特別企画
「HUNTER×HUNTER」連載再開! クラピカや幻影旅団の現状は? うろ覚えの人に向けて王位継承編を一挙おさらい
謀略渦巻く王子たちやカキンマフィアの戦いを読み解く
2024年10月7日 00:00
- 【HUNTER×HUNTER】
- 10月7日 連載再開
冨樫義博氏によるマンガ「HUNTER×HUNTER(ハンターハンター)」の最新話が、10月7日発売のマンガ雑誌「週刊少年ジャンプ 2024年45号」(集英社)より掲載される。およそ1年9カ月ぶりの再始動ということで大きな注目が集まっているが、中には前回までの内容をあまり覚えていないという人もいるかもしれない。
そこで本稿では、現在本編で繰り広げられている暗黒大陸編(王位継承編)の内容をおさらい。さらにコミックスの最新刊や「週刊少年ジャンプ」本誌連載でどこまで話が進んでいるのか振り返りつつ、今後描かれる内容について予想していきたい。
なお、本記事ではコミックス38巻までの内容について触れているためネタバレには注意してほしい。
能力バトルの金字塔「HUNTER×HUNTER」
本作は「幽☆遊☆白書」や「レベルE」などの代表作をもつ冨樫氏が手掛ける能力バトルマンガ。連載が始まったのは今から26年前の1998年3月だが、幾度も長期休載を挟んでいるため、単行本の刊行冊数は38冊にとどまっている。
1999年と2011年に2度にわたってTVアニメ化されており、2013年には劇場アニメとして「劇場版 HUNTER×HUNTER 緋色の幻影」と「劇場版 HUNTER×HUNTER -The LAST MISSION-」が公開された。
「HUNTER×HUNTER」の大まかなストーリーとしては、ハンターになるため旅に出た主人公・ゴンがレオリオ、クラピカ、キルアといった仲間たちと出会うというもの。途中から“念能力”と呼ばれる力の設定が追加され、作品世界が大きな広がりを見せていった。
これまでグリードアイランド編やキメラアント編など、魅力的な長編がいくつも描かれてきた「HUNTER×HUNTER」だが、現在進行しているのは暗黒大陸編(王位継承編)というエピソードだ。
なお「少年ジャンプ+」及び「ゼブラック」では、10月13日までの期間限定で本作の無料公開キャンペーンを実施中。各編のエピソード冒頭5話が、順次無料公開されている。
暗黒大陸編(王位継承編)のあらすじ
物語の主な舞台となっているのは、総収容人数20万人の巨大輸送船「B・W(ブラックホエール)1号」。カキン帝国が人類の活動領域の外にある「暗黒大陸」への進出を宣言し、製造させた船だ。
船内は全5層に分かれた構造となっており、上層ではカキン帝国の国王ナスビー=ホイコーロの子どもたちが、王位継承の権利をかけて骨肉の争いを繰り広げている。この戦いのルールは「最後に生き残った1人が正式な王位継承者になる」というもので、一種のデスゲームに近い。
王位継承権をもつ14人の王子たちは、あらかじめ“壺中卵の儀”という儀式を行ない、それぞれ自らを守ってくれる守護霊獣を発現させている。守護霊獣は王子たちの性格や人柄を反映した能力をもっており、その強力さは念能力者であってもうかつに手出しできないほどだ。
さらに王子たちは高い忠誠心と実力を兼ね備えた私設兵を抱えており、さまざまな謀略を張り巡らせてほかの王子を陥れようとする。そんな熾烈な戦いのなかで、クラピカを始めとするプロハンターたちが警護の契約を結んだ王子を守ろうとしている……という構図だ。
そしてもっとも権力が低く狙われやすい第14王子ワブルを警護するクラピカは、各王子の関係者を集めて「2週間で念能力の基礎を身に付けさせる」という講習会を実施。念に関する情報を分け隔てなく周知することで、お互いがうかつに手出しできない膠着状態を作り上げようとしている。
その一方、船内の下層ではまったく別の構図が浮かび上がっている最中。3大マフィアと呼ばれるシャ=ア一家、シュウ=ウ一家、エイ=イ一家による三つ巴の抗争が勃発する一方、クロロ率いる「幻影旅団」の面々が船内のどこかにひそむヒソカを討とうとしている。
マフィアの抗争で軸となっているのは、モレナ=プルードが組長を務めるエイ=イ一家。彼女の能力「恋のエチュード」は唾液を通じて念能力者を増やすというもので、狂暴な組員たちが次々と殺人事件を起こしている。各マフィアの均衡(バランス)を大切にしているシャ=ア一家とシュウ=ウ一家は、それを崩そうとするエイ=イ一家を粛清するために一時協力体制をとっており、成り行きから「幻影旅団」のノブナガとフィンクス、フェイタンもエイ=イ一家を“狩る”ために動いている。
なお、一見すると下層の抗争は上層と関係ないように見えるものの、マフィアたちのバックにはそれぞれ王子が“ケツモチ”として付いている。また「恋のエチュード」の能力はやがて船内全体を大混乱に巻き込む恐れがあるため、今後の状況に大きく関わってくる可能性は高いだろう。
ちなみに「HUNTER×HUNTER」の主人公であるゴンと相棒のキルアは王位継承戦に関わっておらず、「B・W1号」に乗り込んですらいない。ゴンに至っては、念能力が使えなくなっている状態なので、物語にふたたび関わってくるとしても、もう少し先の話になりそうだ。
