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【年末特集】「SAKAMOTO DAYS」TVアニメがもうすぐ放送! アクション映画のようなバトルが見どころの本作を予習
デブなのに強い! キャッチーな主人公が生み出すギャップにも注目
2024年12月28日 00:00
- 【TVアニメ「SAKAMOTO DAYS」】
- 2025年1月11日~ 放送開始予定
- 放送局:テレ東系列ほか
「週刊少年ジャンプ」(集英社)に連載中のマンガ「SAKAMOTO DAYS(サカモトデイズ)」のTVアニメが2025年1月11日より放送開始となる。本作は漫画家・鈴木祐斗氏の代表作で、その主人公はかつて伝説の殺し屋とまで呼ばれた存在・坂本太郎。愛する女性と出会い、殺し屋稼業から足を洗った坂本は、平和な日常を謳歌するうちすっかり弛みきった体型に……という、ギャグ的な切り口が特徴的なバトルアクションだ。
2020年11月21日発売の「週刊少年ジャンプ」51号からスタートした本作は、2024年12月現在でコミックス第19巻までを発売。2021年には「次にくるマンガ大賞 2021」にて、コミックス部門9位と特別賞であるU-NEXT賞を受賞。続けて2022年には「全国書店員が選んだおすすめコミック 2022」で6位を獲得するなど連載初期から注目を集めており、このたびのTVアニメ化はファン待望の展開といえるだろう。この記事では、そんな「SAKAMOTO DAYS」の見どころについて紹介したい。
デブなのに強い! マンガとして完成された坂本のキャッチーさ
まずは何を差し置いても、本作を語る上で欠かせない最大の要素は「デブなのに強い」という主人公・坂本のキャッチーさだ。このご時世、「デブなのに」とは大層な物言いだが、筆者もデブなので同族のよしみ(?)としてこの際ご容赦いただきたい。ぶっちゃけ「かつて伝説的な強さを持っていたキャラクターが、第一線を退いたはずなのにめっちゃ強い」というのはあるあるネタで、多くの人にとっては無条件で好きなヤツだ。要はそこに「デブなのに」と“ひと捻り”加えて面白みもプラスしているのが本作なのだが、この“ひと捻り”くらいの工夫自体は昨今珍しくない。
ポイントは、デブとして描かれている坂本のビジュアルの秀逸さにある。常に反射している丸メガネ、顔と首が脂肪で一体化した流線型のフォルム、広大な肌面積とは対象的にちょこんと乗ったチョビ髭……いかにも“マンガ”として完成されているビジュアルのキャラクターが、日常生活でありふれている多彩な物を即席で武器とし、スタイリッシュに敵を制圧する。この強烈なギャップが生み出すキャッチーさが、前述したように連載初期から多くの人の支持を受けていた、大きな理由のひとつだろう。
戦場を目まぐるしく転換する、アクション映画のようなバトル
そんな「SAKAMOTO DAYS」の物語は、殺し屋時代に部下としていたエスパーの青年・朝倉シンが、かつて所属していた組織からの刺客として訪問してくるところから始まる。所帯を持った坂本は食料品などを取り扱う個人経営の商店・坂本商店の店長として日々を過ごしていたが、妻となる坂本葵と駆け落ちする形で殺し屋を引退したため、組織がその所在を探っていた。殺し屋に戻るよう説得を試みるシンだが坂本の決意は固く、組織のボスからは坂本抹殺を命じられる。いまだ彼に憧れを持つシンは、どうせなら自分の手で……と坂本に挑むも、舐めていた飴玉で銃弾の軌道を変えられたり、遮蔽物の多い店内の地の利を活かすなど、歴然とした力の差で敗北。坂本家に介抱されたシンは、坂本が守ろうとしている家族との日常の大切さに気づき、ひとり組織に反旗を翻す……というのが第1話の内容だ。
