特別企画

「【推しの子】」連載4周年! 最新14巻発売&TVアニメ2期開始直前に魅力を改めて振り返る

新しい王道! 多層構造の大ヒットの要因を紐解く

【推しの子】

2020年4月23日 連載開始

 赤坂アカ氏原作、横槍メンゴ氏作画によるマンガ「【推しの子】」は、2020年4月23日発売の「週刊ヤングジャンプ」21号(集英社)で連載が開始された。翌週にはWeb版「少年ジャンプ+」でも配信がスタート。2020年7月17日に第1巻が発売された単行本は、翌2021年に単行本3巻まで刊行、マンガ賞各賞に取りあげられ、2022年には「講談社漫画賞」総合部門にノミネートされた。単行本は最新14巻が4月18日に発売され、シリーズ累計は1,650万部を突破している。

 また、2023年4月に万を持してTVアニメ版の放送が開始されるとブームが到来。YOASOBIによる主題歌「アイドル」は世界配信ランキングで3冠を達成。YOASOBIは海外の音楽フェスや音楽番組に出演、世界的アーティストであるColdplay、NewJeansの東京ドーム公演にゲストで登場、日米首脳会談にゲストとして招かれるなど、一躍世界のトップアーティストに躍り出た。また、CD、BDなどアニメ関連商品のみならず、業種を横断したコラボグッズや製品が発売される大ヒット作品となった。

 TVアニメ2期はこの7月から放送されることが発表され、今冬には実写化されることも決定している。本稿では、今後益々盛り上がっていくことが予想される「【推しの子】」について連載4周年を期に改めてストーリー、キャラクターを紹介し、面白さと大ヒットの要因を掘り下げていく。

【YOASOBI「アイドル」 Official Music Video】
主題歌は「アイドル」のMVは4.6億再生を突破
コミックス14巻
TVアニメ「【推しの子】」オリジナルサウンドトラック
タマノイ酢のすし酢「すしのこ」は発売以来同じデザインだったパッケ-ジをコラボに合わせ61年目にして初めて変更する力の入れよう
こちらはTVアニメ「【推しの子】」第2期ティザービジュアル第2弾

「推しの子」の、先の読めない、息をもつかせぬストーリーを振り返る

 ここからは本作冒頭の物語について紹介していく。第1章の幼年期編は宮崎県の片田舎にある病院で始まる。本作は様々なキャラクターの視点でストーリーが展開していくが、第1話は産婦人科医師「ゴロー」の視点で描かれる。

 ゴローは、難病との闘病の末に12歳でこの世を去った少女「さりな」の影響で、アイドルグループ「B小町」不動のセンター「星野アイ」を激推ししている。

 ある日、ゴローの元に16歳の未婚の妊婦が訪れ、物語は急展開する。その妊婦が星野アイだと即座に気付いたゴローだったが、医師として平静を装う。しかしふとしたキッカケで、ゴローは星野アイに正体を知っていることを悟られる。ゴローの内心の葛藤を見透かした様に「嘘はとびきりの愛」と喝破した星野アイは、無事予定日を迎える。

 ゴローは、星野アイのストーカーによって命を落とすが「今死ねば、ワンチャン推しの子に転生できる」というアイドルオタクの願望が具現化し、星野アイの双子の子供の兄に生まれ変わる。

 そして妹の星野ルビーは、夭逝した「さりな」の生まれ変わりだった。転生の事実に戸惑いながらも、推しのアイドルに「オギャる」(甘える)生活を堪能するゴローこと星野アクアと、さりなこと星野ルビー。成長し、2人はB小町が所属する苺プロダクションの社長の子を装ってアイの現場へ同行するようになる。そして2人は生前の記憶によって、星野アイがアイドルとしてブレークするキッカケを作る。

 さらに星野アクアは母・星野アイの撮影現場で見染められ、映画出演。ゴローの知力を活かしたチートなひらめきで、天才子役有馬かなを圧倒する演技を見せる。一方病弱だった元の記憶の恐怖で運動を避けてきた星野ルビーは、母・星野アイの助言で身体を動かす喜びを得る。

