特別企画
読んだらキャンプに行きたくなるかも! キャンプブームの立役者「ゆるキャン△」最新16巻が間も無く発売
キャンプを通して友情とスキルが育まれてゆく、日常系マンガの魅力を紹介
2024年3月11日 00:00
- 【「ゆるキャン△」第16巻】
- 3月12日 発売予定
- 価格:759円
キャンプを通して女子高生の友情や日常を描くマンガ「ゆるキャン△」第16巻が3月12日に発売を予定している。さらには、TVアニメ「ゆるキャン△ SEASON3」の放送も4月に控えており、こちらも目が離せない。
芳文社のCOMIC FUZで連載中の「ゆるキャン△」は、漫画家のあfろ氏による作品で、山梨県に住む女子高生「志摩リン」が一人でキャンプをするシーンから始まる。そこで引っ越してきたばかりの「各務原なでしこ」と偶然出会い、日が落ちて途方に暮れている彼女を助けるところから物語が始まっていく。
キャンプマンガでもありながら、女子高生達のガールミーツガール、日常や交流も描かれているハートフルな面も持ち合わせているのは、「けいおん!」や「ぼっち・ざ・ろっく!」、「ご注文はうさぎですか?」などのヒット作をてがける芳文社ならではといったところだろうか?
筆者は、キャンプ雑誌などに記事を書くなどアウトドアの専門家として活動している面があり、キャンプを題材にしたマンガやアニメ、ドラマ、映画などがあるとついチェックしたくなる。中にはトンデモな内容で興醒めしてしまうものもあるが、「ゆるキャン△」はすっかりハマってしまった。今回はそんな「ゆるキャン△」の魅力やその理由などを紹介したいと思う。
初心者向けキャンプガイドとして優れた構成になっているストーリー展開
本作品は、この作品をきっかけにキャンプを始めたいと思っている初心者や、キャンプを始めて間もない初心者にとっても、ガイドブック的な役割を持っていると感じる。キャンプを始めた女子高生という舞台設定が、周囲からのアドバイスも得られやすく、仲間と協力して一緒に成長してゆくというストーリーも作りやすいと言う側面もあるかと思う。
冒頭で紹介した出会いをきっかけに、リンとキャンプ体験をしたことで興味を持ったなでしこは、転校先の高校の同好会である「野外活動サークル(野クル)」に入部し、メンバーの「大垣千明」と「犬山あおい」達とキャンプを始めるようになる。
お金がない高校生が、何かと割高な冬用のキャンプグッズを買うのではなく、身の回りのものを工夫して寒さをしのぐ、など“キャンプビギナーあるある”がいくつも散りばめられているのも未経験者には「なるほどアイディア」になるし、経験者には「かつて通った過去の思い出」として懐かしむことができる。家庭用カセットコンロで料理をするシーンなどでは「あ、それでいいんだ」と思わせてくれたり、テントの応急修理など「知識としてはみたことあるけど、実際そうやるんだ」などの知っておきたいトラブルシューティングが自然と身につくのもキャンプガイドとして優れている点だろう。
作品中ではテントや寝袋などの種類の解説やキャンプ道具の紹介、火の起こし方のノウハウなど、アウトドア豆知識なども披露され、「それ持ってる!」とか「同じアイテムが欲しい!」などと思わせてくれる。当時は実際に作品に登場したアイテム(と思われるモデル)は品切れになる程人気になったりもした。
キャンプでの料理も、最初はカップ麺だけだったのが、鍋をしたり、カレーを作ったり、焼肉をしたり、パスタを作ったりとだんだん凝ったものを作るようになっていく。ホットサンドメーカーで肉まんを挟んで焼いて(温めて)食べるというアイディアは、その意外性で熟練キャンパーも真似するようになるなど、リアルにも影響を与えた。
そういった楽しい面だけでなく、準備不足、下調べ不足から目的地で思わぬトラブルに遭遇したり、真冬の標高の高いキャンプ場で遭難しそうになるなど、そうなってからでは遅いトラブル、事故への啓蒙、注意喚起をしてくれる描写があるのも作者自身のアウトドア経験などが生かされているように感じる。
