特別企画

【今日の読み切り】「夜を泳ぐ魚たちは」

寂しさが消えない、だから彼女は今日もお金で性を売る

【夜を泳ぐ魚たちは】

著者:藤原ハル

講談社

 トー横に集まる少女たち。仲間のように群れながらも、こころは通じることなく孤独を感じている。そんな少女のひとり、えりかは不思議なパパ活の相手に出会う。ヤハタブンジと名乗ったその高齢の男性は、えりかを抱こうとはせず、約束した時間の中でずっと彼女に触れていた。

 「夜を泳ぐ魚たちは」は、藤原ハル氏の短編漫画。「ちばてつや賞ヤング部門第90回大賞」の受賞作だ。パパ活のきわどいシーンも克明に描写しつつ、無機質な黒塗りで大切な部分はすべて覆い隠す。それがまた、汚い部分はすべて見ないことにすることで、まるでそれが存在しないかのようにふるまう現代の歪みにも思える。

 パパ活、裏表のある配信者、ホスト、オーバードーズなど事件や炎上騒ぎが起きるたびにネットをにぎわすキーワードが、本作の根幹をなしており、非常に現代的で社会的な内容となっている。

 日々を過ごしながら、まるで生きているという感じがしない、乾ききったえりかが、死の迫るブンジとの関係の中からやっと自分の生を取り戻していく。情感があり、読み終わった後も深く尾を引く作品だ。

【あらすじ】

 えりかはトー横に溜まっている女の子。スマホで呼び出された相手とパパ活をしてお金を稼いでいる。だが、その日えりかを呼び出した相手、70歳近い高齢の男性ブンジは、セックスを求めず彼女にただ触れることを望んだ……。

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