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「『賭け』をしましょう」35周年の大規模原画展「CLAMP展」レポート
「東京BABYLON」や「魔法騎士レイアース」など、人気作品の原画が目の前に!
2024年7月3日 00:00
- 【CLAMP展】
- 開催期間:7月3日~9月23日
- 一般チケット:2,100円(一般)/1,400円(大学生)/1,000円(高校生)
- 早割チケット:1,900円(一般)/1,200円(大学生)/800円(高校生)
- ※中学生以下、障害者手帳を持参の場合(付添1名含む)は入場無料
東京六本木の国立新美術館 企画展示室2Eにおいて、創作集団CLAMPの漫画作品を中心とした原画展「CLAMP展」が開催される。開催期間は7月3日より9月23日までで、7月3日より5日は開幕記念特別観覧日となっており、通常観覧日は7月6日から。会場内では撮影可能なエリアもあり、一部で展示内容の写真撮影が可能となっている。
CLAMPは、いがらし寒月(五十嵐さつき)、大川七瀬、猫井(猫井みっく)、もこな(もこなあぱぱ)の4人で活動する創作集団グループだ。なおカッコは過去のペンネーム。外部アシスタントなどを入れず、全ての作品を4人で創作しているのが特徴で、商業誌デビューは1989年の「聖伝-RG VEDA-」。
それ以降も「東京BABYLON」、「CLAMP学園探偵団」、「学園特警デュカリオン」、「20面相におねがい!!」、「X-エックス-」、「魔法騎士レイアース」、「カードキャプターさくら」、「ANGELIC LAYER」、「ちょびっツ」、「ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-」、「xxxHOLiC」、「こばと。」、「GATE 7」、「ドラッグ&ドロップ」、「カードキャプターさくら クリアカード編」など幅広い層に向けて色々な作品を発表し、支持されてきた稀有なグループである。
商業誌デビュー35周年の節目に行なわれた今回の原画展は、これまで行なわれた展示会と比べても最大規模のものとしており、モノクロ原画が約600点、カラー原画が約200点、その他の創作資料なども含めると、合計1,000点近い展示が行なわれている。
CLAMPと言えば、商業デビュー前から同人誌の祭典「コミックマーケット」にて同人誌製作、販売していた時代もあり、その頃からのコアなファンも大勢いることだろう。だが、今回は商業デビュー前の作品などについては紹介されていない点は予めご留意頂きたい。
筆者のCLAMP作品との出会いは「東京BABYLON」だ。単行本表紙などに見られるポップなデザインに惹かれて読みはじめたが、読んでみると不穏な雰囲気を感じる伏線のような要素が各所に見られる不思議な印象を受けた。そして物語終盤、不穏な雰囲気が結実したその衝撃の展開は今でも思い返すたびに涙腺が緩む。
以降は「聖伝-RG VEDA-」まで遡って商業作品をほとんどチェックしたほか、角川書店から発売されていた一連の単行本やイメージCDなどをチェックし、商業デビュー後ながらも同人誌も1冊だけ所持するなど、一時期はかなりどっぷりとCLAMPにハマっていた。恐らく「X-エックス-」と「魔法騎士レイアース」の頃がピークで、「カードキャプターさくら」以降の絵柄が柔らかくなっていった頃から少しずつ離れていき、「xxxHOLiC」以降は動向をチェックする程度となっていた。
今なお、筆者の中で最も好きなCLAMP作品は「東京BABYLON」と未完の「X-エックス-」だ。特に「東京BABYLON」にて登場し、「X-エックス-」で決着を迎える、皇昴流と星史郎さんの関係性は今なお筆者の心の中に色濃く影を残している。
暗殺集団「桜塚護」としての裏の顔を持つ暗殺者の星史郎さん、一見すると世間知らずのお坊ちゃんのような雰囲気ながら、心に芯をしっかり持っていることがエピソードから伝わる真面目な青年の皇昴流。ここにその間を仲介するかのように存在する昴流の双子の姉である北都ちゃん。3人のほがらかな関係性を楽しめるのも「東京BABYLON」の魅力の1つだ。
北都ちゃんがいなくなった後の昴流と星史郎さんの関係性は、ある意味でCLAMPのお家芸でもあり、CLAMPの他作品でも見られるような独特の数奇な繋がりが感じられる。その結末が描かれる「X-エックス-」の一部エピソードも筆者にとってはベストな作品の1つとなっており、個人的には是非完結まで描いてほしいと今でも願う。
ということで、今回は「CLAMP展」開催前日にメディア向けに行なわれたプレス内覧会に参加する機会を得たので、会場の様子を紹介していきたい。
カラー原画の多様な画材に要注目!