最新刊で描かれた「B・W1号」の現状
本作は9月4日に最新刊となる38巻が発売された。そこに収録されているのは、第391話から第400話までのエピソードだ。第400話は今のところ最後に「週刊少年ジャンプ」に掲載されたエピソードなので、単行本を読むことで最新話まで追いつける形となっている。
では38巻ではどのような出来事が起きたのだろうか。めぼしい展開を振り返っていくと、まずシュウ=ウ一家が船内にひそんでいたヒソカを発見。若頭であるヒンリギはヒソカに対して、「幻影旅団」がエイ=イ一家を一掃してマフィア同士の抗争が落ち着くまで、第一層の娯楽エリアで時間を潰していてほしいと頼むのだった。
他方で「幻影旅団」はエイ=イ一家のアジトが第二層にあることを突き止め、フランクリンを連れて動き出そうとしている。ヒソカがヒンリギの願いを聞いて第一層に移動しているとすれば、いよいよ両者の位置が近づいてきたと言えるだろう。
そしてエイ=イ一家も、「幻影旅団」に襲われるのを待っているだけではない。頭であるモレナは「器官」と呼ばれる計画を動かしているようで、第4王子ツェリードニヒの私設兵を捕えて「恋のエチュード」に感染させることを狙っている。
また38巻では、新たなキャラクターとして王立軍学校4期の出身者たちが登場した。彼らは有能だがその実力を隠して下層で働いているのだが、元々ツェリードニヒの友達だったという。本人たちは自分の命を最優先にしていて、全力でエイ=イ一家を回避すると宣言しているが、今後波乱に巻き込まれていくのは確実ではないだろうか。
そのほか上層では、第11王子フウゲツの身にとある異変が発生。第10王子カチョウと一緒に船外への逃亡を試み、1人だけ生き残ったフウゲツだったが、なぜかオーラが弱まり命が削られている。センリツが一目で「危険」だと判断するほどの状態で、多数の邪霊が憑いているため、至急誰かに祓ってもらわなければ命も危ういという。
そこでセンリツはフウゲツを助けるため、司法局のカイザルを介してクラピカに助力を仰ぐことを決断。一方でクラピカの方は、念能力の講習会にて第5王子ツベッパの私設兵・ロンギの接触を受け、ツベッパの協力者(パートナー)になることを承諾した。
今後注目すべきポイントは?
さまざまな勢力が入り乱れる王位継承編だが、その中からいくつかの見どころを紹介していこう。
まず気になるのは、作中屈指の人気キャラクター集団である「幻影旅団」の動向。38巻ではこれまで謎に包まれていた彼らの過去編が取り上げられており、流星街で生まれ育ったクロロたちの幼少期と、「幻影旅団」が誕生した経緯が詳細に明かされている。なぜここにきて過去編が描かれたのかといえば、おそらく物語上重要な役割を担うためだろう。
今はエイ=イ一家を追うノブナガたちに焦点が当たっているが、ほかの面々もそれぞれ独自にヒソカの命を狙っている。しかもシズク、ボノレノフと手を組んで何かを画策しているクロロ、突如「幻影旅団」に新メンバーとして加入したイルミなど、いずれも思惑の読めない人物ばかり。彼らがヒソカを追って第一層に集結するなら、ますます混迷極まる状況が巻き起こりそうだ。
次に注目すべきは、王子たちの中でも異彩を放っている第4王子ツェリードニヒの今後だろう。彼は元々念能力の存在を知らなかったにもかかわらず、半日で念能力「凝」のコツをつかみかけるほどの天才的なセンスをもつ。その能力は10秒のあいだ未来を予見し、そこで起きる出来事を変えられるという驚異的なものだ。さらに念能力者として猛スピードで成長を遂げているため、王位継承戦の行方は彼次第ではないだろうか。
またツェリードニヒは緋の眼の持ち主でもあり、そもそもクラピカが乗船したのは彼との接触が目的だった。さらに下層で暴走するエイ=イ一家のケツモチだったり、王立軍学校4期出身者という人間関係が明かされたりと、船内のあらゆる出来事と関係しているため、やはり物語の中心人物となることは間違いないだろう。
とはいえ、他の王子たちもくせ者ぞろい。今のところ14人の王子のうち、モモゼ(第12王子)とカチョウ(第10王子)、サレサレ(第8王子)の3人しか脱落していない上、念能力の情報が広まったことで戦況が停滞しつつある。王位をめぐる争いは、決して一筋縄ではいかなそうだ。
そして、もちろんクラピカの動向にも要注目だ。乗船以来、クラピカ周辺では怒涛の展開が巻き起こっており、未回収の伏線も多い。たとえば念能力講習会では初日から、「11人いる!」(サイレントマジョリティー)という能力が猛威をふるったが、その犯人はいまだに見つかっていない。読者のあいだでは盛んに考察が行なわれているので、今後の進展を期待する人も多いのではないだろうか。
ほかにもセンリツに恋をしたと言って協力関係を結びつつ、その本心が疑われている司法局のカイザルなど、謎を秘めたキャラクターが数多く控えている。
未曽有の規模で描き出される群像劇は、どんな結末を迎えるのか……。「HUNTER×HUNTER」の再始動から目を離せない。
(C)冨樫義博/集英社