特別企画

【今日の読み切り】「サカナが潜る白い海」

中田祐樹氏のSFヒューマンドラマ。命は“受動態(生まれる)”で始まる

【サカナが潜る白い海】

著者:中田祐樹

集英社

 遠い親戚に育てられている少年「リクト」。彼は幼い頃、一家心中に巻き込まれるが、1人生き残る。ある日、海でケガをした不思議な生物に出会い、うちに連れて帰り育てることになる。「リクト」はその不思議な生物を「サカナ」と名付け、エサを与えたり、幼児用の動画を見せたりしながら、まるで自分の子供のように面倒を見る。

 本作「サカナが潜る白い海」は中田祐樹氏によるSFヒューマンドラマ。2021年6月に「少年ジャンプ+」にて配信されている。

 過去の悲しい記憶に、生まれてきたことの意味を考える思春期の男の子。新しい親は独特の考え方を持っていて、本当の親のように自分を育ててくれているんだけれど、ついイラついて反抗してしまう。自分の思いをうまく表わせないから、余計にイライラしてしまうという、まさに思春期の頃を思い出すようなシーンも出てくる。

 リクトが、「サカナ」の面倒を見るうちに、守ってやりたいと思う気持ちが湧き上がってくる場面では、悲しい過去の出来事があったとしても誰かのために、何かしようとする優しさを感じられる。全体的に不思議な世界観の作品ではあるけれど、「生きる」ということについて考えさせられるような作品となっている。

【あらすじ】

一家心中に巻き込まれながらも生き残って、遠い親戚に育てられているリクト。生きることに意味を見出せない中、不思議な魚類を拾い育て始めるが――……!?