会場入口には、「CLAMP展」主催者からの挨拶とCLAMPのプロフィールが日本語のほか、英語、韓国語、中国語の4か国語で提示されている。また、税込800円で利用できるオーディオガイドのレンタルコーナーも設置されている。オーディオガイドの音声は声優の福山潤氏が担当しており、甘いボイスで展示内容について音声で解説してくれる。
会場内の展示はCLAMPにちなんで「C」、「L」、「A」、「M」、「P」のそれぞれにテーマを設けて、展示が行なわれていた。最初の展示となる「C」は「COLOR」で、カラー原画の展示エリアだ。このエリアについては取材時も写真撮影不可だったので入口の様子の写真のみの紹介となるが、展示自体は発表時期の古い順に時系列でカラー原画が並べられており、脳内のタイムスリップが余裕で行なえる。
国立新美術館の特定研究員、吉村麗氏によると、CLAMPのカラー原画は、多様な画材が用いられている点も注目のポイントとしており、アクリルガッシュ、コピック、カラーインク、透明水彩、パステル、墨、ポスターカラーなど、実に多くの画材が使われている。なお、展示されているカラー原画は約200点だが、CLAMPの絵柄が前期と後期とで変化していることを考慮し、前期から約100点、後期から約100点を厳選したとしている。
筆者個人としては、「東京BABYLON」の単行本の表紙や、雑誌掲載時のカラー表紙などで多く使われていたカラー原画が間近で見られたことに大満足だ。この辺りは画集なども所持していた事もあり、見慣れたカットではあるが、原画から伝わる雰囲気はまた異なる。強めの色が際立つポップなデザインとキャラクターの明るい雰囲気が伝わるカラー原画を眺めていると、単行本を何度も読み返した当時の日々を思い出す。
多様な「愛」が感じられる原画が並ぶ「L」
続いてのコーナー「L」はLOVE、CLAMP作品の特徴の1つである、多様な「愛」をテーマに集められた原画が並べられている。CLAMP作品では、男性同士の「愛」や、大切な物を守る「愛」、そして好きという思いを伝える「愛」の告白のシーンなど、「愛」にまつわるシーンが多い。このコーナーでは、様々な作品を横断した、多様な「愛」を感じる原画が多数展示されており、CLMAP作品で表現された様々な「愛」を再認識できる。
厳選された6作品を時系列で原画チェック!連載を読んでいた日々が甦る「A」
続く「A」は「ADVENTURE」とのことで、あえて6作品に厳選し、CLAMP作品の物語の流れを追える展示となっている。厳選された6作品は「聖伝-RG VEDA-」、「東京BABYLON」、「X-エックス-」、「魔法騎士レイアース」、「カードキャプターさくら」、「ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-」で、いずれもあらすじを紹介するテキストも展示されており、リアルタイムで作品を読んでいた人にとっては、物語を再追跡できるユニークな展示となっている。
筆者の場合、「聖伝-RG VEDA-」と「東京BABYLON」は単行本で読んでいたが、「X-エックス-」と「魔法騎士レイアース」についてはほぼリアルタイムで連載を追っていた事もあり、当時買っていた角川書店の雑誌「ASKA」や講談社の「なかよし」の記憶が甦ってきた。
しかもラスト前の重要なシーンまでは原画が展示され、物語の展開もある程度は思い出せる仕組みになっているのに、クライマックスが明確に分かるようなシーンの原画は展示されていないため、物語の結末を覚えていない作品については、帰宅したら単行本を読み返したくなる事必至だ。展示会に来る前に厳選6作品の単行本を全部読み返せる状態にしてから来るのがいいだろう。
ちなみに筆者の場合「東京BABYLON」については、最後のシーンまで脳内に永久保存されているので、展示を見ながら「あー、原画はここまでなのね」と余裕を見せることができた。
映像で見る”魔法”の「M」。セリフが並び、セリフを貼れる「P」
次の「M」は「MAGIC」とのことで、ここはちょっとした癒しのコーナーだ。CLAMP作品には魔法や奇跡の力などを取り扱った作品が多いため、ここではこうした作品を映像演出で見せるコーナーとなっている。中には原画の1シーンに動く演出を付与した物もあり、吉村麗氏は、作品内に入っていくような体験ができるコーナーとしている。
次の「P」は「PHRASE」とのことで、台詞が特徴的な「xxxHOLiC」のセリフを中心に、CLAMP作品における印象的なセリフを紹介するコーナーとなっている。ユニークなのは、壁面上部には名ゼリフの数々が予め様々な文字を使って表現しているが、壁面下部には何も書かれていないのだ。
このエリアには、展示会を訪れた人たちが、入口に置かれたおみくじのような箱の中から、厳選されたセリフの書かれた銀のシールをおみくじのような感覚で引いてもらい、引いたセリフのシールを好みの場所に自由に貼る事ができるインスタレーションのコーナーだ。このエリアの壁面のシールについては、会期中剥がしたりせずにそのまま時の経過を待つ事になるため、最終日の閉館後に初めて完成するコーナーとなっているのだ。
年表でCLAMP作品の系譜をチェック!物販コーナーも充実!
