レビュー
ただの下ネタギャグじゃない? 「サバエとヤッたら終わる」が描く“ノリのいい女友達”の絶妙な距離感
人気グラドル・沢口愛華さんが熱演した実写ドラマ版も話題に
2024年10月21日 00:00
- 【サバエとヤッたら終わる】
- くらげバンチにて連載中(既刊16巻)
- 著者:早坂啓吾氏
さまざまなラブコメマンガが生み出され、ヒットを飛ばすなか、一風変わった設定によって注目を浴びている作品がある。友情と煩悩のあいだで揺れる主人公を描いた青春ラブコメ「サバエとヤッたら終わる」だ。
同作は早坂啓吾氏が2019年9月から新潮社のWebマンガサイト「くらげバンチ」で連載している作品。8月から9月にかけて、濱田龍臣さんと沢口愛華さんのW主演による実写ドラマも放送された。
数あるラブコメ作品のなかで、同作はなぜ熱い支持を集めているのだろうか。ヒロイン・鯖江の絶妙な距離感、下品すぎない“ちょうどいい”下ネタなど、その魅力の数々を詳しく掘り下げていきたい。
ありそうでなかった”女友達ラブコメ”
作品の舞台となるのは、とある大学のフットサルサークル。といってもほとんどのメンバーは真面目に取り組んでいない、いわゆる“飲みサー”だ。そこで主人公の宇治は、サークルのマドンナである桜井に好意を寄せているのだが、なかなか想いを伝えられずにいた。
同じサークルの女友達・鯖江は、そんな宇治をからかいつつも、面白半分で恋愛相談にのる。ところが宇治はふとした瞬間に、鯖江を“女”として意識してしまい、理性と欲望の狭間で揺れ動く。というのも鯖江は桜井の親友でもあるので、一度でも一線を超えれば桜井と付き合う未来は消えてなくなるのだ。これこそが”サバエとヤッたら終わる”由縁である。
本命は桜井ということになっているものの、作中で描かれるのはほとんどが宇治と鯖江が“サシ飲み”をする光景。それでいて2人のあいだに甘酸っぱい空気が漂うことはなく、ひたすら煩悩に耐え抜いていく異色のお色気コメディだ。
鯖江は口を開けば次から次へと下ネタを連発し、非モテな宇治を翻弄する。さらにそれだけにとどまらず、自称Hカップの谷間を見せ付けたり、胸を触らせようとしたりと過激な“からかい”行為に及んでいく。しかも恐ろしいのは、たんにからかっているのかその気があるのか区別がつかない、思わせぶりな言動もちらほら飛び出すことだ。
宇治はピンク色のハプニングに振り回されつつ、時に「もしかしたら……?」と期待させられることになる。誤解を恐れずに言うと、ちょっとオトナ向けの「からかい上手の高木さん」といった雰囲気かもしれない。
といっても宇治がピュアボーイということもあり、下ネタやお色気要素は一切生々しいものにはならず、ギャグで済むレベルにとどまっている。頭をからっぽにして楽しめるさわやかな読後感が、同作ならではの魅力だろう。
絶妙に男心をくすぐる女友達・鯖江
鯖江の型破りなキャラクター性も、同作の面白さ。彼女は一方ではガサツで口汚く、男友達のようなノリでしょうもない下ネタを繰り出していく。そして三度の飯よりお酒が好きで、競馬などのギャンブルも好む。
しかもお酒を飲むのは大抵こじゃれたバーなどではなく、赤ちょうちん系の大衆居酒屋で、牛もつとビールでくいっといくような渋い飲み方……。もはや“おっさん”のような風格ではないだろうか。
しかしそれでいて鯖江には、かわいいところも多い。たとえば終電を逃した際、「ウチ近所だし泊まってく?」と聞いてくるなど、友達ならではの距離感で接してくるところは破壊力抜群だ。
また鯖江は普段こそ強気だが、酒に酔うとたちまち隙だらけに。二日酔いでグロッキーになっている時には宇治に身を任せ、ブラのホックを外させるなど、甘えるような素振りを見せることもある。
さらに、本心が一切分からないのも鯖江の魅力。宇治と桜井の恋路を応援する素振りを見せているものの、冗談という体裁で「万が一フラれたら私が付き合ってあげるからさ~」と言ってみたり、「私…宇治のこと好きだよ」「顔以外な~」とからかったりと、もはや誘っているようにすら見える。
