやしもん」といえばマニアックな菌や発酵食品に関する雑学などが見どころ。続編では前作の完結から約10年を経て、令和最新バージョンにアップデートされた知識が盛り込まれるのではないだろうか。とりわけ日本酒や酒蔵に関する状況は大きく変わっているはずなので、より一層読み応えのある内容となりそうだ。
ちなみに公式の告知によると、「もやしもん+」は前作最終話で描かれた新年度「春祭」の続きから幕を開けるとのこと。つまり時系列的に地続きの話となるのだろう。
【特報】アイツらが帰ってくる! 石川雅之『もやしもん+(プラス)』、11月25日(月)発売の「アフタヌーン」1月号から連載開始決定! 明日発売の12月号には特別読み切りを掲載!
— アフタヌーン (@afternoon_manga)October 24, 2024
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個性豊かなキャラクターたちが巻き起こすトラブルに、甘酸っぱい青春模様、そして面白おかしく描写される菌たちの世界……。「もやしもん」は、たんなる雑学マンガの枠に収まらない魅力に満ちた作品だ。
続編ではどんなパワーアップを果たすことになるのか、沢木たちの新たなキャンパスライフが描かれるのが待ち遠しい。
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