特別企画

“大人になった”僕らに捧ぐ、爆発的なカタルシスと万能感! 「金色のガッシュ!! 2」の魅力をネタバレありで掘り下げる

目を疑う展開からスタートした「ガッシュ2」第5巻は4月11日発売

【「金色のガッシュ!! 2」5巻】
4月11日 発売
価格:814円
「金色のガッシュ!! 2」1巻

【拡大画像へ】

 漫画家・雷句誠氏が描く「金色のガッシュ!! 2」のコミックス第5巻が明日4月11日に発売となる。本作はその名の通り、かつて同氏が小学館の「週刊少年サンデー」にて2001年から連載を開始した代表作「金色のガッシュ!!」のその後を紡ぐ正当続編。1000年に一度行なわれるという、魔界の王を決めるための戦い。様々な困難を乗り越え、それを勝ち抜いた魔物の子「ガッシュ・ベル」とパートナー「高嶺清磨(たかみね きよまろ)」が出会ってから13年後が舞台となっている。

 本作はマンガ雑誌への掲載という形式は取っておらず、およそ月1回のペースで各種電子書籍サイトにて最新話を掲載中。紙媒体のコミックスは、ホビーメーカー・ケンエレファントと出版エージェンシー・クラウドブックスが共同で手がける出版社「kraken(クラーケン)」から刊行されている。この記事はそんな「金色のガッシュ!! 2」最新刊の発売にあわせ、本作を紹介しようという趣旨なのだが……前作「金色のガッシュ!!」のファンであればあるほど衝撃的な展開が連続するため、本稿全編にわたってネタバレ注意だ。

4月11日に発売を控える「金色のガッシュ!! 2」5巻

魔物と人間、本来交わるはずのない存在が二人三脚で挑む「王を決めるための戦い」

 初代「金色のガッシュ!!」は魔界の王を決めるため、本来であれば交わることのない人間と魔物が1000年に一度の戦いという特殊な状況下で引き合わされ、過酷な戦いを通してそれぞれの志や友愛(時には異性愛や親子愛)を描いていく異能力バトル×バディもののマンガだ。

 ダブル主人公となる2人もこの例に漏れず、ガッシュは物語開始当初は記憶喪失状態で、自身の術を使うと気絶してしまう落ちこぼれ的な描写がされていた。一方の中学生・清麿は思春期に他と隔絶するほど頭脳を開花させ、友人たちから疎まれ始めたことで学校に通えなくなっていた。このような問題を抱えた2人が出会うことで互いの運命が大きく変わっていくストーリーだった。

ガッシュと清麿(画像は「金色のガッシュ!! 完全版」1巻)

 前作のラストでは様々な試練を乗り越え、王を決める戦いの最後の勝者となったガッシュと清麿。だが、それは魔物と人間の別れを意味しており……。もう二度と会えなくなったと思われた魔物の子たちとパートナーだが、戦いが終わりしばらくした頃、戦いに参加したそれぞれの人間のもとに一通の手紙が届く。ガッシュと清麿は、別れる前に交わした再会の約束を胸にそれぞれの道を行く。前作「金色のガッシュ!!」は、そんな希望に満ちた結末となった。

 「金色のガッシュ!! 2」が本格始動したのは、2022年2月26日に作者の雷句誠氏が自身のX(旧Twitter)へと投稿したある動画。多くのファンが心待ちにしていた続編が発表されたとあって、該当ポストは8万超のリポスト(2025年4月時点)を獲得するなど盛況だ。あのラストからどんな物語が展開されるのか、ガッシュと清麿の再会はどんな風に描かれるのか……続きを待ち望むファンに向けて、衝撃の第1話が公開されることになる。

希望に満ちた前作ラストから一変、絶望に塗れた始まり

 「金色のガッシュ!! 2」第1話は、ある魔物の子たちが何者かに追われているシーンから始まる。事情はわからないが何やら相当に切迫した雰囲気で、トランクケースを手にした男が彼らを追っていた。魔物の子は、男の投石によって腕を折られてなお、泣き言のひとつもこぼさず逃げようとする。そんな子どもたちの姿に苛つきを募らせたトランクケースの男は真の姿を解放。ひとつ眼に5本の腕、さらにむき出しになった脳を仮面で無理やり縛り付けているかのような頭部と、およそ魔物とは思えないおぞましい姿へと変身するのだった。

 彼らの名前は後に判明するが、この攻撃をしかけるひとつ眼の男「ワイグ」に応戦するため、逃亡を先導していた「ジギー」と呼ばれる魔物の子が、ある瓶のフタを開ける。すると前作の戦いに参加していた魔物の子 チェリッシュ の術である“ガンズ・コファル”が発動。対するワイグは手にしていたトランクケースから同様の瓶を見せ、どういう訳か ガッシュ の術“ラシルド”発動し……という冒頭だ。