「C・L・A・M・P」を過ぎた先には「IMAGINATION」のコーナーがあり、ここでは35年のCLAMPの歩みを一望できる年表を展示。単行本を使って連載時期なども分かるようになっている。また、年表下部のガラスケースには連載時の雑誌やユニークな装丁の単行本、画集などが展示されていた。
年表の反対側にはコラボレーションのコーナーとして、メディアを横断して活動してきたCLAMPの活動の中でも、ゲームのキャラクターデザインや、田中芳樹氏の著作「創竜伝」の文庫版の挿絵など、漫画作品以外の活動についての展示も行なわれている。
最後のエリアは「DREAM」として、今回の「CLAMP展」を記念した描きおろしのカラーイラストが1点のみ展示されているコーナーだ。カラーイラストには今のもこな氏が描く「聖伝-RG VEDA-」の主人公、 阿修羅と、「カードキャプターさくら」のさくらが並べて描かれている。それぞれが額のような枠に収まっており、阿修羅を飾る枠の上には「黒(KURO)」、さくらの枠には「白(SHIRO)」という文字が描かれており、デビュー作から最新作までの35周年のCLAMP展にふさわしい1枚となっている。
展示エリアを抜けると物販も用意されている。今回のプレス内覧会では、残念ながら物販の利用は行なえなかったが、数多くのグッズが用意されているほか、カラー原画やモノクロ原画の複製原画も販売されているようなので、自宅に飾っておきたい人は要チェックのアイテムと言えるだろう。
もう1度CLAMP作品に立ち返るのに最高の機会!
以上「CLAMP展」のプレス内覧会の様子を駆け足で紹介した。久しぶりにCLAMP作品35年の歴史を追い直してみて、改めて2000年前後のCLAMP作品の、筆者に対するどストライク具合が再認識できた。また、近年のスマートなタッチの絵柄の再評価ができた点も筆者にとっては大きい。
今回の展示を通じて、もう1度色々とCLAMP作品を見直すいいきっかけになりそうだ。筆者同様、改めてCLAMPを見直してみたくなった人は是非1度、原点回帰の意味も込めて、「CLAMP展」で当時の思いに立ち戻ってみてほしい。
また、これまであまりCLAMP作品を見た事がないという人であっても「CLAMP展」は魅力な原画展と言える。というのも、CLAMP作品全体で言えることだが、ビジュアルやデザインの独特のセンスは今見ても全く色褪せないポップさがあるのだ。また、時事ネタなどについてはどうにもならない面もあるが、キャラクター同士の駆け引きや、会話のセンスについても同様、独特のオシャレさが感じられるのだ。個人的に推している「東京BABYLON」などで扱われているテーマについては、現在でも考えさせられるような内容が多く、読みごたえのある作品である事は間違いない。勿論あの衝撃のラストをみんなにも味わってほしいわけだが……。
そして、商業以前を含めると35年以上もの長い間、同じ4人のメンバーが変わることなく、こうして創作活動を継続できている事に改めて賛美を送りたい。大人の判断が的確なのか、そこに何かの“キセキ”が起きたのか、CLAMPのメンバー4人が今後も変わらずにアクティブな活動を行なうことに、1ファンとして今後も期待していきたい。というか「X-エックス-」の完結をお願いします。
(C)CLAMP・ShigatsuTsuitachi CO.,LTD.
(C)CLAMP・ShigatsuTsuitachi CO.,LTD./CLAMP展製作委員会