特別企画

【今日の読み切り】「習作『秋の窓』」

みどりとあかね、双子の2人は物の見え方が違っていた

【「習作「秋の窓」】

著者:福浪優子

KADOKAWA

 木戸あかねは、幼い頃から絵を描くのが好きだった。だが、自分が見ている世界の色が、ほかの人と違うと知ってから、間違った色で絵を描くことが怖くなってしまった。しかし、高校の文化祭で、あかねは劇の裏方として背景に使う秋の絵を描くことになる。

 「習作『秋の窓』」は、ハルタオルタに掲載された「あかねさす柘榴の都」の作者福浪優氏の短編漫画。P型の色覚特性をもつあかねは、見え方が人と違うことを指摘されるのが怖くて、次第に自分の見ている世界を表現することを恐れるようになっている。

 人と違うということは「個性」として尊重される一方、当事者にとってはストレスでもある。人間は千差万別で、1人として同じ人間はいない。そう理解していても、人と違うことが怖くて、個性を隠して「普通」の人として暮らしている。そういう経験は、誰もが何かしら思い当たるのではないだろうか。

 本作は、モノクロの中に時折鮮烈なカラーページを使うことによって、人と違うことを恐れる少女が感じる苦悩や、自分を表現していく仮定を鮮烈に描き出している。本当の自分を表現することの難しさは、色覚に限らない。そんな問題提起をしつつも、青春時代のワンシーンにさわやかな気持ちになれる作品だ。

【あらすじ】

 「絵はもう 人には見せない」。そう決めていた少女は、ひょんなことからクラス演劇の背景を描く役目を任されてしまう。

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