このエピソードを皮切りに、坂本は様々なトラブルに巻き込まれていく。しかし彼は妻から「破ったら離婚」とまで言われている家訓のひとつとして「人を殺さないこと」を誓っている。次第に苛烈さを増していく戦いのなかでも、涼しい顔をして敵を殺さず無力化する坂本なのだが、本作の見どころのひとつとしてやはりこのバトルシーンが挙げられる。
ここで少し話が脇道にそれるが、「SAKAMOTO DAYS」の見どころのひとつとして挙げたバトルシーンについて、原作第19巻までを読んだ率直な感想として「非常に映画的」だと感じている。
作中に登場する殺し屋たちは、殺連(日本殺し屋連盟)という仕事の斡旋やサポートを行なう組織に管轄されており、その存在はニュースで取り上げられるなど割とオープンにされている。それでも殺し屋たちは一般人を極力巻き込まぬよう、公の場では大衆が目線を外した一瞬を縫うように火花を散らし、目まぐるしく戦いのフィールドを変えていく。
他作品のバトルシーンに比べて頻繁に挟まる場面転換や、その最中で描写される目が覚めるような構図の数々は、まるで上質なアクション映画を観ているかのよう。そのなかにあって、武器を問わずその場にあるものをなんでも活用する、坂本の卓越した殺し屋としてのスキルが際立ってくる。この映画的なバトルシーンをTVアニメではどのように描くのかが、ひとつの注目ポイントになるだろう。最近では映画好きな漫画家として「チェンソーマン」の藤本タツキ氏の名がよく挙がるが、鈴木祐斗氏も相当な映画好きと見た。
とにかく異質な存在・篁さんについて語りたい
最後に、TVアニメでは恐らく(顔見せくらいはあるかも知れないが)出番がなく、登場自体がかなり後になるためこの記事の趣旨からは余談になるのだが、多くの読者がその存在感に引き込まれたであろうキャラクター・篁(たかむら)さんについて語りたい。
篁さんとは、殺連直属の特務機関であり、かつての坂本も所属していた殺し屋界の最高戦力「ORDER(オーダー)」のひとり。見た目はなんの変哲もないお爺さんという感じで、常に俯き一振りの日本刀を大事そうに抱えている。時折、周囲の人間が聞き取れないくらいの声で何かをつぶやくのみで、言語的なコミュニケーションは困難……そんな一見するとボケてしまっているようにしか見えない老人・篁さんが、とにかくまぁ~強いのだ。
主人公の坂本は伝説の殺し屋とまで呼ばれるほどの存在で、常人の目線では引退してもなお変わらぬ強さを持っているように見えるが、やはり体型の変化やブランクにより全盛期の30パーセントほどの力しかないと作中で明言されている。そんな彼と旧知の仲であり、かつての坂本に引けを取らないほどの実力者として描写されている南雲をはじめ、ORDERには殺し屋界の最高戦力との評価に違わない猛者が集っている。
そのなかでも、篁さんは明らかに頭ひとつふたつ抜けた異次元の強者として描かれている。車体から東京タワーまで、その抜刀術で斬れぬものはなく、いつスイッチが入るかもわからない危険な存在……そう思われていいた篁さんだが、後に自身に向けられた殺意に反応していたことが明かされる。単行本第19巻の巻頭コメントにて作者の鈴木祐斗氏が自ら触れているが、まるで映画「ドント・ブリーズ(2016年公開)」に登場する、スティーヴン・ラング演じる老人のようだ。彼が表紙になっているコミックス第19巻は、その不気味な魅力が存分に詰め込まれた1冊となっているので、気になった方はぜひ手にとってみてほしい。
なお、TVアニメは2025年1月11日23時よりテレ東系列で放送開始予定。さらに2025年7月からは毎週月曜24時に放送時間を変更する形で第2クールの放送も決定している。その一切が謎だが、ただ強いという理由で多くの読者の心を掴んだ篁さん。コミックスでその姿がお披露目されたのは第5巻収録の38話となっており、アニメでの登場は少し先になることが予想されるが、彼がTVアニメで暴れる姿を早く観たい。