 そして不動のセンター・星野アイに牽引され、B小町は遂に苺プロダクション悲願のドーム単独進出を決める。

 星野アイ、星野アクア、星野ルビー、苺プロダクション、B小町メンバー、皆の願いが叶うドーム公演当日。星野アイの元へ、かつてゴローを襲ったストーカーが再び訪れる…凶刃に倒れた星野アイは、ストーカーを愛を以て悔悛させ、星野アクアと星野ルビーに夢を託すのだった……。

【【漫画】『【推しの子】』 恋愛リアリティショー編モーションコミック【ヤングジャンプ連載】】

 ここまでが、単行本1巻で描かれる「幼年期編」のストーリーで、アニメ版第1話は放送枠を拡大して一気に描ききった。

 アイドルの妊娠出産、ゴローの死という衝撃的な出来事から、子どもへの転生と目まぐるしく変化、星野アイの死と、その謎を解くミステリー要素が加わる。これでもかと「フック」が盛り込まれた第1巻、第1章となっている。先が読めないジェットコースターのような導入部で、先を読み進めずにはいられない中毒性がある。この後の展開への“引き”という意味では、これ以上無い見事な構成と言えるだろう。

 そして第2巻から始まる第2章「芸能界編」からは、時間軸が大きく動き、星野アイの子ども2人は大きく成長。母の無念を晴らそうと誓った星野アクアと、アイドルを目指す星野ルビーが芸能科のある高校へ進学、元天才子役として活躍していた有馬かなと再会。星野アクアの視点で、星野アイの死の真相を探るため、芸能活動に身を投じていく様子が描かれる。一方で星野ルビーが苺プロダクションへ所属してアイドルを目指すようになり、新生B小町の活動も物語の大きな軸となっていく。現在は第9章「映画編」で物語に大きな区切りが付けられようとしている。

 なお、2巻以降に展開されるストーリーは大まかにこのようになっている。

・第3章恋愛リアリティーショー編 第3巻~4巻
・第4章 ファーストステージ編 第4巻
 (※TVアニメ1期は第4章までを描いた)
・第5章 2.5次元舞台編 第5巻~第7巻
・第6章 プライベート編 第7巻~第9巻
・第7章 中堅編 第9巻~第10巻
・第8章 スキャンダル編 第11巻
・第9章 映画編 第11巻~

【【漫画】『【推しの子】』映画編 PV【12巻発売記念】【ヤングジャンプ連載】】

登場キャラクター

 2世代のアイドル・芸能ドラマでもある「【推しの子】」は、多彩なキャラクターによる群像劇の側面も持つ。全員は紹介しきれないので、公式サイトで大きく取りあげられている6人をピックアップしてみた。

星野アイ

 第1巻「幼年期編」で物語から姿を消すが、登場人物達の思い出に残り続けている鮮烈な存在感は、劇中にずっと漂い続けている。登場シーンは限られているが、前掲の「嘘はとびきりの愛」など、名台詞、名場面は多い。

 幼少期からアイドルデビューまでの生い立ちや、交際相手は誰だったのか、さらに「映画編」では生前のメッセージDVDの存在が明らかになるなど、新しい情報も徐々に明らかになってくる。

 「人は肉体の死と忘れられた時、2度死ぬ」と言われるが、劇中の“星野アイは未だに生き続けている”と言えるだろう。

星野アクア/ゴロー

 本名は愛久愛海(アクアマリン)というキラキラネーム。国立医大を卒業後中年の産婦人科医師だったゴローの記憶を持ったまま転生した俺TUEEE系キャラであり、星野アイとの悲劇的な死別を経て復讐の鬼と化した。

 同時に星野アイの遺言を気に掛け、才能の無さを嘆きながら役者の道を模索する。

 妹である星野ルビー、恋愛リアリティショーでの有馬かななど、その知識と思考力の高さで多く人物を救ってきた。一方で、非常に客観的に自分や他者を見る視線を合わせ持ち、冷酷とも言える一面を覗かせる場面も多い。星野アクア視点の場面は多く、本作の主人公とも言える。

星野ルビー/さりな

 前世では星野アイの熱烈なファンで、転生後の幼少期は特権的地位を利用してドルオタ垂涎の授乳を貪り、バブみを謳歌した。最愛の母であり、推しの死に対しショックを受けながらも、前向きに、遺言でもあるアイドルを目指す。

 苺プロダクションでB小町を再始動させ、センターの座をインフルエンサーMEMちょと争うも、その歌唱力の低さから先輩の有馬かなに譲ることとなった。兄・アクアとの共演をキッカケに大ブレークし、タレントとして多忙な日々を送る。