作中では宇治が一線を超えないよう必死にこらえているものの、徐々に2人の関係が先に進んでいるのも確か。そもそも出発点からして相当の仲良しだったが、やがて同じロッカーに一緒に入るなど、恋人同然の“密”な接触を行なうように。
第27話、第28話にて宅飲みが解禁されてからは、たまに宇治の家でだらだらと過ごすようになり、鯖江の家での宅飲みにまで至っている。なんやかんやで理由があれば手をつなぐことも珍しくなく、同じ布団にベッドインする展開まで……。この先、どんな風に関係が深まっていくのか気になってしまう。
チョロいサークル仲間、努力でギャル化した真面目ちゃんなど魅力的なサブキャラたち
そして本作には鯖江だけでなく、ほかにもクセの強いキャラクターたちが登場する。たとえばサークル仲間の勝木は、眼鏡をかけた控えめ女子だが、恋愛関係ではとことん自意識過剰。宇治がひそかに自分を狙い、獣のような目線を向けてきている……と疑ってやまない上、少しやさしくされるだけで惚れかける“チョロい”性格でもある。
同じくサークルメンバーの尾楽は、露出の多いギャルファッションが特徴。しかし実はモテるために1年かけて「身も心もギャルになった」という変わった人物で、口は悪いが根は真面目でやさしいというギャップをもつ。
またバイト先の後輩・保脇は、黒髪ツインテールであざとい“魔性”の女子だ。なにかと好意があるような思わせぶりな態度をとるが、そのターゲットは宇治だけでなく、鯖江まで軽々と篭絡してしまう。
さらに鯖江の母も、かなりの変わり者。ちゃらんぽらんな娘とは違って厳格で真面目そうな性格に見えるが、お酒に目がないところは鯖江と変わらないのだった。
“実写版鯖江”にもドキドキ
そんな同作は、これまで二度にわたって実写化されている。一度目は2020年のコラボグラビアで、グラビアアイドルで配信者としても活躍するRaMuさんが“リアル鯖江”になったことで話題を呼んだ。
グラビアの完全版は「サバエとヤッたら終わる」コミックス2巻の電子書籍版に掲載されており、図書館や居酒屋で原作に忠実なセクシーショットを披露している。ちなみに、RaMuさんは鯖江と同じHカップの持ち主だ。
本日発売!『サバエとヤッたら終わる』第2巻の電子書籍版は、人気グラドルのRaMuさんとのコラボグラビア付き!!https://t.co/U3uc5XevtU
— くらげバンチ 公式 (@kurage_news)November 9, 2020
図書館、カラオケ、居酒屋で、まさにリアルサバエ😭なショットが満載です!必見👀✨
🔻撮影現場のオフショット動画も公開中🔻
https://t.co/mu2hW4tIJepic.twitter.com/mSMcblagP5
そして二度目の実写化は、TOKYO MXで放送されたTVドラマ版。“令和のグラビアクイーン”とも呼ばれる沢口愛華さんが鯖江を演じており、そのプロポーションはもちろん、素朴で明るく、表情豊かなところも本人そっくりだった。
なお、そのほかの登場人物としては、勝木役を福室莉音さん、桜井役を進藤あまねさんが演じており、原作には出てこないサバエ姉の役として、Jカップグラビアアイドルの風吹ケイさんもキャスティングされていた。
サバエ見てくれましたか、、、
— 風吹ケイKei Fubuki (@kei_fubuki_)September 2, 2024
最後のEDの写真良すぎてスクショした、、
サバエの姉役として出演いたしました!
いかちい姉貴です🚬
TVer、Netflixで見逃しあるよ〜!
TOKYO MX ダイジェスト放送にて、
第1話~第4話一挙放送🙆♀️
9/2(月)26:35~
絶対見てくれ!!!!#サバエとヤッたら終わる…pic.twitter.com/dbMb8PWqJI
メディアミックスによって、ますます注目度が上がる「サバエとヤッたら終わる」。単行本は現在16巻まで刊行されているが、その勢いはとどまることを知らない。鯖江と宇治、桜井の関係はこのまま続くのか、それともいつか“終わる”時が来てしまうのか……。今後の展開も見守っていきたい。
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(C)早坂啓吾・新潮社/ヤッたら終わる製作委員会