ガールミーツガールから発展してゆく関係性と登場人物達の成長
「ゆるキャン△」のもう一つの魅力は、なんとなく固定されていた人間関係が、一人の転校生によって融合したり、発展していく面白さだろう。
リンはキャンプ経験はそれなりにあるが、キャンプ場において一人で過ごす時間を楽しむのがメインだった。そこから、キャンプにハマったなでしことその仲間達と時に一緒にキャンプをしたり、情報交換するようになってからはキャンプ料理をしたり、バイクで遠出をするようにもなる。
なでしこは、リンに助けられたことをきっかけにキャンプに興味を持ち、初心者からスタートするが持ち前のコミュ力や体力、料理の腕で最初のハードルをクリア。野クルを作っていつかはキャンプに行きたいと情報収集していた仲間を巻き込んで、まずは一回キャンプに行くことに漕ぎ着けるなど、一歩踏み出すきっかけをつくる役を担う。
やがて動き出した人間関係によって相互に影響を与えたり、アドバイスをしあったりと、関係性が深まったり成長していく様を見守る楽しさもある。SNSを活用したコミュニケーションの演出も面白い。作中に登場する「うわなにをするくぁwせdrftgyふじこlp」というワードはネットミーム由来のものだが、この作品によって一般層への認知度が上がったようにも思う。
親近感がわく描写もたくさん
アウトドアの指南書的な内容や、高校生の日常だけでなく、どの年代の読者でも共感できる描写も巧みだ。
例えばリンが、念願のコンパクト焚き火台を購入した時などは、一見クールに装いながら内心は「買っちった!」と欲しかったアイテムをやっと買えた喜びは、誰でも感じたことがある感情だと思う。
なでしこが、店頭で一目惚れしたランタンをお金を貯めてようやく買えた時の嬉しい気持ちも、金額の多寡に関わらず、今でも味わうことがある。
最初は近場が多かったキャンプも、だんだん遠くに行ったり、道具も充実してゆく。キャンプ経験者はもちろん、他の趣味を嗜んでいる人でも自分の趣味に置き換えてニヤニヤできるのではないだろうか? 沼にハマってゆく人を見守る楽しさ、自分が沼にハマってゆく心地よさは、趣味、年齢を問わず、共感できるものだろう。
最近の巻では、学期も変わり、なでしこ達も進級し、いよいよ新入生が入ってくる。野クルメンバーたちもそれぞれ新しいアクティビティにチャレンジしたり、ソロキャンプデビューしたりと、新しい動きも見えてきた。新入生(新しいメンバー)が入ってきて、既存メンバーが先輩風を吹かせたり、精一杯背伸びをしてしまう描写も微笑ましく描かれていて嫌味が感じられないのも上手い。
新キャラクターのロードバイクガール「中津川メイ」は、イヌ子こと「犬山あおい」に助けられたことをきっかけに野クルに入部することになる。いきなり山梨縦断70kmキャンプを敢行する(実際には途中でクルマ移動したりなどあったが)ストロングスタイルな面もみせる。ロードバイクとキャンプというお金のかかる趣味「ダブル沼」にハマっていくキャラとして今後が楽しみだ。
もう一人の新キャラクター「瑞浪絵真」は、液晶タプレットを買ってもらってお絵描きする場所を探しているときに図書館でリンと出会う。雑談の中でバイト探しをしていると相談した絵真に対して、リンは行きつけのアウトドアショップを紹介する。なでしことリンがアウトドアショップに行ったときにはバイトを始めており、説明描写をくどく書かずに短いやり取りの中で描かれる関係性がとても良い。まだキャンプには出掛けていないが今後チャレンジするなどの展開に期待が寄せられる。
さらに、物語の中ではアニメ化を意識した「中の人」ネタも仕込まれており、アニメ化された時が楽しみな場面もある。
マンガではモノクロながら雄大な自然とキャンプの温かみを描き、アニメではそれらを声優陣の演技で彩る。いずれもキャンプの楽しさが詰まった作品だ。もうすぐ発売の最新16巻には「瑞浪絵真」など新たな仲間たちも描かれており、最新刊ではどこにキャンプに行くのか、どんな展開が待っているのか、非常に楽しみだ。
(C)あfろ・芳文社