有馬かな

 幼少期編では、星野アイ・星野アクアと共演した天才子役。こまっしゃくれた子役として星野兄妹の憎悪の対象となったが、第2章では高校の先輩となり「フリーの元天才子役」という自虐のポジションで再登場。星野アクアへの恋心を利用されて苺プロダクション入りし、歌唱力を買われて新生B小町のセンターを務める。初ステージでは自身の人気の無さに心が折れかかるが、星野アクアの振る1本のサイリウムの白い光で踏みとどまった。

 「10秒で泣ける」を「重曹で泣ける」と間違えるネタが元で実際に「重曹」とコラボ、「すしのこ」のイメージキャラクターになるなど、劇中の元子役タレントのイメージとオーバーラップするように企業受けが良い。

黒川あかね

 恋愛リアリティショー編で登場した、天才俳優。生真面目な性格ゆえ、番組では空回りし、ネットリンチの対象となった。星野アクアに窮地を救われ立ち直ると仕事上の恋人関係に。演じる対象を徹底的にリサーチし、自身に投影・憑依させるタイプの努力型でもある。星野アイの思考をインプットして星野アクアを驚かせた。

 幼少期、有馬かなに憧れて子役デビューしたが、現在は星野アクアを挟んでライバル関係となる。

MEMちょ

 恋愛リアリティショー編で星野アクア、黒川あかねと共演した、人気インフルエンサー。ネットでのバズリ方を熟知した、まさに今時のタレント。元はアイドルを目指し、家庭の事情で苦労しながら現在の地位に辿り着いた。星野アクアに勧誘され、苺プロダクションと業務提携し、B小町に加入。とある秘密を抱えている。

「【推しの子】」大ヒットの要因は、重層的な作品の構成がもたらす唯一無二の面白さ

 「推しの子」がここまで大ヒットした要因は、2人の人気漫画家が組んだことで発生した強烈なマンガ力、多層構造の作品構成、引き込んだ読者を満足させる、読後の爽快感にあると考える。ではそれぞれの項目について語っていきたい。

2人の人気マンガ家によるマリアージュが魅せる、古典的マンガならではの表現の強さと面白さ

 本作で原作を担当する赤坂アカ氏は「かぐや様は告らせたい」(集英社、ミラクルジャンプ/週刊ヤングジャンプ)、作画の横槍メンゴ氏は「クズの本懐」(スクウェア・エニックス、月刊ビッグガンガン)と、それぞれ作品がメディアミックス化された経験を持っている。

「かぐや様は告らせたい」
「クズの本懐」

 特に赤坂アカ氏は本作を「かぐや様は告らせたい」と並行して手がけ、「【推しの子】」連載開始時にはそれが大きな宣伝文句ともなっていた。原作が赤坂アカ氏、作画が横槍メンゴ氏となっているが、横槍メンゴ氏がネームの段階から参加しているため、「赤坂アカ×横槍メンゴ」という表記になっている。

 その2人が手がける「推しの子」は連載開始時点で、構成や設定、デザイン的にメディアミックスを意識していたことは想像に難くない。

【TVアニメ「クズの本懐」ティザーPV】
主演・安済知佳さん、EDテーマはさユりさんの「リコリコ」コンビだ
【TVアニメ「かぐや様は告らせたい」シリーズ振り返りPV /【「ファーストキッスは終わらない」12.17公開記念】】

 横槍メンゴ氏のこれまでの作品と「【推しの子】」を比べると、キャラクターの外郭にあたる主線が全体的に太くはっきりと引かれ、色使いも中間色の淡いトーンからビビッドで押し出しが強く塗られている。前作までの方が今風な絵柄に見えるが、とりわけ特徴的なのは、「【推しの子】」のキャラクターの目の中の大きな星だ。横槍メンゴ氏には「めがはーと」(小学館)という、目の中にハートがあるキャラクターが登場する作品もあるが、星が大きく採り入れられたのは、「推しの子」の為に考えられた表現だ。

【めがはーと】

 瞳を大きく、中に星が煌めく様な目の表現はかつて少女マンガの代名詞であったが、2020年代になってその表現をブラッシュアップし、協調して新しく生まれ変わらせたセンスには驚かされる。