単話版の第1話は無料公開されている

 掲載されていたのが少年誌だったということもあり、基本的にはコメディタッチで物語が展開されていた「金色のガッシュ!!」に対して「金色のガッシュ!! 2」は目を疑うほどに絶望的だ。本能的な恐怖感を煽るワイグのデザインもそうだが、この後追い詰められたジギーはワイグからの攻撃を受け、あっさりと体をバラバラにされ死んでしまう。幼い弟を抱えて共に逃げていた子「ゼリィ」に「キヨマロを探せ」と言い残して。命からがら逃げた先にあった装置で、ジギーは最後の力を振り絞ってある装置を操作する。人間界へと転送されたゼリィたちは、ジギーから託された似顔絵を唯一の手がかりとしてキヨマロを探し始める、というのが第1話前半の展開となる。

 「金色のガッシュ!! 2」はすでにコミックス4巻分のエピソードが展開されており、物語としては戦いを経て“やさしい王様”になるという目標を実現したガッシュと仲間たちが治めていた魔界に、謎の勢力が侵攻してきている。

 謎の勢力の目的にはいまだ謎が多いが、彼らは魔物たちが持つ術の力を抽出・封印できるだけでなく、瓶として携帯することで、その力を自在に扱うことができた。術を奪われた魔物たちは一方的な戦いを強いられ、魔界も荒れ果てている描写がたびたび登場する。では、そんな未曾有の危機に対して、王であるガッシュは何をしているのか? 先ほども触れたが「金色のガッシュ!!2」は各電子書籍サイトにて第1話が公開されているので、気になる方はぜひ読んでみてほしい。

醍醐味は成長した魔物の子たちと再会するワクワク、そしてパートナーとともにある万能感

 さて、そんな「金色のガッシュ!! 2」の魅力だが、まずはなんと言っても「13年経った登場人物たちの姿が描かれていること」だ。前作でも戦いを通してメキメキとたくましくなっていった清麿は、父親と同じく考古学者として身を立てており、さらに精悍な男へと成長している。ガッシュ、キャンチョメ、ティオなど等身の低かった子どもたちは、すらりと手足が伸びて大人びた姿に(作中でも触れられているが、魔物の成長速度は種族によって差があり、ガッシュは19歳という実年齢に対してやや幼さが残った外見をしている)。

ガッシュと清麿はもちろん、前作でともに様々な困難を乗り越えた懐かしい仲間たちも登場する
盾や回復の術を得意としていたティオは、パートナーである恵によく似たたくましい女性へと成長した

 バリーやブラゴといった前作でも背丈の大きかった子どもたちは、筋骨隆々とした偉丈夫に。ブラゴなんかは見た目だけでなく、傷を負ったシェリーに手当てを施すなど、内面的にも成熟している様子を見せた。「あの魔物の子はどんな姿になっているだろう」というワクワクと、成長した子どもたちがひとりまたひとりと現われ、魔界の危機に向けて結束する土台を築いていく……今は今後の展開に向け、種を蒔くようにその過程が描かれている。

シェリーは長かった髪をバッサリと切り、なんと3児の母に。ブラゴは優しさを垣間見せる偉丈夫となっている

 そしてもうひとつが、「魔物の子とパートナーがひとつになった際のカタルシス」。ひとりではなす術もなく敵にやられるのを待つばかりだった魔物or人間が、かつてのパートナーと並び立った瞬間から戦況が一変。13年という時を経てなお、微塵の陰りもない絆を見せ絶望的な状況を打開していく。実は具体的には何も好転してはいないのだが、パートナーがいるだけで無敵になる、「心の力」が溢れてくる……そんな万能感をともなったクライマックスシーンを見せてくれるのが本作の醍醐味だ。

 このカタルシスは、前段となるフリが絶望的であればあるほど強くなる。かつての愛読者が大人になった今、少しエグみすらある描写も交えながら感情に圧を与えることで、見せ場の解放感がより際立つ構成となっている。まさに大人にしか味わえない、ビターな「ガッシュ」となっている。

 これまでガッシュ&清麿、キャンチョメ&フォルゴレ、ティオ&恵、ブラゴ&シェリーと、コミックスの表紙にはそれぞれの巻でフィーチャーされるパートナーたちが描かれてきた。順当に行けば次はウマゴン&サンビームか……と思いきや、5巻の表紙は厳しさすらある老け顔となったモモンとそのパートナーのシスター・エルだった。あのスケベなイタズラ小僧、モモンはどんな成長を遂げたのか。その顛末をぜひ見届けてほしい。

ピンク色のウサギのような耳が特徴的な魔物・モモン。13年前はお猿さんのような顔立ちであったが、今はまるでゴリラのようだ