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本日放送「岸辺露伴は動かない」第9話「密漁海岸」の見どころは? 実写化困難と言われた“取り扱い注意”のエピソード

高橋一生主演の「ジョジョ」スピンオフが第4期に突入!

【ドラマ「岸辺露伴は動かない」第9話「密漁海岸」】

放送局:NHK総合

放送時間:5月10日22時~

※NHK BSP4Kにて先行放送あり

※放送後1週間は見逃し配信あり

 実写ドラマ「岸辺露伴は動かない」の第9話「密漁海岸」が、NHK総合にて5月10日22時より放送される。

 「岸辺露伴は動かない」は漫画家の荒木飛呂彦氏が手掛ける「ジョジョの奇妙な冒険」(集英社)のスピンオフマンガが原作。2020年から実写ドラマシリーズの放送が始まり、今に至るまで根強い人気を誇っている。

 今回はそんなドラマ版の最新エピソード「密漁海岸」の放送に合わせて、作品の魅力や見どころについて詳しく紹介していきたい。

【岸辺露伴は動かない PR動画】
【STORY】

露伴邸の近くにひっそりとオープンしたイタリアンレストラン。
その店を訪れた露伴と京香が出会ったのは、供する料理で客の体の悪いところを改善させる不思議な力を持ったシェフのトニオ・トラサルディ(Alfredo Chiarenzaさん)だった。
トニオは露伴に、どんな病気でも治してしまうという伝説のヒョウガラクロアワビを手に入れようと密漁を持ちかける。実はトニオには、重い病気を抱えたフィアンセ・森嶋初音(蓮佛美沙子さん)がいたのだ。

原作もドラマも独創的な「岸辺露伴は動かない」

 まず作品の概要についておさらいしておくと、「岸辺露伴は動かない」は「ジョジョの奇妙な冒険」の第4部「ダイヤモンドは砕けない」に登場するキャラクター・岸辺露伴(きしべ ろはん)を主人公としたストーリーだ。

「岸辺露伴は動かない」第1期キービジュアル

 作中での露伴といえば、“良いマンガを書く”という目的のために猪突猛進で、あらゆることを自らの身で体験しようとする狂気の漫画家。スピンオフでもその変人っぷりを示しており、とあるエピソードではマンガの取材に必要だからという理由で、山を6つ買い、破産して家すらも失ってしまう姿が描かれていた。

 それ以外にも、ことあるごとに予想を裏切る行動を見せてくるのが特徴で、少年マンガの王道とは真逆を突き進むような「常人には理解も共感もできない主人公」という立ち位置を確立している。

「ジョジョの奇妙な冒険」第4部「ダイヤモンドは砕けない」はコミックス29巻より47巻にかけて描かれる。露伴はこの部の登場キャラクターであり、35巻では表紙を飾っている

 ただ、本作の露伴はどちらかといえば、主人公というより“語り部”の役割に近い。スタンドバトルをメインで描くマンガ本編とは違い、実写ドラマではどこにでもいる普通の人間たちが物語の中心となっているからだ。だからこそ、露伴の設定や「ジョジョの奇妙な冒険」の世界観を知らない人でも楽しめる作品と言えるだろう。

 若い頃に見捨てた浮浪者から「幸せの絶頂を迎えた時に復讐しにくる」と宣告された男、25歳の時に土地を購入すると大富豪になれる村など、奇妙な設定のオンパレードで、荒木氏による独創的なストーリーを堪能できる。

 そんな本作の実写版は、現在までTVドラマが3期にわたって制作されており、2023年5月には初の劇場版「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」も公開された。いずれも俳優・高橋一生さんが主演を務めており、クセの強い露伴の人物像を巧みに表現しているのが大きな魅力だ。

「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」のメインビジュアル

 実写版の魅力はそれだけではなく、原作ではチョイ役だった露伴の担当編集者・泉京香(飯豊まりえさん)が、“愛すべき相棒”ポジションへと昇格しているところも大きなポイント。荒木氏が原作に登場させた際、「傑作の出来」と自ら評した絶妙なキャラクター性が実写でも再現されており、露伴とのユーモラスなやりとりを生んでいる。

「密漁海岸」とはどんな話なのか

 そんななかで今回実写化の題材となった「密漁海岸」は、元々「週刊少年ジャンプ」2013年46号に掲載されたエピソードで、マンガ「岸辺露伴は動かない」単行本の1巻に収録されている。

マンガ「岸辺露伴は動かない」1巻

 主な登場人物は、露伴と料理人のトニオ・トラサルディー。杜王町でイタリアンレストランを営むトニオは、ある日露伴に“アワビ”の密漁を持ち掛ける。ヒョウガラ列岩という場所で、世界中のどこにもない特別なクロアワビを獲れるらしく、何としてでも手に入れたいと訴えかけるのだった。

 このアワビにはどんな秘密があるのか、そして露伴とトニオは無事に密漁を成功させられるのか……。謎とスリルに満ちたストーリーだが、当然ながらそこには想像の斜め上を行くような展開が待ち受けている。

 なお、トニオは元々本編の4部に出てきたキャラクター。「密漁海岸」での露伴との関係は“友人”にあたり、少なからず絆を感じさせる描き方となっていた。しかしドラマ版「密漁海岸」は原作とは設定が異なっているようで、露伴邸の近くにオープンしたトニオのイタリアンレストランに露伴と京香が訪れるところから物語が動き出していく。

 そこでトニオのキャラクター性や“不思議な力”がいかにして描かれるのか、原作ファンはぜひとも注目してみてほしい。

「密漁海岸」は実写化が難しい?

 そのほかにもドラマ版「密漁海岸」には、期待したい点がいろいろとある。そもそもこのエピソードは、「岸辺露伴は動かない」のなかでも、「実写化が難しい」と言われることが多かった。

 その理由は、露伴たちが“密漁”という疑いようのない犯罪行為に手を染める話であるため。原作では、アワビの密漁は時代が時代であれば極刑レベルの大罪だったという逸話すら語られていた。ただし、たんに露伴たちをならず者として描いているわけではなく、「大罪だと知りながらなお決行する」という決断こそが重要になっている。

 世間からどれだけズレても自分の価値観を貫くという意味で、どこまでも“露伴らしい”行動が見られるエピソードでもあり、それを象徴する「だから気に入った」という名ゼリフが出てくることも有名だ。

 このセリフはドラマ版でも変わっておらず、予告映像でもしっかり使われていた。いかにして“密漁に手を染める露伴”を描いてくれるのか、この点が1つの大きな見どころと言えるだろう。

YouTubeの「[岸辺露伴は動かない] シリーズ最新作「密漁海岸」1分PR
※こちらの動画では45秒あたりから「だから気に入った」という名ゼリフが確認できる

 また、もう1つの実写化の難しさとして異色のバトルシーン、アワビの密漁にちなんだ海中での死闘が繰り広げられることも挙げられる。原作ではマンガならではの表現によって、その戦いを迫力たっぷりに描き出していたが、ドラマではどのように再現されるのか気になるところだ。

 そのほか、原作ではこの話で登場していなかった京香がトニオのレストランに付いてくるという相違点もあるため、ドラマ版ならではの新たな名シーンが生まれる可能性もあるかもしれない。

 原作ファンもそうでない人も楽しめるよう、さまざまな工夫が凝らされているドラマ版「岸辺露伴は動かない」。最新エピソードの「密漁海岸」がどんな名作に仕上がるのか、放送を楽しみに待とう。