 「【推しの子】」においてキャラクターの瞳の中の星は、アイドル性、スター性の象徴でもあるが、時として底知れぬ気味悪さを醸しだし、人心を恐怖させる効果もある。特徴付けに留まらず、様々な暗喩を含む、ストーリーにとって重要な表現でもある。

 現在、2次元で物語を綴る「コミック」は、韓国が最先端を走るWebtoonの流れが世界を席巻している。コマ割りしたマンガを1画面に収めたマンガの電書は、パソコン画面では読み難いだけのモノだったが、スマートフォン・タブレットの普及に伴って縦スクロールのWebtoonという別ジャンルの表現となった。カラフルで、流れるように読み進められるスピーディな表現は、メディアミックスとの親和性も高い。

 その世界的な流れに対し、「【推しの子】」は紙媒体の「週刊ヤングジャンプ」先行で連載される、止め絵で、ほとんどがモノクロでコマ割りされた横読みのマンガだ。「【推しの子】」を一読して驚かされるのは、まず画面から溢れる魅力的な絵力と斬り結ぶような台詞、情報量の多さだ。とにかくほとんどのコマに吹き出しで長めの台詞があり、スマホで通勤中に読み流すのには不向きだ。そしてだからこそ、時折台詞の無い大コマが、非常に印象深く心に刻まれる。

 「マンガはネーム(台詞)」というのはマンガファンにとっては常識だが、このスピード・テンポ重視の時代に、これだけ情報量の多い作品が熱狂的に支持されているのを見るに、改めてネームの力で、移り気な読者を捕まえているということを思い知らされる。

 それは2人の人気漫画家として実力の高さの証明であると同時に、手塚治虫以来の歴史を誇る、伝統的なコマ割りされたマンガの面白さを改めて実感させられる。

アイドル・芸能のシンデレラストーリーを軸に、ミステリー仕立ての謎解きや学習要素、多重構造がもたらす面白さ!

 「【推しの子】」はタイトルが表すように、「アイドル」がモチーフの作品だ。「推す側」と「推される側」の葛藤が、作品に通底したテーマとなっている。アイドルという存在を多面的に考察、深堀し、華やかに見えるアイドルの経済事情や実態、背景を具体的な数字も交えてリアルに描いている。また、推す側の感情、心の有り様についても同様だ。

 母・星野アイを批判するネットの声にやり返す幼い星野ルビーや、推したい対象であるが故に、有馬かなから距離を置く星野アクアの切ない心情は胸に迫る。

 そしてだからこそ、絶対的な偶像=アイドル・星野アイの出産とその秘匿、さらに1巻という物語序盤での退場には驚かされた。堂々たる物語の主要登場人物で有りながら、1巻終盤で襲撃されるシーンは、ヒッチコックの「サイコ」でのシャワールーム襲撃を思い起こさせる衝撃だった。

 そして俄然物語は星野アイ襲撃の真犯人捜し、事件の背景を探るミステリー要素が強まる。星野アクアが転生した医師という設定が大きく意味を持つ。医学的見地から犯人を特定しようとDNAを採取し、巧みな駆け引きで情報を分析していく描写の説得力、緊張感に唸らされる。その過程で、星野アクアと星野ルビーの芸能活動が巧みに織り込まれて物語が進行する多層的構成は見事で、つい引き込まれ、読み進めずにはいられない。

 また、その過程で織り込まれる、芸能や動画配信、テレビ番組などへの、アイドルへと同様に裏も表も交えた深い考察、情報量の多さも特筆すべき本作の構成要素だ。幼年期編では子役や俳優について、恋愛リアリティショー編では文字ど通り恋愛リアリティショーの華やかな映像の裏面を真っ正面から取り上げる。インフルエンサーMEMちょによる動画、バズリ講座やスキャンダル対策など、一般読者がネットに向き合う際にためになったり、役立つ情報も多い。

 「【推しの子】」は、情報が身近で多面的なことは勿論、それがストーリー進行を阻害せず、逆に理解を深められるように巧みに組み合わさっていて、ここにも極めてマンガ力の高さを感じる。

 「アイドル・芸能」の新時代に即した2世代シンデレラストーリーであり、ミステリーであり、役立つ知識も取り入れられた「【推しの子】」構成は、大ヒットも納得の見事さと言えるだろう。

辛いリアルと救いを描く、マンガの矜持

 「【推しの子】」実写化にあたっての、赤坂アカ氏のコメントにあるように、本作はアイドルや芸能、バラエティ番組などに対し、マンガだからこそ描けるリアルさで、鋭い批判性を持っている。星野アイを初めとしたアイドルの表裏、恋愛リアリティでのネットリンチに追い詰められての自殺未遂、自己肯定感が低く、精神的に限界を迎える、元天才子役・有馬かな、マンガの実写化における、原作者としての苦悩・葛藤等々……。センセーショナルで、愛くるしいキャラクターを通して描かれている故に、読むのが辛い展開が驚く程多いのもまた、本作の特徴だ。

「【推しの子】実写映像化決定!!」のニュースページ

こちらは東映の「【推しの子】実写映像化決定!!」のニュースページより

 リアルで良くできた展開故に、辛い記憶を刺激される読者も少なくないだろう。最近、マンガのドラマ化という本作のテーマに重なる問題が痛ましい結末を迎えたことも記憶に新しい。現実は辛く、残酷だ。本作もリアルな描写が多い故に、その真実に真摯に向き合っている。そして「【推しの子】」はその辛い現実に、キャラクターが抗い、希望に変えていく。

 マンガ「鋼の錬金術師」(スクウェア・エニックス)を手掛けた荒川弘氏の「作り話だからこそ、本来なら救いの無い話にも救いを作ってあげられるんだよ」という想いに通じる、マンガだからこそ可能な結末が各章の最後に待っている。

 夭逝した少女と不慮の死を遂げた医師が転生するという冒頭から始まって、マンガだからこその救いが全面展開している。辛い現実を描く批評性と、読者を笑顔にするというエンターテインメントの本質、それを極めて高い次元で両立させていることが「【推しの子】」の最大の魅力であろう。

メディアミックスへの期待と今後の展開への妄想

 マンガ版「【推しの子】」について語ったところで、今後の展開への期待、7月から2期が始まるアニメ版、メディアミックスについても触れておこう。

 アニメ第1期は、単行本4巻までを原作に忠実になぞっている。特筆すべきは、単行本1巻を1時間以上の長尺で再現した1話だ。

 マンガの単行本は1巻でいかに読者に次巻以後への興味を引くかが重要視され、「【推しの子】」はまさしくそれを実現している。同様に、TVアニメも1話切り、1話のAパート切り、という刹那的な視聴パターンが当たり前になった昨今、3話分を1話で見せるという手法には驚かされたし、アニメ史に残る1話だと感じる。

 マンガの台詞の無い場面をアニメでいかに再現しているかなど、両方見比べることでより楽しめるが、アニメだけの特徴はやはり音、わけても声と音楽だ。

 YOASOBIの「アイドル」は完成までにかなりの日数をかけたと言われるが、2期の主題歌の仕上がりも楽しみだ。また、前作同様のヒットとなった場合に、賞を受賞するか否かも気になるところだ。また、新生B小町のワンマンライブ等にも期待したい。

【【推しの子】サインはB from 苺プロダクション☆ファン感謝祭2023【ライブ映像】】

 TVアニメ1期は原作の4巻までをほぼ忠実にアニメ化しているので、その例にならえば第2期はコミックス8巻の中堅編までが映像化されることになりそうだ。原作の終了までがアニメ化されていくか否か2期の盛り上がり次第ともいえるので、そこも注目ポイントとなる。

 また、マンガは映画編でミステリー要素・犯人捜しに大きな変化が生じ、星野アクアの復讐劇の行方が気になる。また、有馬かなのB小町卒業も大きなテーマとなっていきそうだ。果たして星野アイが果たせなかった、苺プロダクション悲願のB小町東京ドーム公演が行なわれるのかといった点にも注目したい。

 個人的には、星野アクア視点ではない、純アイドルマンガの新旧B小町のスピンオフ作品も読んでみたいと思う。コラボグッズも色々予定されているが、「【推しの子】」リカちゃんのバリエーションも期待したいところだ。

「【推しの子】×リカちゃん」は5月に発売予定

 まだ本作を知らない方は無論のこと、アニメだけ見た方も、是非紙のコミック(帯付きがなお良い)で読んで欲しい。とにかく1話、1巻と読めば止まらなくなる面白さで、傑作マンガのマンガ力を実感してほしい。

Prime Videoで視聴